エアガン

2025/03/07

ボクらはM16のモデルガンに未来を見ていた Chapter.01

 

 先進的デザイン、小口径高速弾、アルミニウム合金、合成樹脂……M16は当時の主流であった軍用銃とは大きくかけ離れたイメージの最先端アサルトライフルだった。そんなM16のモデルガンに多くのファンが未来を見ていた。

 

 

人気No.1の現用軍用銃

 

 最初のM16のモデルガンが発売されたのは、1973年のこと。この年は、最初のモデルガン法規制(1971年10月20日に施行された改正銃刀法)により、金属製ハンドガンが銃口を閉塞し、白または黄色(特例として金色も可)にしなければ所持できなくなって2年目。多くのファンは、黒くて銃口が開いたままでもよい、規制の対象外となるライフルやサブマシンガンといった長物に流れ、メーカーの新製品も自ずと長物が多くなっていった時期。
 当時は発火全盛期で、ブローバックも大人気。オートマチックはブローバックでないと売れないとまで言われていた。


 そんな時期にM16は発売された。この頃、多くの人がM16はアメリカ軍がベトナム戦争で使っている最先端の軍用銃だということくらいは知っていた。そして、銃に興味を持ち始めたくらいの子どもたちには、M16はほかとはまるで異なるデザインから、未来的なSF銃のように映っていた。とは言え、どのように操作するのかなど、詳しいことはほとんどの人が知らなかった。

 だからモデルガン化されると聞いて、多くの人が驚きと期待の声を上げた。最先端の現用軍用銃がモデルガン化される! 自分の手でいじり回せる! などなど。

 

MGCが1973年に発売した金属製M-16E1デトネーター方式ブローバック。多くのファンがこのモデルの登場に熱狂した

 

 最初の発表は国際出版代理部で、「月刊Gun誌」の1972年5月号の小さな広告に「次期発売予定M16(AR-15)」と出た。モノクロの小さな広告だったのに、瞬く間に知れ渡り話題になった。
 ところが、国際出版代理部のM16は発売されなかった。6カ月後の11月号の広告で、「M16(AR-15)は中止となりました」と発表された。理由は諸般の事情からとしか書かれていなかったが、どうも実際に設計・製造を手がけていた桜邦産業(後の国際産業)が、その当時販売が始まっていた新製品のトンプソンM1928Aの製造にてこずり、新機種の開発まで手が回らなかったためらしい。

 

MGC製M-16E1の独特の構造を解説したカラーカタログ。発売前から大量に配布された

 

 一方、MGCでもM16のモデルガン化が進められていて、1973年の6月くらいから、少年漫画誌や青年漫画誌を中心にM16の広告を始めた。また直営店の店頭にもチラシが並べられ、通信販売でモデルガンを購入した人にはカタログと一緒にそのチラシも送付された。
 メイン・ビジュアルは大人気漫画の『ゴルゴ13』と『ワイルド7』のキャラクターがM-16E1を持っているというもの。サブ的に外国人モデルを使った兵士風のモノクロ写真もあったが、ちょうどその頃、TVで実写版のドラマ『ワイルド7』が放映されていたし、1973年の年末には高倉健主演の実写映画『ゴルゴ13』が劇場公開されている。どちらの作品にもMGCがモデルガンベースのプロップガンを提供しているのだ。すでにメディアミックス的な宣伝・広告展開が図られていたわけだ。

 

 MGCのモデル名はM-16E1。誰もが聞き慣れないモデル名だったが、設計を手がけた小林太三さんがアメリカ陸軍のテスト用に提出されたというXM16E1を参考にしたことから、M-16E1と命名されたのだそう。つまりMGCオリジナル名だ。さらにそこにA2から使われることになる新型の円筒形ハンドガードを組み合わせた。知っている人がいるはずがない。実銃としては存在しないのだから。昔はこんなことがよくあった。模型としての側面より玩具としての側面の方が重視される傾向があったのだ。

 

MGCが製作した小冊子『M-16のすべて』。知らない人が多かったことから、実銃の解説、アサルトライフルとは、モデルガンの解説など充実した内容で、たしか300円ほどで販売された


 もちろん目玉はその未来的なスタイルの再現にもあったが、何よりMGC独自のデトネーター方式による豪快なブローバック作動にあった。

 しかし、その実現は簡単なことではなかった。M16はMGCにとって初めてのクローズドボルト撃発方式。カートリッジをチャンバーに送り込んだ時に暴発させてはならない。トリガーを引いてハンマーを落としたときに発火させなければならなかった。

 

 そこで考え出されたのがロックド・フローティング・ブリーチと名付けられた機構。当時のモデルガンは改造防止の安全対策上、自主規制として、撃針を持つセンターファイア方式は再現できなかったことから、ブリーチ(ボルト)全体でカートリッジを叩いて前進させ、前撃針(デトネーター)に激突させて発火させていた。だからM-16E1では、このブリーチを発火寸前の位置でロックして前進できないようにし、トリガーを引くとロックが解けてフローティング状態になり、前進してきたハンマー(ストライカー)によって叩かれて発火が起きるようにしたのだ。

 

MGC製M-16E1の最初のバリエーション、M-16A1が発売されたときに製作されたチラシ。ベトナム戦をイメージした戦士シリーズの写真が使われている


 まさに小林さんらしいユニークなメカニズムだった。これにより、確実にセミ/フルを切り替えて快調なブローバックを楽しむことができた。
 こんな楽しいモデルガンが売れないわけがない。たちまち大人気となり、品切れで数カ月待ちなどという事態まで発生した。おそらく長物人気No.1だったはず。


 新しいクローズド・ボルト撃発方式と、新しいロックド・フローティング・ブリーチという機構、そしてデトネーター方式ブローバックによる後方への反動など、新機軸満載のMGC M-16E1に、ファンはモデルガンの未来を見ていた。

 

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。

 

TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年2月号に掲載されたものです。

 

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