ミリタリー

2025/08/24

ノルウェー海軍初来日!フリゲート艦「ロアール・アムンセン」東京入港【KNM Roald Amundsen, F 311】

 

 昨今日本に数多くの海外艦艇が来日しているのはご存じだろうか。在日米軍基地のある米国海軍や昔から交流のある英国海軍は言わずもがな。他にもアジア太平洋諸国の艦船は入港することが多かった。
 しかし変わりつつある国際情勢下で国際観艦式で数多くの海外艦艇が入港したのに加え、スペイン・ドイツ・イタリア・フランス・メキシコ等々特にヨーロッパから多くの艦船が来日している。2025年8月、今回も日本初寄港の海軍が現れた

 

東京西航路で東京国際クルーズターミナル入港するロアール・アムンセン…かと思いきや一度レインボーブリッジをくぐって回頭してから入港した

 

 ヴァイキングの国からフリゲート艦「ロアール・アムンセン」(HNOMS ROALD AMUNDSEN,F311)が海上自衛隊横須賀地方総監府・東京国際クルーズターミナルに入港した。
 ノルウェー海軍が日本に寄港するのは今回が初めてで、今回「ロアール・アムンセン」はノルウェー・日本外交樹立120周年と英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を旗艦とした英国空母打撃群『The UK Carrier Strike Group 25』(CAG25)の一員として英駆逐艦「ドーントレス」と共に来日した。

 


 

Fridtjof Nansen-class frigate

KNM Roald Amundsen, F 311

 

同艦のベースとなったアルバロ・デ・バサン級をベースにした濠海軍フリゲート艦ホバート級は何度か見たことがあるが、AN/SPY-1Fの搭載された八面体の塔状構造物が搭載されていることもあってか全く違う艦種に見受けられる。

 

 

フリチョフ・ナンセン級フリゲート
2番艦 ロアール・アムンセン


発注:2000年06月23日 起工:2004年06月03日

進水:2005年05月25日 就役:2007年05月21日

 

性能諸元

  • 全長:132m
  • 最大幅:16.8m
  • 喫水:4.9m
  • 排水量(満載):5,121t
  • 乗員:120名

機関

  • 機関:CODAG方式
  • 主機:LM2500 ガスタービン × 1基
       バサンBRAVO12V ディーゼル × 2基
  • 出力:19.2MW / 4.5MW
  • 速力:最大26ノット

 

兵装

  • 76mm単装砲 × 1基
  • Mk 41 VLS(8セル) × 1基
  • NSM SSM4連装発射筒 × 2基
  • 324mm短魚雷連装発射管 × 2基

搭載機

  • リンクスもしくはNH90 × 1機

レーダー

  • AN/SPY-1F 多機能
  • RSR 210N 対空・対水上

 

 フリチョフ・ナンセン級フリゲートの2番艦であり艦名は探検家ロアール・アムンセンに由来している。ちなみに同型艦は全てノルウェーの著名な探検家に由来している。
 本艦の由来である『ロアール・アムンセン』は英国の『ロバート・スコット』と人類初の南極点到達を競い合い初到達に成功しただけでなく、飛行船で北極圏にも到達し人類初の両極点に到達した人物だ。

 

 設計は先日入港したスペイン海軍フリゲート艦アルバロ・デ・バサン級をタイシップ(原型艦)としており、同じくイージスシステム搭載艦であり同艦の採用によって欧州2番目のイージス艦保有国となっている。
 本艦のイージスは通称『ミニ・イージス艦』と呼ばれ、イージス武器システムの核心であるレーダー『SPY-1F』唯一の搭載艦となる。米軍アーレイバーク級や海上自衛隊こんごう型が搭載する駆逐艦向けのイージスシステム『SPY-1D』をベースにフリゲート艦向けにシステムを簡略化したコンパクトなイージスシステムだ。

 

AN/SPY-1F。イージスシステム搭載艦であることを象徴する特徴的なフェーズド・アレイ・レーダー。システムの簡略化や出力の削減が他のイージス艦に比べると一回り小さい

 

入港時撮影した写真でたまたま『まや型』の艦橋と共に撮影できていた。遠近法で手前のアムンセンの方が大きく見えるはずなのにここまでレーダーのサイズ差がある

 

 タイシップのアルバロ・デ・バサン級、さらにその艦をベースとした濠海軍フリゲート艦ホバート級に比べると満載排水量に大きく違いが見受けられ、ホバート級と比べると1000tも軽い。単装砲も127mmから76mm、VLSは8セルのみでESSMのみ、対艦ミサイルであるハープーンは未搭載など大きく変更されている。

 通常より機能の制限された『ミニイージス』が搭載され当初の設計から艦隊防空能力が求められなかったことから、より僚艦・個艦防空に割り切った武器システムを感じられる。

 

艦首に配置されたOTO 76mm単装砲(ステルス型砲塔)
砲塔にはトライデントを持ったシロクマが描かれており、アムンセンのバッジにも描かれているが由来は不明。アムンセンといえば南極点初到達が有名だが南極にシロクマはいない為、ノルゲ遠征を北極点初到達と捉えるためだろうか…?

