2024/01/13
日本ではレアなライフル、Marlinのモダナイズドモデルで狩猟! We LOVE Lever Action !【Guns&Shooting】
We LOVE Lever Action
Marlin 336 Modernized
Lever Action
宿命のライバル!
マーリンとウインチェスターのレバーアクションでディアハンティング!
噂のModernized Lever Action
「あっ!マーリンの近代化カスタムだ。カッコイイ!!」
昨年5月、筆者の2挺目のライフル銃イタリア製ウインチェスター モデル1876ライフルの初撃ちに松尾副編集長とニッコー栃木綜合射撃場を訪れた時のことだ。近くの射座で近代化カスタムを施したマーリン モデル336を撃っているシューターがいることに、筆者はすぐに気が付いた。
マーリンやウインチェスターのクラシックなレバーアクションライフルに最新型の金属製ハンドガードやレイルマウントを取り付けるModernized(モダナイズド:近代化)改修が、数年前からアメリカでちょっとした人気になっているのを筆者は知っていたが、まさか日本にこれと同じカスタムを施した猟銃があるとは!!
銃が好きな人じゃないと、こういう“知る人ぞ知る”カスタムをやろうなんて思わないだろうから、所持されておられる方は、かなりの“通”だと思った。早速、松尾副編集長と一緒に声を掛けさせてもらった。
こんなキッカケで友人となったのが、富山龍太郎さんだ。富山さんのマーリンは、銃自体は通常のモデル336レバーアクションライフルで、口径は.30-30 Win。そのライフルに、アメリカから個人輸入したマーリン336用の金属製ハンドガードや専用レイルマウントを取り付け、それにスコープや各種アクセサリーを装着している。特徴的なハンドガードはM-LOK(エムロック)に対応したものだ。
M-LOKとは、銃器およびアクセサリーメーカーのMAGPUL(マグプル)が開発した最新の統一規格で、現代のライフルやショットガンでもはや定番となっているアタッチメントシステムだ。ハンドガードに設けられた長方形のスロットに、同じM-LOK規格のアクセサリーを簡単に着脱でき、自分の思うままに銃をセットアップすることができる。
筆者が現在、猟で主に使っている銃はウインチェスター モデル1895だ。日本国内でウインチェスターのレバーアクションの定番モデルとして広く所持されているのはモデル94(モデル1894)だが、その1894の1年後に発売された銃で、19世紀に開発されたクラシックなウインチェスターのレバーアクションライフルの最終進化型に当たる。
レバーアクションのライフルといえば弾倉はチューブ式が定番だが、この銃は固定式の箱型弾倉を持ち、.30-06 SPRGなどの強力な弾を撃つことができる。またチューブ式マガジンでは安全上、先のとがった弾頭は使えないが(チューブ内で弾の先端が前の弾の雷管に接触するため、先のとがった弾頭だと弾倉内で暴発の危険性がある…怖い!)、この銃は箱型弾倉なのでそれが使えるメリットがある。
この銃に搭載したスコープは銃身の上にフォワードマウントするスカウトライフル用のロングアイリリーフスコープで、スコープを覗きながら広い視界を確保できるのが特徴だ。
人気急上昇のMarlin Lever Action
マーリンとウインチェスターは、ともに19世紀のアメリカで創立した伝統ある銃器メーカーで、お互いがライバルだ。
会社の設立は、ウインチェスターが1866年でマーリンは1870年だ。共に当時最新型の連発機構だったレバーアクション式のライフルを多く発売し、両社とも成功している。それらのレバーアクションは現在も製造され、少し古い情報ではあるが、1983年には“米国市場で最も売れたハイパワーライフル”として、その第1位がウインチェスター モデル94、第2位としてマーリン モデル336が記録されている。
日本での猟銃所持では、レバーアクション(アンダーレバー式)と言えば、ウインチェスターのモデル94と並んでマーリンのモデル336が定番だ。ともに口径.30-30 Winのライフルとしてだけでなく.410散弾銃に改修して所持されることも多い。ところがマーリンは世界的に有名なメーカーにもかわらず、これまで日本での知名度は高くなく、マーリンのレバーアクションライフルに対して「ウインチェスター」と説明されてしまうことも少なくなかった。
しかし最近は状況が変わった。近年、マーリンのレバーアクションが活躍する映画が公開されたことにより、マーリンの人気は国内でも急上昇。その映画とは、現代によみがえった恐竜が大暴れする人気SFシリーズの『ジュラシック・ワールド』(2015年製作)を筆頭に、人気アクションスパイ映画の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年)や、インディアン居留地を舞台にFBIの女性エージェントと地元のカウボーイハンターが殺人事件の犯人を追う現代版西部劇の『ウインド・リバー』(2017年)だ。
