実銃

2023/07/16

【実銃】美しきリボルバーたちの軌跡を「S&W Model 627-0 Custom」と共に追う【中編】

 

Original

S&W Model 27-2
8-3/8inch Barrel

 

 

 S&W Nフレームはラージフレームとも呼ばれ、Xフレームが登場するまで、同社最大のフレームであった。1907年の.44ハンドエジェクターに始まるNフレームは、パワフルな大口径アモが撃てることが特徴だ。

 

 1957年にモデル名を番号で表すようになった以降も、モデル20(.38-44)からモデル29(.44マグナム)まで、5種類の口径による10種類のラインナップを揃えていたことからも、その人気ぶりが伺える。中でもモデル27は“6連発のキャデラック”と呼ばれるほどの豪華版だ。

 今回はそんな1974年製モデル27-2、8-3/8インチ銃身モデルにスポットライトを当ててみたい。

 

前編はこちら

 


 

S&W Nフレーム

 

 1960年代初頭には、これらモデル27と28の人気は他のNフレームモデルをはるかに凌駕しており、S&W社では.38-44、.44スペシャル、.45ACP口径のモデルをカタログから落としている。

 

モデル 27-2(上)とモデル627-0カスタム(下)


 そして1950年代の初め頃、シューターであり、ハンターであり、かつライターとしても知られるElmer Keith(エルマー・キース)氏は、.44スペシャルカートリッジの強化版をビッグゲームハンティング用にテストしていた。

 

鉛弾頭を大量に撃つので、チャンバーの中は汚れがビルドアップしている。これをコンコンと掘るのも愉しい。エジェクションロッドのハウジングは、ジュラルミン製だ


 1955年になると、レミントン社とS&W社との協力により、“.44レミントンマグナムカートリッジ”の開発がなされた。これは.44スペシャルのケースを延長し、240grのジャケテッド弾を1,180fpsまで加速し、マズルで741ft/lbsのエナジーを発生する。“世界最強のリボルバーカートリッジ”の誕生だ。この年、S&W社からはNフレーム“.44マグナムリボルバー(1957年からモデル29と名称を変える)”がリリースされる。

 

7連発シリンダーを組み込んだモデル627カスタム。バレルはローカルのガンスミスに、軽量化の深いフルートを入れて、マズルにチャンバーとコンプを掘ってもらった。軽量弾頭を高速で飛ばすリロードを使うと、結構な利き目だ

 

 当時、このモデルは高価だったため、一部の限られたビッグゲームハンターだけが手に入れるスペシャルモデルだったが、1971年にクリント・イーストウッド主演の映画『ダーティハリー』が公開されるやいなや、モデル29はベストセラ―ハンドガンとして君臨することになった。

 

モデル627カスタムは予備シリンダーもある。マッチ中に不具合が出ても、交換するだけでOKなのだ。トリガーは細くして磨き倒してある


 次に起きたS&Wリボルバーの変遷は、既存モデルのステンレス化だ。1963年のJフレーム モデル60(チーフスペシャルのステンレスモデル)を始まりとするが、数年のうちにNフレームにもステンレス化の波が押し寄せてくる。モデル629(.44マグナム)、657(.41マグナム)、624(.44スペシャル)、627(.357マグナム)、625(.45ACP)、610(10mmAuto)が次々と誕生したのだ。

 

HOGUEグリップのケン・ホーグ氏がハンドチェッカーを入れてくれた世界に一個しかないグリップ。サイン入りだ。中指薬指が当たる部分が滑るので、自分でチェッカーを入れようとしたが、大失敗した。傷跡として残っている。サムラッチは、自分で下部を削って、エポキシパテを盛り上げ、素早いリロードができるようにしてある。我ながら造形美にセンスがない


 セミオートピストルの普及により、リボルバーマーケットは縮小の一途をたどっているが、S&W社ではパフォーマンスセンター(PC)の存在もあり、興味深いリミテッドベースのリボルバーを続々発表している。実際に手に入れるかどうかは別として、もう消滅してしまうかと思っていたリボルバー達が、姿かたちを変えて登場してくれるのは楽しくも喜ばしい限りだ。

 

グリップ上面のチェッカーは、ウィークハンド(左手)だけで撃つ際、親指を載せる部分。あるとないでは大きく違う


 但し、現行リボルバーはお値段が張り過ぎる(ジジイの繰り言だとは判っているが)。モデル327の8連など興味津々ではあるが、1,360ドルではセミカスタムの1911が買えてしまう。PCのモデル640などは喉手でも、5連発で900ドル以上というのはフルプライスで買うにはちと気合いがいるのだ。この価格には“リボルバー類保存基金”への献金も含まれているのだろうなあ。

 

内部はオイルストーンと水ペーパーで磨きまくった。上はオリジナルシリンダーと、7連の予備シリンダー

 

続きはこちら

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年4月号に掲載されたものです。

 

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