 

Mk41 VLS 8セル SAM(艦対空ミサイル)の発射装置として艦首に備えている。イージス艦にしては珍しくスタンダードミサイルは搭載していない

 

僚艦・個艦防空用に搭載されるNSM SSM4連装発射筒。ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発した対艦ミサイル。米海兵隊のNMESISや建造中のコンステレーション級ミサイルフリゲートにも採用され、本機の派生であるJSMはF-35の爆弾倉に搭載できる唯一の巡航ミサイルとして各国から期待されている

 

シープロテクター 12.7mmRWS  こちらもNSMと同じくコングスベルグ・ディフェンス社によって開発された。RWS(遠隔操作式銃塔)が本体であり、搭載される物に応じて12.7mm、7.62mm、5.56mm、グレネードランチャーやジャベリンやヘルファイアなど様々な火器・ミサイルを搭載可能。米軍でも多くの採用実績がある

 

言わずと知れたM2 ブローニング。銃架に搭載されたM2は数多の海軍・艦船で使用されるベストセラーだ

 

アグスタウェストランド リンクス
英国ウェストランド社製のヘリコプター。濃淡の違うグレー二色を使用した迷彩が中々にカッコイイ

 

ちなみにノルウェー海軍の格納庫に収納されていたが所属はイギリス海軍のヘリコプターである

 

よく見ると機首下のレーダーに『HNoMS ROALD AMUNDSEN』の文字が

 

個人的に特徴的だなと思ったポイント。ステルス性を考慮して海への落下防止の柵を外している状態ではハーネスを装着し作業している姿を見受けられた。荒天であっても甲板作業を安全に行える

 

 


 

 前述の通り8月12日にプリンス・オブ・ウェールズと共に横須賀へ入港、同月19日に単艦で東京国際クルーズターミナルに入港した。ロアール・アムンセンに甲板だけになるが乗船する機会を得たのでちょっとだけレポートしていこう。


 8/19 10:00クルーズターミナルに無事接岸した。海自の護衛艦によるホストシップなどは無く単艦での東京来訪・入港だ。

 入港した次の日には事前先着チケット制による岸壁とヘリコプター甲板の一般公開および乗員との交流が行われた。チケット制かつ平日で最終枠であった事もあり参加人数は多くなく快適な見学であった。

 

東京国際クルーズターミナル

 

東京国際クルーズターミナルに掲げられた左から東京都旗、日本国旗、ノルウェー国旗

 

 

 ターミナル2Fにて受付・身分証明・手荷物検査を終え岸壁に降りると海自では見ないような艦船が佇む岸壁に辿りつく。船体をじっくりと眺めながらヘリコプター甲板の方に向かうとタラップがかけられており、その場所から乗艦する。

 

岸壁から見るアムンセン。この場所より左側には行けず艦首から見ることはできなかった

 

 

甲板上で警備を行う乗員を撮らせてもらった。ノルウェー軍の要求性能に合わせて仕様変更されたHK416Nを携えている。A5で採用されたSlimLineテレスコピックストックが装着されているためMOD2012だろうか。光学機器にはAimpoint Comp M4が載せられている

 

 

立ち入り禁止を示すロープのデザインが珍しかったので撮影。文面的にノルウェー軍で広く使用している物だろうか

 

今回の見学で唯一外部から見れない箇所の格納庫。アグスタウェストランド リンクスが格納されている

 

NBC Filter Unit

 

飛行甲板に書かれる識別番号は海自では艦番号だがアムンセンでは『ROALD AMUNDSEN』のスペルをとってRAと記載されている

 

ちなみに甲板に無数存在するこの穴は

 

この様に航空機等を甲板上へ固定するのに使用される

 

艦橋は接岸時に下を確認できるように傾斜がつけられた窓がある

 

見学後ターミナル4Fから眺めていたらヘリコプターが出てきた。レセプションも行われていたのでそれに付随する関係者向けの見学用だろうか

 

 来る8/28にはCSG25旗艦である英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が東京に入港する予定だ。既に入港は一足先に見ることができたが、より一層注目を集める艦船の東京入港に筆者も心躍らせている(ドーントレスの東京入港や他のCAG25構成艦艇の来日が行われないのは残念だ)。

 

 実際に内部に乗ることは出来なくとも東京国際クルーズターミナルに訪れればもしかしたら英空母を見ることができるかもしれない。興味がある人はぜひ来日中に見てみてはいかがだろうか?

 

TEXT&PHOTO:出雲

 


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