エアガン

2025/05/05

オールドモデルガンに見るピストルカービンのminiヒストリー 第2回

 

法規制

 

 ピストル(ハンドガン)を延長することで長物として作られたピストルカービンのモデルガンは、法規制によって生まれたあだ花的に捉えられがちだ。しかし実際にはそれよりも前に誕生し、後々まで生き残ったモデルは多くのファンに長く愛され続けている。このコーナーはその複雑な歴史を紐解いていく連載である。

 

 第1回はこちら 

 

オールドモデルガンに見るピストルカービンのminiヒストリー

 

 

 1965年にモデルガン業界が分裂して誕生した日本高級玩具組合(N.K.G)グループの中心的存在だった中田商店も、MGCのピストルカービン攻勢を黙って見ていたわけではなく、対応するモデルを発売していた。ボクが今回確認できたところでいちばん古いものは、1967年2月発行の「第二次大戦各国軍用品カタログNO.4」に掲載されたルガー砲兵モデル。カービンの表記はどこにもなく、オプションのサイレンサー、スネイルマガジン、木製ストックを付けるとこうなるというカービンスタイルの写真が掲載されている。
 ハンドガンにアタッチメントを取り付けてカービンタイプにするのはもちろんアリだが、銃本体はハンドガンそのままなのでピストルカービンと呼ぶのは、ボクにはちょっと抵抗がある。


 1970年1月1日発行のNO.6になると「銃身長10吋(インチ)カービンモデル32連発ドラムマガジン付」の写真が掲載され、これにはフォアグリップが装着されている。とはいえ、価格が記載されておらず、試作のみだった可能性はある。
 アタッチメント方式で最たるものがアンクルカービンだろう。NO.4の表紙には試作と思われる中田商店のWALTHERアンクルタイプが掲載されている。こちらは翌年には9,600円で発売され、ハイパワーをアンクルカービン化したものも8,700円で発売されている。
 もちろんMGCもアンクルカービンを作っている。まずベースとなるP-38がない1965年頃に、FNブローニング380をベースにしたアンクルカービン風のカスタムが作られている。そしてP-38アンクルタイプが完成した1967年には、アタッチメント一式を装着したアンクルカービンを8,300円で発売している。


 そして1971年10月20日、第1次モデルガン法規制が施行される。ただその半年前には規制が施行されることが公布されていたし、その前から国会で審議されていたことも報道され、反対運動も展開されていたから、メーカー各社はそれなりの準備を進めていたのも事実。その結果、メイン商品だった規制対象となる多くの金属製ハンドガンの在庫を少しでも無駄にしないよう、比較的簡単に規制対象外の長物に変更できるピストルカービンをたくさん作った。
 

MGC モーゼルミリタリー・カスタムカービン

 

 

DATA

  • 主材質:亜鉛合金
  • 発火機構:前撃針
  • 撃発機構:シングルアクションハンマー
  • 作動方式:手動(ロックト・ショートリコイル)
  • カートリッジ:ソリッドタイプ
  • 使用火薬:平玉紙火薬
  • 全長:760mm
  • 銃身長:12インチ
  • 重量:1.7kg
  • 口径:9mm
  • 装弾数:10発
  • 発売年:1971年
  • 発売当時価格:11,000円(スタンダード)、16,000円(デラックス)(各カートリッジ、クリップ別売り)
  • オプション:カートリッジ12発350円、カートリッジクリップ1本250円


※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

モーゼルカービンは、輸送中にストック取り付け基部が破損してしまう危険性があったため、このように分解されてパッケージングされていた

 

モーゼルカービンは、ストックを外した時ピストルタイプにならないように、フレームのグリップ部分が切り落とされている

 

モーゼルカービンはバレルがショートリコイルするため、フォアグリップがフレーム側に取り付けられていたが、実銃にあるステイは省略されていた

 

モーゼルカービンの口径は最初9mmパラベラムとされていたので、ルガーカービンとカートリッジが共用だった

 

 たとえばMGCは、規制前の1971年の7〜8月の予約受け付けで、手動式のモーゼル・スペシャルカービン(スタンダード29,000円、スペシャル31,000円、デラックス39,000円)と、TVドラマ『キイハンター』のサイドアームとされるSW-44 BLKシークレットスナイパー(18,000円)を発売。さらに規制後の1972年には、リボルバーのM19 にグリップ一体のサムホールストックを装着した357ハンターカスタム(2.5インチ、4,800円)、357ハンターカスタム(4 or 6インチスコープ付、6,500円)、モーゼルカービン(5.5インチ、8,000円)、サイレンサーとスコープを装着した1911オートのGMスナイパー(12,700円)、伸縮式メタルストックとサイレンサーを装着したブローバックのSWコンバットオート(12,000円)、グリップを取り去ってストックを装着したフロンティアカービン(6,200円)、同じくネーヴィーカービン(8,000円)などが、セミカスタムとして一斉に発売された。

 

1967年2月発行の中田商店「第二次大戦各国軍用品カタログNO.4」に掲載されたルガー砲兵モデル。ほぼピストルカービンの体をなしているがセット売りではなく、各アタッチメントはバラ売り

 

1968年3月発行の中田商店「第二次大戦各国軍用品カタログNO.5」に掲載された、P38とハイパワーのアンクルタイプ・カービン

 

1970年1月1日発行の中田商店「第二次大戦各国軍用品カタログNO.6」に掲載されたルガーP-08の10インチと12インチ。10インチにはフォアグリップが装着されている。どちらにもカービンモデルの表記があるが、価格が記載されておらず、試作のみだった可能性は高い

 

 N.K.GグループのCMCは、Gun誌1971年12月号の広告で「モデルガン規制対象外製品」と付記して、11月下旬にレミントン・ニューモデル・アーミーをカービン化したレミントンカービンM1866を発売することを発表した。当時モデルガンの発売は遅れることがよくあったので、年内に発売されたのか1972年になったのかはわからない。価格は13,000円だった。


 同様にN.K.Gグループのハドソンは、Gun誌1972年5月号の広告で、前年に発売したモーゼルM1930をカービン化した14.5インチバレルのモーゼル・スモールリングハンマー・カービンを4月に発売することを発表する。価格は15,800円で、「カスタムメイド」と付記している。そしてほぼ半年後には、フォアグリップなしの9インチバレル、20連マガジン付き、豊和工業製オイル仕上げストックのモーゼルSRHカービンも発売している。価格は13,000円。「全品カスタムメイド」と付記された。

 

MGC P-38 アンクルタイプ

 

 

DATA

  • 主材質:亜鉛合金
  • 発火機構:前撃針
  • 作動方式:スライドアクション(装填衝撃発火方式)
  • 使用火薬:平玉紙火薬
  • カートリッジ:ソリッドタイプ
  • 全長:175mm
  • 重量:800g
  • 口径:9mm(P-38、ベレッタ共用)
  • 装弾数:8発
  • 発売年:1966年
  • 発売当時価格:本体 3,300円(ガンブルー仕上げ3,700円)

 P-38アンクルカービン 8,300円(ガンブルー仕上げ8,700円)

 マズルブレーキ 400円

 スコープ 2,200円

 マウント 400円

 エクステンションバレル 300円

 ショートサイレンサー 400円

 ストック 800円

 16連マガジン 700円

 

※銃本体の表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※オールドモデルガンは、1977年の第2次モデルガン法規制に適合したもの(smGマークがあることがひとつの目安)以外を売買することは法律で禁じられています。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

 


 

TEXT & PHOTO:くろがね ゆう/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年6月号に掲載されたものです。

 

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