実銃

2023/08/17

【実銃】護身用として人気のコンシールドキャリーウェポン「Glock 42」【グロック42 Part1】

 

パンデミックで人気沸騰! .380口径のベイビーグロック

GLOCK 42

 

 

 .380ACPのサブコンパクトであるG42、そしてちょっと大きいだけで9mmパラが撃てるG43。それならG42に存在意義はほとんどないと思うかもしれない。しかしG42にはG43とは違う良さがある。だから大人気で品薄だ。コルトのサブコンパクトである.380マスタングXSPと比べながら、その魅力の一端をお伝えしたい。

 

 


 

.380口径

 

 2014年にグロック42(以下G42)が登場した時、多くのグロックファンは拍子抜けしたことと思う。なぜかといえば、それが期待の9mmじゃなくて、予想外の.380口径だったからだ。その落胆は、翌年にグロック43(小型9mmシングルスタック。以下G43)がリリースされて、あっさり解消された。

 

銃口。6条右回りのポリゴナルライフリングがくっきり刻まれている。クラウンはすり鉢型だ。スライド先端のコーナーはG26のような深い面取りはせず、あっさり済ませた


 今思えば、コレはグロックの作戦だったに違いない。もしもG43を先に出していれば、G42の売れ行きは頭打ちになっていた可能性が高いからだ。G42を先に出し、9mmを待ち切れないファンにとりあえず買わせ、その良さ(後述)にそろそろ気付いてもらったところで待望のG43を出すというシナリオだ。


 作戦はまんまと成功したようで、G42は十分市場に馴染んだ。そして、同社内のポジション的にはメインから三歩下がった辺りに落ち着いたかに見えた。
 ところが、だ。三歩下がるどころか、今やこのG42がドル箱と化す現象が起こっているようなのだ。筆者もそれを思い知らされた。

 

グロックの42だ。.380口径のミニチュア・グロックだ。グロックファンならずともついつい惹かれる可愛さと、小型過ぎないダンディさの両面を兼ね備える。目下大人気の一挺だ


 相変わらず銃不足に弾不足が続く昨今である。過去に何度か似たような危機はあったが、今回は次元もレベルも全然異なるのは、読者の皆さんもとっくの昔にお気づきだろう。


 何しろ、新型コロナのパンデミックによる社会不安の増大と同時にロックダウンで製造が滞り、そこへBLM運動が起こって暴動を恐れる一般市民がもうパニックに陥り、トドメがバイデンさんによる銃規制不安症候群という三段重ねである。そして現在もなお、銃不足が悪化の一途を辿っているのは心配を通り越して恐怖でしかない。

 

フロントサイトはグロック伝統の台形ハイ形状。スライドの内側からネジ留めされている。幅は3.8mmだ

 

 そんな中、パンデミック前から買いそびれていたG42をこの際買っちゃおうと、自分はガンショップへ出掛けた。グロックならすぐ見つかるからと高をくくってショップを三軒回ったが、コレがどうにも出てこない。パンデミック後も、グロックは一貫して安定的に製品を供給してきている。現時点では17も19も23も26も27も44も、そして43も何とか見付かる。

 

 そう、42の姿だけがなぜか無いのだ。それでもようやく四軒目で一挺発見。パンデミック前なら新品でも400ドルを切っていたのが、459ドルの値札だ。一応、他も回ってお値段の比較をとスケベ心を出し、さらに三軒を巡って一個も見つからないうちにその日は結局時間切れ。翌日、意を決して在庫があった店へ戻ってみたら、あろうことか前日の夕方に売れたというではないか。

 

トリガーには無論指セイフティ。グルーブなしのスムースフェイスはGen4からの特徴だ。トリガーとトリガーガードはフルサイズと同じ大きさをキープ。その割に視覚的なアンバランス感はない。トリガーディスタンスは61mmだ


 自分は慌てまくり、さらに別の街へ遠征し、そこの三軒目で運良く発見して5秒で購入した。グロックごときを買うのにこれほど苦労するとは夢にも思わなんだという次第。G42が急激に店頭から消えたのは、もしかすると元々の生産量も関係しているかもしれない。しかし、だとしても足が速過ぎるのである。

 