これらの映画では、銀色に輝くオールステンレス製のマーリン モデル1895 SBLがカッコ良く登場する。最近は昔ながらの西部劇が日本で公開されることも少なくなったので、若い世代のGunファンの間ではマーリンの方が、人気が高い気がする(ちなみに有名なTV西部劇の『ローハイド』では、銃のプロップとしてはウインチェスターと共にマーリンが多く使われている)。
筆者も映画が大好きなので、正直マーリンは欲しい。だが残念ながらモデル1895 SBLは口径が.45-70で、日本で通常許可がおりる口径の上限の10.5ミリメートルを超えているため所持できない。だから実は1挺目のライフル銃の候補にオールステンレス製のモデル336 XLRもあって、ウインチェスター モデル1895とどちらにするか、さんざん迷った経緯がある。
マーリンは排莢が横方向でスコープの搭載に向いており、レバーのアクションも回転が1点軸のため操作がスムーズなどの大きなメリットがあるため、大変魅力的だ。マーリンモデル336 XLRには、今も憧れている。
Lever Action Hunting
マーリンとウインチェスターのレバーアクションを所持する2人が、一緒に出猟できたら楽しいね、というのが今回の企画の始まりだ。場所は、富山さんがふだん巻狩りで出猟している山で、鹿・猪の忍び猟と決まった。
狩猟中の様子を撮影すれば、記事にもできる。諸般の事情でフルタイムでの出猟ではなかったが、筆者は出猟するからには、獲る気マンマンだ。
筆者が普段参加している巻狩りでも、タツマで1日待機しても目の前に獲物が出ない時は出ないし、出る時は犬が遠くで吠え始めた直後に近くでガサガサ音がしてすぐに鹿の群れが飛び出すことも経験しているので、運が良ければ短時間でも撃てるチャンスは必ずあるハズだ。そして筆者、忍び猟は初めてだ。期待に胸を弾ませて、山へ踏み入った。
山の斜面はところどころかなり急だ。しばらく進むと、取材を取りまとめる立場として同行していた松尾副編集長が斜面から滑落。足を滑らせズルズルと5~8mほどゆっくり落ちたところで止まった。危ない転び方をしていなかったので大事はなさそうだが、なおも足が滑るらしく身動きできないようだ。
同行の玉井カメラマンが「松尾さぁーん!!大丈夫ですかー!?」と大声で叫ぶ。すかさず富山さんがリュックからロープを取り出して、手際良く松尾副編を救出。富山さんの高いハンティングスキルが早くも発揮された。大きな事故にならなくて良かった。
ご参考までに滑落の原因は靴だ。履いていたのは普通のアウトドアブーツで、やはり山ではスパイク付きが必須だと実感した。取材をアレンジしたのは松尾副編だが、本人曰く「ちょっと読みが甘かった」とのこと。とにかく怪我もなく、無事で何よりだ。
富山さんは銃所持歴13年、ハンター歴7年だ。銃所持歴は筆者と同じだが、ハンター歴だと筆者より1年先輩となる。だが筆者が本格的に狩猟に取り組んだのは3年前からなので、ハンティングスキルは明らかに富山さんの方が上だ。実は富山さんと筆者は、何と出身地や散弾銃の射撃教習を受けた射撃場も同じで“レバーアクション使い”の他にも共通点が多く、とても驚きだった。
ご本職はフリーのカメラマン。ふだんは主に結婚式での撮影を請け負っているが、特殊な技術が必要とされる撮影も可能で、最近は映画のスチールカメラマンとしてもご活躍されている。つい先日公開されたジャパニーズホラー映画『真・事故物件/本当に怖い住民たち』(2022年公開)のスチール撮影も富山さんが担当。本記事のマーリン本体の物撮り写真も富山さん自身が撮られたものだ。
富山さんがいつも出猟されている山は、大変すばらしい猟場だった。この日は快晴で気持ちの良い雄大な山の風景が楽しめた。獲物を探して歩くのもワクワクする。初心者ハンターの筆者には、初めての猟場ではどこに獲物が出るのか全く想像できないが、富山さんによるとこの斜面の下に鹿の通り道があるらしい。そのまま進むと少し開けたポイントがあり、一旦そこに休憩することになった。
休憩中も筆者は周囲を警戒した。すると「パァン!」と1発、銃声が聞こえた。富山さんが斜面の下に鹿を見つけ、すばやく射かけたのだ。しかしマーリンで撃つには少し遠く、惜しくも失中。結局、この日はこれが最初で最後の発砲の機会となった。
出猟前に筆者は猟の師匠から「たまには他の猟場に行ってみるのもいいよ。とても良い刺激になる」と聞いていたが、まさにその通りだった。猟果はなかったが、とても楽しい有意義な1日だった。
TEXT:トルネード吉田
ロケ撮影:玉井久義
銃・射撃・狩猟の専門誌
Guns&Shooting Vol.24
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この記事は2022年3月発売「Guns&Shooting Vol.21」に掲載されたものです。
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