実銃

2025/04/21

LMG(軽機関銃)がアジアにもあるって知ってる?

 

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

東南アジアの小国が造ったLMG

 

 シンガポールは東京都23区ほどの国土の小国である。1965年にマレーシアを追放され突然の独立を果たしたが、隣国のインドネシアとの対立や国内反対派によるマレーシアへの再吸収を警戒するため強力な軍隊を必要とした。そこでCISという国営企業を設立しコルトと契約を結び、軍用のM16を製造する工場を設置。コルトとは輸出も視野にいれた契約であったが、アメリカ国務省が技術の流出を理由に他国に売ることを許可しなかった。

 

伝統的なトンプソンタイプのフィンガーチャンネル付きフォアグリップはドラムマガジンを装着した状態でも握りやすい

 

100連発のドラムマガジンはウルティマックス100の名前の由来となったもので、本体は樹脂製で大きさに比べて軽量だ

 

 思惑の外れたシンガポールはM16の製造設備を流用し、開発されたのがウルティマックス100である。この時、AR15やAR18、ストーナー63に携わったジェームズ・サリバンを招聘し、CISはサリバンのアイデアを基に軽量なLMGの開発に成功する。低反動で軽量なウルティマックス100は要求された要件を満たし、またアジア人の体格に合ったものであることから、改良を加えつつ現在まで製造されるアジア屈指のLMGなのである。

 

 

CIS Ultimax 100 MkⅢ 軽機関銃

  • 全長:1,024mm
  • 口径:5.56mm×45
  • 装弾数:30発/100発
  • 価格:¥770,000
  • 商品番号:【9335】

 

 

ストーナー63の遺伝子を受け継ぐ設計

 

 サリバンの指導を受けて開発されたウルティマックス100は、彼が携わったAR18やストーナー63の影響を強く受けているため、それに近いものとなったが、ライセンス生産していたM16の製造ラインを流用した設計だったのが大きな理由だ。レシーバーはプレス製でバレルはショートバレルに交換可能。ストックも簡単に取り外せ、コンパクトにすることもできる機構はストーナー63に似ている。

 

コッキングハンドルは発射時はボルトと連動せずM16のチャージングハンドルようなレバー式のロックで不意に動くことはない

 

固定ストックにはリコイルを吸収するための厚手のラバー製バットプレートと左右にスリングスイベルが装着されている

 

 サリバンが考えていた新たな低反動のアイデアである「コンスタント・リコイル・アクション」は、発射後に後退したボルトキャリアが急停止することによって発生するリコイルショックを、銃本体を長くしてボルトをスムーズに受け止めることでリコイルショックを一定にするシステムである。またベルトリンクを利用しないマガジンフィードの給弾方式を採用し、マガジンを除いて4.9kg、100発ドラムマガジンを含めても7kg程度という重量を実現し、体格の劣る兵士でも1人での運用が可能となっている。初期型のMkⅡまでは専用ドラムマガジンしかなかったのでマガジンがなければ何もできなかったが、MkⅢは先に採用されたSAR80の30連マガジンも共用できるようになった。

 

リアサイトは丈夫なサイトガードが付いたマウントにタンジェントサイトをセットした視認性の高いサイトが標準装備されている

 

セレクターレバーはアサルトライフルと同様の配置で操作性が高く、フルオートオンリーなのでセーフティとファイヤのみとなっている

 

 動作方式はショートストローク・ガスピストン方式で、フルオートのみのオープンボルトからの発射方式としLMGとしての用途に特化している。優れたLMGではあったが、完成した時期にはすでにFNのMINIMIが多くの国に採用されており、西欧圏での採用には失敗している。しかし1990年にはネイビーシールズでの試験運用や、2000年代にデルタフォースでも使用され、2005年にはアメリカ海兵隊のIAR選定にも参加するなど、ウルティマックス100の軽量・低反動の特徴は一定の評価を得ている。

 

 

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TEXT:IRON SIGHT


この記事は月刊アームズマガジン2025年5月号に掲載されたものです。

 

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