ミリタリー

2025/09/08

陸上自衛隊・佐賀駐屯地開設 V-22オスプレイ配備へ

 

南西諸島部防衛強化体制完成

佐賀駐屯地開設 V-22オスプレイ配備へ

 

完成したばかりの佐賀駐屯地へと着陸するV-22。この機体が、配備第一号となった。そして7月下旬より訓練を開始。8月中旬までに17機が配備されていった

 

 これまで木更津駐屯地に暫定配備されていたV-22オスプレイと、それを運用する輸送航空隊であるが、遂に本拠地となる佐賀駐屯地へと移駐した。これにて、九州沖縄エリアにより迅速に展開できる態勢が整った。

 

着陸後、駐屯地側の格納庫を目指して自走中のV-22。機体の後方には、隣接する佐賀空港ターミナルが見える

 

配備第一号機から降り立つ4名のクルーたち。出迎えの隊員から盛大な歓迎を受けた

 

 2025年7月9日、陸自“念願の”佐賀駐屯地が開設され、記念式典が執り行われた。
 佐賀駐屯地は、佐賀空港に隣接する場所に作られた陸自で最も新しい駐屯地である。ここを拠点とするのが、V-22オスプレイを運用する第1ヘリコプター団隷下の輸送航空隊だ。なお、陸自では、オスプレイではなく、機種記号の“V”から「ヴィーナス」と呼んでいる。


 なぜ “念願” だったのか―。その理由は5年前に遡る。
 陸自初のオスプレイ部隊となる輸送航空隊が2020年3月に新編されることが決まった。当初より、佐賀駐屯地を新たに建設し、ここに部隊を配置する計画であった。しかしながら、部隊新編直前であっても、まだ建設工事すら行われていない状態だった。なぜならば、空港周辺で行われている海苔漁への影響、米オスプレイが引き起こしてきた度重なる事故等による同機への不信感などを理由に、佐賀県は新駐屯地建設に反対の立場をとったからだ。

 

本部隊舎前で、駐屯地名が記された看板の除幕式が行われた。この後、ゲート前に掲げられた

 

V-22の機内。機体内壁に沿って、イスが折りたたまれている。最大で約25名程度の隊員を乗せることが出来る

 

V-22のコックピット。正副パイロットの2名が座る


 そのため、輸送航空隊は、暫定的に第1ヘリコプター団本部が置かれている木更津駐屯地にて新編され、ここを“仮住まい”としなければならなかった。部隊の整備は予定通り進める必要があったため、随時、“仮住まい”の同部隊へとオスプレイが引き渡されていった。そして、予定通り総数17機を配備した。その一方で、防衛省は、佐賀県との話し合いを根気強く進めていった。なんとか双方合意まで漕ぎつけ、駐屯地建設が開始され、この日を迎えたわけである。
 防衛省が、ここまでして、佐賀県に駐屯地を置くことにこだわったのには大きな理由がある。この機体を使用する日本版海兵隊こと「水陸機動団」が駐屯する相浦駐屯地並びに竹松駐屯地まで、佐賀駐屯地からであれば、距離にして約60kmと、目と鼻の先にあるからだ。すでにある佐賀空港の滑走路を共同使用することで、わざわざゼロから空港施設を作る必要がないことも大きなアドバンテージだった。


 かくして、式典開始およそ1時間前となる午前10時30分頃、1機のV-22オスプレイが着陸した。これが最初の配備機となった。空港ターミナルを横目に自走してくると、出迎えの隊員たちが整列して待つ格納庫前にてエンジンを停止。機体からパイロット2名、機上整備員2名の4名が降り立ち、隊員たちの前へと歩み寄る。そして輸送航空隊長・青山佳史1等陸佐に到着を報告した。その後格納庫内にて、駐屯地開設記念式典が行われた。
 ようやく仮住まいから終の棲家へとたどり着いた輸送航空隊の新たなスタートとなった。

 

万が一の事態に備える救難消防車ⅠB型パンサー。オーストリアのローゼンバウアー社製で、世界中の航空基地や空港で使用されている

 

佐賀駐屯地全景。今はまだ本部隊舎と格納庫しかない。この隊舎内に、隊員の居住区、食堂、大浴場、売店などが集約されている

 

新隊舎は、昨今の自衛隊員の生活・勤務環境改善が反映され、大部屋を2名でゆったりと使う。個人のスペースも広い

 

駐屯地内には輸送航空隊特別デザインマンホールもある

 

 

Text & Photos:菊地雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。

 

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