2023/07/06
初来日!イタリア海軍の最新鋭艦「フランチェスコ・モロシーニ」乗艦レポート!
6月21日(木)、海上自衛隊 横須賀地方総監部にてイタリア海軍のフリゲート艦「フランチェスコ・モロシーニ」が特別公開された。今年3月にイタリア海軍のカヴール空母打撃群が訪日するという発表があり、今回は空母打撃群の先駆けのような形で来日となる。
イタリア海軍艦艇の日本寄港は初めてとのことで、2022年に就役したばかりの最新鋭艦というのも相まって先着順のチケットは直ぐに締め切りとなってしまった。
今回はそんなイタリア海軍艦艇乗船レポートをお届けしよう。
レポートに入る前にまず同艦の簡単なスペックを紹介する。
先に乗船レポートが見たい方はこちら
Paolo Thaon di Revel Class Frigate
P-431 Francesco Morosini
タオン・ディ・レヴェル級多用途支援艦(フリゲート)
2番艦 フランチェスコ・モロシーニ
就役:2022年10月22日
性能諸元
- 全長:132.5m
- 最大幅:16.5m
- 喫水:5.0m
- 排水量(満載):6,720t
- 乗員:90名+53名
兵装
- オート・メラーラ 127mm単装速射砲 ×1基
- オート・メラーラ 76mm単装速射砲 ×1基
- エリコン KB 25mm単装機銃 ×2基
搭載機
- NH90 2機
- AW101 1機
タオン・ディ・レヴェル級多用途支援艦(フリゲート)はフィンカンティエリ・ムッジャーノ造船所にて建造された。
イタリア艦艇らしい独特な構造や運用思想を持ち、多用途・多機能であることを重視して開発・建造された艦である。本級には「哨戒型(Light)」「中間型(Light-Plus)」「重武装型(Full)」とそれぞれ船体や武装が異なる3種類があり、F・モロシーニは哨戒型(今後重武装型に改装予定)となっている。
船体は今流行りのステルスを意識した形状で、ステップ・バウ(ウェーブ・ピアジング・バウ)と呼ばれる二重構造の艦首が特に目を引く。機関にも「もがみ型護衛艦」や米海軍のLCS、ドイツ海軍ザクセン級に搭載されたディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせるCODAGを採用。
武装は哨戒型ということもありこのクラスの艦艇にしては抑えめだが、今後オトマート対艦ミサイルの最新型「テセオ」やVLSを搭載し、対艦戦闘にも対応可能になる。
~乗船レポート~
「フランチェスコ・モロシーニ(以下、F・モロシーニ)」が停泊していたのはH-1バース。ヴェルニー公園からも視認できる位置で外来艦がよく停泊する場所であり、護衛艦「いずも」がよく停泊している岸壁と言えば伝わる人には伝わるだろう。
奥のH-2バースには海上自衛隊の最新鋭艦かつホストシップの「もがみ」が停泊していた。
今回の特別公開は以前のフランス海軍フリゲート艦「プレリアル」や護衛艦特別公開と同じく解説者(英語)が同行しての見学となった。
乗艦してすぐに通されたのはヘリコプター格納庫だ。外観からも漂っては来たが、ここでも普段よく見る護衛艦との違いを再び実感することとなった。
護衛艦や米軍艦は基本的に露天甲板上の通路帯やヘリコプター格納庫、ヘリコプター甲板といった所は砂を混ぜた塗料で滑りにくくしているので少しゴツゴツとしているのだが、この船は全体的に少しザラザラしている不思議な甲板だ。
恐らくこの機体目当ての人もいることだろう物がヘリコプター甲板には置かれていた。
そう、「NH90」だ。艦船に搭載されるモデルなので、正確には「NH90 NFH」となる。当ヘリコプターは欧州のフランス・ドイツ・オランダ・イタリアの4カ国共同で各国の微細な運用思想の違いによって紆余曲折ありながらも設計・開発された高性能な多用途ヘリコプターだ。
格納庫上を見ると「オート・メラーラ 76mm単装速射砲」が顔を覗かせている。60年代に作られたものの、今なお採用され使い続けられている傑作単装速射砲だ。実は同装備は海上自衛隊でも使用されているが、外装が全然違うため何も知らずに見たら同じとは思えない。
次は艦橋の内部へと向かった。新型艦ということもあってか海外の艦艇にしてはかなり綺麗だった。通路の幅はごく一般的な物の階段は海上自衛隊や米軍で使用されているタラップとは比較にならないほど上りやすく、こういったところからも設計思想の違いが窺い知れる。
通路を歩いていくと通された先はCIC(Combat Information Center)だった。手前のコンソールは撮影不可であったが奥のスクリーンは撮影可能とのことで撮らせていただいた。
通常、CICはブリッジ(艦船の指示、操舵を行なう場所)とは違った階層に設けられることが多いのだが、「F・モロシーニ」はなんとブリッジの真後ろにあるのだ。省人化のためなのか、はたまた他の理由があって作られたのか分からないが不思議な感覚だ。
最後は艦船の頭脳ともなるエリア「ブリッジ」だ。普通ブリッジは横長にコンソールが並んでいるのだが、同艦は三角形の艦橋に個々のコンソールが独立するように配置してあり、一般的な配置と全然違う。ここでは操舵だけではなく、各種火器の集中管制も行なわれている。
一番驚いたのは飛行機のような操舵席とゲームのような表示画面だ。今までの艦船たちの操舵席とは一線を画す近未来的な設計をしている。
やはり各国の海軍を見ていくと自国の護衛艦とは違ったものが見えてきて面白い。今回お送りしたイタリア海軍は、フランスやイギリスと違って海外領土を持たないので本国から日本まで来ることとなる。なのであまり多く見られるものではないのでかなり貴重な機会となった。
今後タオン・ディ・リヴェラ級で2隻のみ配備されている哨戒型2隻「パオロ・タオン・ディ・リヴェラ」と「F・モロシーニ」は重武装型へと改装される予定となっている。もしまた同艦が来日する時は今とはまた違った姿で来ることになるだろう。
今しか見られないこの貴重なイタリア海軍最新鋭艦を見学させてくれたイタリア海軍と在日イタリア大使館の方々、そして停泊している海上自衛隊横須賀地方総監部の皆さまには感謝しきれない。
台湾・尖閣周辺の緊迫化などを受け、海上自衛隊は「自由で開かれたインド太平洋」実現のために同盟国、同志国の海軍との交流、共同訓練を今までにない頻度で行なうようになった。
今回はLIMAや他国との共同演習のため「フランチェスコ・モロシーニ」単艦での来日となったが、今後イタリア海軍の誇る空母打撃群を訪日させるとの発表も出ている。
昨今の情勢下にあっては、他国海軍の艦艇がこのようなイベントに参加するのは稀だ。今後、機会を捉えて積極的にレポートを行なっていきたい。
TEXT&PHOTO:出雲
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