実銃

2023/05/28

【実銃】競技に特化させたGRAND MASTERSの最高傑作、その実力とは?【後編】

 

POWER CUSTOM
GRAND MASTERS

 

 

 70年代から80年代の中頃まで、リボルバーへの注目度は非常に高かった。アメリカのポリスオフィサーの多くがリボルバーを装備し、PPCマッチやビアンキカップには様々なカスタムリボルバーが登場。リボルバーのガンスミスも多く、それぞれ独自のデザインを競っていた。そんなガンスミスの中でも、レジェンド(偉大な功績をあげた人物)と呼ばれたのが、ロン・パワー氏だ。
 彼の作った“Grand Master”モデルは、当時最高のカスタムリボルバーだったと言える。

 

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Grand Master Universal


 その後、パワーさんがビアンキカップに特化した“グランドマスター ユニバーサル”というモデルを作るという情報が舞い込んできた。バリケード対策もされた重量級スペシャルモデルなのだという。欲しければ一緒にオーダーをとってくれるというので、さっそくお願いした。こいつはやはり1年ほどは待ったと記憶している。このモデルのスペシャル仕様は以下の通り。

 

チェンバーのカートリッジが入り込む部分はスターとともに角を丸めて、スピードローダーでも挿入しやすいようになっている。それぞれのチェンバーには番号が入り、グルーピング等に異常があれば、どのチェンバーから撃ったのかを特定しやすくなっている


●いくつかのステージにある6連射に備え、バレルは通常より太目、大型のコンプ、ステンレス製スコープマウントとアンダーラグを備え、その装備重量は2,130g(!)となった。ちなみに、初代グランドマスター デラックスは1,840g、2代目グランドマスターは1,853gだ。


●アンダーラグはバリケード競技でバレルをつかみやすい突起を持つ。

 

●トリガーはバーナーで加熱してストレートに近く伸ばし、リシェイプ、ポリッシュした後に熱処理済。

 

必要な場所はポリッシュしまくってある。トリガーリバウンドシリンダーやサイドプレートの内側もだ。トリガー、ハンド、ハンマーといったパーツはカスタムナイフのようなポリッシュ状態となっている


●トリガープルは驚異のスムーズさと、重さ7.5ポンド(約3.4kg)を達成。


●ヨークには新たなラグを溶接し、フレームに食い込ませるとともに、ボールインデントも2箇所追加し、精度向上を図る。


●ケン・ホーグ氏製作による、スペシャルビアンキグリップ装着。

 

 とまあ、パワーさんの意気込みが見えるような作品となった。その精度は抜群で、148gr.の鉛ワッドカッター弾頭を使えば、50ヤード1.5インチ(約38mm)は確実であった。今回久しぶりに引っ張り出した実射でも、158gr.鉛RN弾頭で、25ヤード5発3/4インチ(約19mm)の精度を出しているので、やはりさすがである。

 

実射。アモは、PMC社製158gr. レッドRNのみとした。この銃では鉛以外の弾頭は撃ちたくない

 

重い。フロントヘビーで2kg以上あるのだから強烈だ。でも当時のカスタムガンはこれが普通だったのだ

 

 但し、このグランドマスター ユニバーサルがデリバーされた頃には、すでに時代はセミオート全盛となっていた。また私自身もミズーリ州まで行って、ほぼ一週間射撃に明け暮れる(ビアンキカップはミズーリ州コロンビアで行なわれる)という夢の時間を捻り出し辛い現実に迫られていたのだ。

 

 かくして、“グランドマスター ユニバーサル”は、セイフクイーン(ガン保管庫の女王)となってしまった。

 

25ヤード5発の結果。5発すべてが3/4インチ以内に入った

 

4発は1.25インチにまとまっているが、1発は2インチほど飛んでしまっている。このフライヤーが毎回1、2発出る

 

一番外れた1発は人的なミスであろう。この1発がなければ1インチ以内にまとまっている。まだまだ現役だ

 

この2代目が一番バランスに優れて取り回しやすい

 

 パワーさんはガンスミスを引退したが、今も健在だと洩れうかがっている。カスタムリボルバー界のレジェンド、ロン・パワー氏には、このような素晴らしい作品を残してくださったことに感謝するとともに、くれぐれもお元気で、これまでのような後進の指導も続けていただければと願っている。

 

もうバレルは寿命を迎えているが、一番愛着があるのはこの初代グランドマスター デラックスだ。結果的にはやはりフライヤーが出た

 

Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年8月号に掲載されたものです。

 

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