 .380ACPは、一般人が護身銃として扱い易い口径だ。一昔前にはストレートブローバックが常だったのが、今はその多くがショートリコイル化(G42も然り)で反動も緩和され、スライドの引き圧も緩い。また弾頭形状の研究も進んでいるからストッピングパワーも捨てたもんじゃない。

 コレが9mmのサブコンとなるとぎりぎりオフェンスにも使える一方、リコイルのマネジメントやら何やらが初心者には少々難儀で相応なプラクティスが必要だ。一般人はそこまでは求めない。扱い易さのウエイトでいくと、勢い.380に傾く。

 

四角っぽい形状のエジェクションポート。エキストラクターはチャンバーホットで浮き上がるので、目視あるいは指で触って確認が可能。P字を囲った刻印は、工場所在地ジョージア州のプルーフマークだ

 

 或るショップ兼レンジの店員は、「G42がもし見つかってもお勧めしないよ。だって、.380の弾がないからさ。9mmならボチボチ供給はあるが、.380はここ2ヵ月まったく入ってないし」と言う。.380口径の大人気を裏付ける証言だ。そこへ持ってきて、元来のグロックブランドの知名度のダブルパンチで、G42だけが飛び抜けて品薄という構図っぽいのである。


 世の鉄砲好きはもちろん凄まじい数ではあろうが、限定的だ。それに対して、「鉄砲なんか別に好きじゃないけど護身用に一挺欲しい」みたいな一般ユーザーのほうがマーケット的には遥かにデカいし、更なる広がりのポテンシャルを持っている。それが、パンデミックでもろに露呈したカタチなのだ。

 

トーラスの380ULと。.380ACPをクリップで撃つ5連発の小型リボルバーだ。アルミフレームが超軽いので(433g)、リコイルが物凄い。オート用の弾はオートで撃つべしを痛感する一挺。トーラスというブランドは別としても、護身用に持つならどうしてもグロックに流れるか

 

 無論、同じ流れでS&Wのボディガード380やらRUGERのLCP等も売れているだろう。けれどそこは、「どうせならグロックにしようよ」とグロック好きの旦那が奥さんに持ち掛けるワケだ。ココでも元々のグロック人気が一歩抜きんでている。

 

 女性の初心者となると、前述の通り9mmのG43ではすでにきつい。スライドの操作やらリコイル、そしてイメージ的な面も含めて、.380のG42なら勧められるし説得できる。

「コレならそんなに強くなくて大丈夫だから」みたいなふうにね。

 

マグウエルの様子。前後左右にていねいな面取り加工有り。小さいクセに抜かりのないヤツ


 基本、G42の開発コンセプトは、ローエンフォースメント系および鉄砲ファンをほぼ制覇したグロックが、新たに一般のコンシールドキャリー市場でのシェア拡大を狙ったものであったのは明らかだ。

 9mmのG43をより待ち望んだのはあくまでもローエンフォースメント系と鉄砲ファンが中心であり、銃に慣れた一種肥えた目からの欲求だった。グロックはそれを見据えつつも、一枚上手の戦略を持っていたのだ。

 

グロック系のクローン、ポリマー80と。グロックでいうところの19サイズだ。G42のコンパクトさ加減がお判り頂けるかと。ポリマー80はオシャレかつ信頼性も高く、昨今の一番のお気に入りだ。もしも同社がG42のクローンを作ったら、さぞかし面白いものができるだろう


 イヤしかし、鉄砲マニアではなくて単に.380口径の銃が欲しい一般の方々は、できればベルサとかトーラス辺りをチョイスして頂けると助かるのだがなんて、趣味人間の自分は思う部分もある。わざわざグロックじゃなくてもよいでしょと。

 

 しかし実は、G42が売れるポイントは口径とかブランドだけではない。この銃はどうやら、新たなる.380オートのカテゴリー構築の予感すら感じさせるものを備えていた。次回でその魅力をお伝えしよう。

 

マガジンの比較。上がG17用の17連、下がG42用の6連だ。マガジンまでポリマーにこだわるのがグロックのやり方。数字的には、高さ87(117)mm、前後幅28.7(33)mm、厚み16.7(22.7)mmとなる(カッコ内G17)

 

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Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年7月号に掲載されたものです

 

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