エアガン

2025/02/15

モデルガンに見るコンパクトオートの系譜 chapter.01

 

モデルガンに見るコンパクトオートの系譜

 

 

 もともとモデルガンは小型のオートマチックピストルから始まった。すぐに大型拳銃も登場したが、大ヒットしたスパイ映画の影響もあって、コンパクト・オートに多くの人が飛びついた。マグナム・ブームやコンバット・シューティング人気で大型拳銃が主流になってからも、ファンには小型ならではの魅力で愛され続けている。


 

はじまり

 

 1960年頃、アメリカなどの海外製トイガンが人気となってガンブームが起きた時、それらは子供向けのものだったから、もともとサイズが小さめに作られていた。たとえばコルト・ガバメントをモチーフにしていても、大人の手の平にスッポリ収まってしまうくらいの大きさしかない。それでもポケットの中などに隠し持ちやすく、ハンドリングもしやすかったことから、かえって好まれたりしたらしい。それよりも、大人のユーザーにはあまりにも実銃とかけ離れた派手な外観やメカニズム、操作方法に大きな不満があった。


 そこで、輸入トイガンの仕上げをガンブルー風にすることから、戦後の大人向け日本製トイガンの歴史は始まった。
 MGCが1962年に発売したガバメント系のコルト・スペシャルは、ヒューブレーの輸入トイガンをベースに、火薬は使わないものの、トリガーを引くとスライドが下がって空薬莢(カートリッジ)が飛び出すという驚くべき仕掛けがあった。小さかったことから、口径はいちおう.38ACP(.380ACP ?)とされていた。

 

MGC製コルト・スペシャル(1962)。HUBLEY AUTOMATICの浮き彫り文字が残されたまま。セーフティは失われた状態

 

MGC製コルト・スペシャルは、トリガーを引くとスプリングの力でスライドが下がり、カートリッジがエジェクトされる


 純国産のモデルガンは1962年の後半に発売された。ハドソンが発売したのは、モーゼル大型軍用拳銃、いわゆるC96タイプだ。全長は30cmほどもある。ボルトを手で操作してダミーカートリッジを装填、排莢し、発火はその都度コブラキャップという輸入の玩具用火薬(初期のキャップ火薬のようなもの。のちに輸入禁止となった)をボルト後部にセットして、直接ハンマーで叩いて発火させる方式。大型であったこともあって、価格は、大卒の初任給が13,000円の頃に、5,000円もした。


 一方、わずかに遅れて発売されたMGCの第1号モデルガンは、ワルサー・モデル2をベースに、モデルガン化しやすいよう大幅にアレンジしたワルサーVP-II。VPはベスト・ポケット(チョッキのポケットに入るサイズ)から取られ、IIはモデル2から取られたという。メカニズムは指アクション(スライド・アクション、タニオ・アクションとも)。トリガーを引くだけでスライドが連動して動き、装填、排莢ができる仕組み。

 しかも発火モデルはカートリッジの頭部にコブラキャップをセットし、薬室内の前撃針に激突させて発火させる新方式。カートリッジがあるだけ連射可能で、最も高価なタイプは銃口から発火ガスが抜けるようになっていたので、さらに迫力のあるファイアリングを楽しむことができた。その価格は3,800円。モーゼル大型軍用拳銃より大幅に安かった。


 MGCがあえてコンパクトモデルを選んだのは、大きく2つの理由があった。1つには、小さな銃だと価格を安くできるから。そしてもう1つは、指アクションゆえに、スライドが小さいほどトリガーを引く力が少なくてすむからだ。


 そんなことからモデルガンはコンパクトオートで人気を得て、一気に普及していった。

 

MGC製ワルサー VP-I(I 1962)。MGC初の純国産モデルガン。実銃を参考にデザインされた架空モデル(Photo:Keisuke.K)

 

MGC製ワルサーVP-IIは指アクションで、トリガーを引くと連動してスライドが後退、カートリッジをエジェクトする

 

スパイ・アクション

 

 MGCはオートマチックハンドガンの第2弾として、VP-IIを作る時に候補に挙がっていたワルサーPPKを選んだ。これには1963年に日本で劇場公開された007映画の第1弾『007は殺しの番号』(1972年のリバイバル公開時に『007 /ドクター・ノオ』と改題)の大ヒットも少なからず影響していたと思われる。この映画で殺しの許可証を持つスパイ、007ことジェームズ・ボンドはPPKを使うことになる。


 ただ当時は国内に実銃の資料があまりなく、海外旅行が自由化されたのも1964年からで、実銃を取材することもままならなかった。さらには、社長の「子供でも使いやすいサイズにする」という方針により、実銃の90%のサイズで作られることになった。公式データの全長は141mmで、実銃より14mmほど短い。それでも初めてのリアルな外観を備えたコンパクトオートだった。メカは基本的にVP-IIと同じ指アクション。これを組み込むための多少のアレンジと、より安く作るためのアレンジが加えられた。

 

MGC製初代ワルサーPPK(1964)。指アクションで、実銃の90%のサイズで作られた。写真は24金メッキが施された007記念限定モデル(Photo:Keisuke.K)

 

MGC製初代ワルサーPPK用カートリッジ。サイズは7.65mm弾のケースと同じにされたが、のちにベレッタ・ポケットと共用になり6.35mm弾に分類されることになった


 MGCは1964年にこのPPKを発売すると、同じ年に劇場公開された007映画『007 /危機一発』(1972年のリバイバル公開時に『007 /ロシアより愛を込めて』と改題)と提携。それ以降『007は二度死ぬ』(1967)まで、日本国内で制作された007映画のポスターには、MGCの刻印が入ったPPKの写真が使われることになる。


 007はPPKをショルダーホルスターに入れて携帯していたため、ショルダーホルスターも人気となった。当時コンシールドキャリーなどという呼び方はなかったが、隠し持つにはショルダーホルスターが最適で、いかにもスパイっぽかった。
 映画は大ヒット。MGCのPPKも空前の大ヒットになった。スパイブームの到来。スパイの秘密兵器も人気になった。


 あまりの人気ぶりに、PPKのコピー商品までが作られたほど。MGCはこの後、1967年にリアルサイズのニューPPK、1970年にヴァッフェンSS PPKと、2回もPPKを作っている。しかもすべて指アクション。

 

 

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TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年12月号に掲載されたものです。

 

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