エアガン

2025/05/14

絶版モデルガンに見る第二次世界大戦マイナー&じゃないほう拳銃 Part1

 

絶版モデルガンに見る第二次世界大戦マイナー&じゃないほう拳銃

 

 かつてトイガンの花形だったモデルガンは、メジャーな人気の銃を中心に、マイナーでレアな銃も作られた。今回はすでに絶版となってしまったモデルガンの中から、第二次世界大戦で使われた各国のマイナーな拳銃、主流じゃないほうの拳銃をピックアップしてみた。

 

 

ドイツ軍

 

MGC「モーゼルHSc」

 

MGC製モーゼルHSc(1968年)。グリップはプラスチック製が標準で、写真の木製はオプション
(Photo by Keisuke.K)

 

 日本では人気の高いオートマチック・ピストルだが、有名度からいくと、どうしてもルガーP08、ワルサーP38、ワルサーPPKなどの後になってしまう。映画などで使われた例も少なめで、マイナーな印象が付きまとう。
 MGCがHScをモデルガン化したのは1968年。相変わらずスライドアクションのPPKは大人気だったものの、実銃とまったく違うメカニズムはマニアックなガンファンからは敬遠されるようになりつつあった。そこでHScは、わずかな部品交換でオーソドックスな手動式のシングル/ダブルアクション・オートマチックにも、撃って遊ぶのに最適な連射が可能なスライドアクションにもなる「1挺で2挺分楽しめる!」というコンセプトで作られた。


 設計したのは小林太三さん。モーゼルとH&KとHScが大好きな小林さんは、モデルガンのHScにもH&Kの手法を取り入れ、天才的な発想で実にユニークな独特の拳銃を完成させた。当初はシングル/ダブルアクションのデラックスモデルがメインで販売されたが、意外にもスライドアクションの人気が高かったことから、スタンダードモデルとして併売されることになった。
 銃としてはメインストリームではなかったが、モデルガンとしては大人気のヒット作となった。

 

MGC製モーゼルHScの箱。1975年のsm自主規制頃から輸出用の箱が国内用でも使われるようになったらしい
(Photo by Keisuke.K)

 

MGC製モーゼルHSc用のカートリッジ。MGCはカートリッジが全機種別売で、なぜかFN 380と共用
(Photo by Keisuke.K)

 

MGC製モーゼルHScのB5判二つ折りカタログ。取説とパーツ表を兼ねていた

 

MGC製モーゼルHScのA4判チラシ。写真は表が量産試作第1号で、裏面は手作りの原型が使われたそうで、微妙な違いがある

 

 

  • 主要材質:亜鉛合金ダイキャスト、ABS樹脂(グリップ)
  • 撃発機構:シングル/ダブルアクション(デラックスモデル)、スライドアクション(スタンダードモデル)
  • 発火方式:前撃針/ファイアリングブロック(のちにファイアリングプレート)
  • カートリッジ:ソリッド・タイプ
  • 使用火薬:平玉紙火薬 1〜3粒
  • 全長:166mm
  • 口径:7.65mm(.32口径)
  • 重量:580g
  • 装弾数:7発+1(薬室内[デラックスモデル])
  • 発売年:1968年
  • 発売当時価格:スタンダード[S]モデル¥2,800(カートリッジ別売り)、デラックス[D]モデル、ガンブルー仕上げ¥3,100(カートリッジ別売り)
  • オプション:カートリッジ(FNブローニングと共用)12発¥300、木製グリップ¥600

 

※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。

 


 

インターナショナル・ガンショップ「モーゼルHSc」

 

インターナショナル・ガンショップ製モーゼルHSc(1968年)

 

 MGC製ワルサーPPKの大ヒットを念頭に、同様の遊べるモデルガンを目指して開発されたのが、インターナショナル・ガンショップ(のちの国際産業)のHSc。原型製作は六研の六人部 登さん(以下六人部さん)。


 インターナショナル・ガンショップは、スマートなデザイン、ユニークな分解方法、手頃なサイズ、他社が手がけていないモデルということから、次の新製品としてHScを選んだ。そして六人部さんに「遊べるHScを作ってほしい」と依頼したという。そして出来上がったのが、スライドアクション方式のHScだった。
 奇しくも、2人の天才トイガンデザイナーによる、機種も作動方式も同じというモデルガンの競作という形になった。特に興味深かったのは、同じスライドアクションでありながら、その機構がまったくと言って良いほど異なっていること。


