2023/12/27
狩猟の聖地、北海道で猟をする【Guns&Shooting】
~ 道猟 ~
ヒグマを獲りたい
関東で狩猟を始め、その後、期待を胸に北海道に移住して、3シーズン目の終わりを迎えようとしている。自分なりにこの3シーズンの猟を振り返りながら、今年自分が目指したことについて書いてみたいと思う。
※この記事は2022年3月発売「Guns&Shooting Vol.21」に掲載されたものです。
北海道という土地は、狩猟の聖地と称されることもあり、「いつかは北海道に遠征して狩猟を楽しんでみたい」と思う人や、さらには「できれば移住して、北海道での狩猟に深く取り組みたい」なんて思っている人も少なくないのではないだろうか?
私が北海道に移住したのは、狩猟が目的ではなかった。それでも移住が決まった時、北海道で狩猟をすることが楽しみで仕方がなかった。ハンターなら当然だろう。きっとあんなことも、こんなこともできる。キラキラと輝くような、おもしろい狩猟ができるはずだ! そういう期待があった。
そして早くも3シーズン目を終えようとしている。楽しいことはもちろんいっぱいあったが、同時に多くの苦労も経験した。思い通りにならないことも多く、その都度工夫して乗り越えた。そしてそれは喜びに繋がった。
この地の狩猟は奥が深い。まだ経験していないことがたくさんある。そのひとつ、今期が始まる時点で、私はまだヒグマを見たことがなかったのだ。
1年目は模索と驚き
初年度はとにかく新しいことばかりで楽しくもあったが、苦労もした。新天地で、どこの山に獲物がいるのかも分からなかった。どこが可猟区で、どこが国有林で、どこが人の出入りが多い山で、どこが少ない山で……といったことがまったく見当がつかない。
ハンターマップ、国有林マップ、地形図(1/25,000)をテーブルに広げて、シカが獲れそうで、安心して猟に取り組める山を探すことから始まった。地元のハンターの話を聞くと、流し猟に取り組んでいる人が多く、山を歩いて獲りにいく人は多くないらしいことがわかった。これは単独忍び猟に傾倒している私としては都合がいい。
第一の問題は笹藪だった。関東で通っていた山と違い、密集する笹藪が強敵だった。チシマザサ(ネマガリダケ)という高さ1.5~3mともなる大型の笹がびっしりと隙間なく伸び、まさに壁のように行く手を阻む。藪漕ぎなど、よっぽど迫られない限りしたくもない。
そういう藪が所々にあるのではない。チシマザサが山をほとんど覆い隠しており、所々に申し訳程度に隙間があるだけ。その隙間を縫うようにシカを追うのがせいぜいだった。
第二の問題は積雪だ。そもそも関東圏からの移住で雪国は初めてのこと。なにもかもが初めてのことで、猟に出るたびに「ああ、こういうこともあるのか」と新しい経験をした。
マイナス10℃といった寒さも初めてのことで、どの程度の防寒をすればいいのか? 手袋はどれが使いやすいのか? 深い新雪をどうやって歩けばいいのか? なにも分からず、いちいち翻弄されていた。
雪と寒さの問題は挙げれば本当にキリがない。雪で林道に入れなくなり、路肩が埋まり駐車スペースがなくなることで、入山ポイントが激減した。除雪車の邪魔にならないような駐車場所を探すのにも苦労した。
また雪が深くなると、シカの行動圏が大幅に変わるようで、それまではいくらでも見つけることができたシカの痕跡が、文字通り消えた。スマホやカメラの電子機器は寒さで使えなくなることもあるし、水筒の水が凍ることもある。問題が起きたら、工夫して解決する。その繰り返しだった。
とにかく1年目は模索模索の猟期だった。猟を終えると、その日の反省点をノートに羅列した。トライアンドエラーの記録だ。それでもシカは十分に獲れた。シカが増えすぎていると言われているが、新人ハンターとしては下駄を履かせてもらえたと思っている。
2年目
1年目、模索の連続だったとはいえ、シカは獲れて、いつでもエゾシカ肉を食べられる生活にはなった。また積雪期のシカの付き場を何ヵ所か見つけられたこともあり、2年目は少しは方針を持って挑むことができた。
雪が降る前の笹藪だらけの山でシカを獲るより、雪がしっかり積もってスキーで自由に行動できる時期の方が獲りやすいし、気温が低いことで肉の冷却がしやすい。当地で雪が積もり始めるのは12月頃から。シカを獲るならこの頃に狙いを定めた方が、都合がいいはずだ。そう考えた。
では、それまで何をするか?
雪が積もるまでシカ以外のものを獲ろう。なにがいいか? そこでヒグマに興味を持った。せっかく北海道にいるのだから、1度は獲ってみたい。そう思う人も多いだろう。さっそくヒグマについて勉強し、いろんな人に話を聞き、実際にヒグマを探して山を歩き回った。
ヒグマの足跡や爪痕のような痕跡こそ見つかるものの、その姿を見ることはとうとうないまま、2年目の猟期は終わった。
TEXT&PHOTO:武重 謙
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この記事は2022年3月発売「Guns&Shooting Vol.21」に掲載されたものです。
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