2023/06/18
【実銃】カスタムリボルバー「スモルト」、現代の銃にも劣らない性能に迫る【後編】
SMOLT REVOLVER
1970年代から80年代にかけて、当時精度に優れるとされたコルトパイソンのバレルを、優れたアクションを持つS&Wモデル19のフレームにねじ込んだPPC競技用カスタムリボルバーがあった。“スモルト”あるいは“スマイソン”として知られているこの銃は、ベンチレーテッドリブとバレルのアンダーラグを持つパイソンバレルが意外にもモデル19のフレームとデザイン的にマッチし、機能、外観共にすごく魅力的だったが、1980年にS&W モデル586が登場して以来徐々に姿を消していった。
ここではそのスモルトにスポットを当ててみたい。
実射テスト
今回の精度テストは、1969年製のモデル19に敬意を表して、鉛弾頭のアメリカンイーグル製158gr. LRN(レッドラウンドノーズ)と、アモ棚の深奥部から探し当てた30年ほど前のものと思われるレミントン148gr. ワッドカッターによるものとした。
ワッドカッターというのは、PPC競技などによく使われた弾頭で、円柱状の弾頭は、ケースの長さぎりぎりまで押し込んであるタイプで、ペーパーターゲットに綺麗な.38スペシャル口径のパンチホールを開けることからワッドカッターと呼ばれている。
ターゲットは25ヤード(約22.5m)にセットし、6発撃ってまとまっている5発分を計測した。その結果、6インチバレルでは、158gr. LRNが最小3/4インチ(約19mm)、148gr. ワッドカッターが7/8インチ(約22mm)を記録した。これは期待通りというか、十分に50ヤードから10点リングを狙える精度である。
4インチバレルのほうは、弾頭との相性が良くなかったのか、158gr.のほうが1.5インチ(約38mm)、148gr. のほうが1-1/8インチ(約28mm)と、少々振るわなかった。
それでも今どきのセミオートピストルに比べると、その集弾性能は抜群だ。
また、久方ぶりに鉛弾頭を撃ったが、そのマイルドな撃ち心地と発射時の白煙はかなり印象的だった。
今回のテストでは、なぜか一回だけシリンダーギャップとマズルからの発射炎が撮れたが、これもシャッタースピードを1/8000秒にした瞬間のものだ。控えめな炎とかにも火薬が燃えたという白煙、マズルから見える黒いラインは鉛弾頭の影かもしれない。
威力はそこそこだが、精度なら自信がある! とでも言われているかのような奥ゆかしいリコイルに感じてしまう。そこでIDPAが得意な友人と、それっぽいステージを撃ってみようということになった。
4インチ スモルトを使い、10ヤードから連射2発、シュート オン ムーヴ(前進しながら撃つ)で4発、クイックリロードしてサイドステップ、ダブルタップ3回、これを12秒以内にこなすというものだ。ターゲットは8インチ黒丸のライフルターゲットで、黒丸を外したら負け、となる。友人は3発目を2mmほど外したが、その他はほとんどが9点圏内にまとまっている。私はリロードに手間取ってしまい、タイムリミットに間に合わず失格、という結果になった。
それにしても撃ち易いリボルバーだ。トリガープルは6ポンド(2.7kg)ほどしかなく、ウルトラスムーズでコントロールしやすく、引き始めからシリンダーが回りだし、シリンダーストップで止まったというのが指先から感じるとことができる。この時点でサイトピクチャーを確認し、自信をもってトリガーを引き切ることができる。アラン・タナカ氏の面目躍如といったところだろう。
これを6インチバレルに持ち替えると、バレルの重さとアンダーラグのおかげで、そのリコイルはさらにマイルドになり、その撃ち易さは倍増する。比較用として、ストックのモデル19の6インチモデルも試してみたが、トリガープルが重くガサツなうえにフロントサイトがぴょこんと跳ねるようなリコイルが来て、2発目のフォローアップショットが遅れてしまうのだ。
それほどチョイスが多くない1970年代のPPC競技において、このスモルトが珠玉の選択であったのが納得できる。
しかし、1980年になるとS&W社が満を持してモデル586モデルをリリースする。ベンチレーションスロットこそないが、立派なバレルアンダーラグがあり、箱出しの状態でも精度が悪くない。つまりアクションのチューンさえすれば、そのままPPC競技に使えてしまうのだ。
翌年にはステンレスモデルであるモデル686も登場し、スモルトの魅力は急速に色褪せていったのだ。
それでも、今回スモルト2挺を引っ張り出してみて、特に6インチモデルのカッコよさとその貫禄に惚れ直してしまった。モデル686もお気に入りのリボルバーなので、カスタムやら7連発やら幾挺かがガンセーフに眠っているが、やはりスモルトの存在感は断トツなのだ。
やはり、当時のコルト社が誇るブルーフィニッシュは、「素晴らしい」の一言に尽きる。
まあ、それもこれもノスタルジーさん(ノスタル爺さん?)の繰り言になってしまうのだろうが、やはりこれからもこれはというクラシックリボルバーに出会ったら手に入れてしまうのだろうな、と思うのだ。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年11月号に掲載されたものです。
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