 ただ、六人部さんの方式は、原型はスチールを機械加工したもので、高い精度で作られていたためスムーズに作動したそうだが、亜鉛合金で量産すると最初はうまく動かなかったらしい。その調整のため発売が予定より3カ月ほど遅れたという。それでもどうにかMGCとほぼ同時期に発売された。
 スライドアクションは、モデルガンの作動方式としてはマイナーなもので、うまく作動させるにはそれなりのコツをつかまなければならなかったが、慣れれば連射も可能で、発火全盛期には人気が高かった。

 

インターナショナル・ガン・ショップ製モーゼルHSc専用7.65mmカートリッジ。5発が付属した

 

インターナショナル・ガンショップ製モーゼルHScの箱。輸出を考慮してか、どこにもモーゼルやHScの文字はない

 

インターナショナル・ガンショップの専門誌1968年3月号の広告。遂に完成とある。写真は六人部 登さんが作った原型モデルらしい

 

  • 主要材質:亜鉛合金ダイキャスト
  • 撃発機構:スライドアクション
  • 発火方式:前撃針
  • カートリッジ:ソリッドタイプ
  • 使用火薬:平玉紙火薬 1〜3粒
  • 全長:170mm
  • 重量:650g
  • 口径:7.65mm
  • 装弾数:5発
  • 発売年:1968年
  • 発売当時価格:¥3,000(カートリッジ5発付き)、ゴールドモデル ¥4,000(カートリッジ5発付き)

 

※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。

 


 

マルゴー(丸郷商店)「ワルサーPP」

 

マルゴー製ワルサーPP(1969年)
(Photo by Keisuke.K)

 

 1964年にMGCが発売したスライド・アクション(指アクション)のワルサーPPKが、007映画の影響もあって大ヒットしたことを受けて、当時ライバルだった日本高級玩具組合(N.K.G)でも同系となるワルサーPPのモデルガン化が進められた。


 1967年の時点で、すでに六人部さんによる原型は完成していた。実銃に準じた手動式のシングル/ダブルアクションを備えたものだったという。しかしモデルガン化権を獲得したマルゴーでは2,500円(のちに1,700円まで値下げされた)で売られていた格安のMGCのPPKに対抗するため、ダブルアクション機構を省略するなどして、できるだけ価格を下げることにしたらしい。また当時の技術ではリアルなダブルアクション機構だとすぐに摩耗してしまい、ダブルアクションが利かなくなるという問題も発生していた。その辺のことも考慮されたものと思われる。


 その結果、カートリッジ付きで3,500円というちょっとだけ割安な価格で発売できたものの、MGCのPPKには遠くおよばなかった。しかもダブルアクションだけでなく、シグナルピンなどの省略パーツも多いという中途半端な仕様となったことで、ファンからは注目されなかった。実銃は決してマイナー銃ではなかったものの、モデルガンではマイナー銃の仲間入り。有名スパイが選ばなかった方は、金属製ではほかにどこも手がけていなかったことから貴重なモデルではあったが、残念なモデルガンとなってしまった。

 

マルゴー製ワルサーPPの箱。写真はなぜかターゲットタイプが使われている。しかも口径が76.5mm! 昔はこういう間違いが良くあった
(Photo by Keisuke.K)

 

マルゴー製ワルサーPP用7.65mmカートリッジ。2本の溝が切られているのがオシャレ。ただ汚れはたまりやすい
(Photo by Keisuke.K)

 

専門誌1969年6月号のマルゴー製ワルサーPPの広告。いよいよ発売とある。試作品のためかトリガー位置がちょっとおかしい

 

  • 主要材質:亜鉛合金ダイキャスト、ABS(グリップ)
  • 撃発機構:シングルアクションのみ
  • 発火機構:前撃針/ファイアリングブロック
  • カートリッジ:ソリッドタイプ
  • 使用火薬:平玉紙火薬 1〜3粒
  • 作動方式:手動操作
  • 全長:170mm
  • 口径:7.65mm(.32口径)
  • 重量:720g
  • 装弾数:8発+1(薬室内)
  • 発売年:1969年
  • 発売当時価格:¥3,500(カートリッジ7発付き)

 

※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。

 

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

TEXT:くろがね ゆう/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年4月号に掲載されたものです。

 

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