2023/11/15
「M16A1 カービン(モデル653)」ベトナム戦争を教訓に登場しM4カービンの原型に【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
M4カービンの原型
コルトのM16はアサルトライフルの王者である。M16の短縮版が要望され、CAR-15からXM177シリーズを経てベトナム戦争での教訓によって作られたカービンモデルがM653である。
パナマ侵攻時や湾岸戦争、ソマリアでの戦闘時まで使用され、M4カービンの登場まではM653こそが特殊部隊御用達のカービンであったのだ。冷戦時代に米軍の西側陣営への軍事援助や軍事指導が進むにつれM653の需要は増え、世界中に広がっている。
カービンモデルであっても名称はAR-15またはM16A1とフルサイズと同一であり、M4カービンのような専用の名称は確認できていない。
モデルナンバー自体もコルトが個々に合わせた仕様変更を行なっていて、社内の生産ラインで管理するために割り振った数字である。この理屈でいうとM653はM16A1の53番目となるのだが、実際には使われていない番号や製品化されなかった番号もあったようで、記録に残っているバリエーションは30種類ほどあり、M653は26番目ぐらいのモデルである。
M16A1カービン(モデル653)
- 全長:765mm(ストック伸長時847mm)
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:20/30発
- 価格:¥1,210,000
米軍初のカービンモデルの完成形
ベトナム戦争でM16A1が特殊部隊には大きすぎることと、そのコンパクト版であるXM177では短すぎて中距離での命中精度に問題があることが判明し、XM177はベトナム戦争から撤退する頃には米軍での調達が終了している。
その後コルトは、XM177での教訓を基に14.5インチのバレルを備えたカービンを誕生させる。M16と同じ操作性を持ちながらも、コンパクトで拡張性が高く、何よりM16とのパーツの共用性があったのでコストを抑えられるメリットがあった。すぐにM653は陸軍・海軍に購入され、非常に高い評判を得た。しかし、正式にカービンとして採用されることはなく、M16A1カービン、またはそのままM653と呼ばれ続ける。
軍での一定の評価を得ると今度は法執行機関にも採用され成功を収める。モデルナンバー600番台は弾薬がM193弾に対応したモデルであったが、新型のM855弾が1980年に採用されるとM16A2シリーズ (モデルナンバー700番台)へと徐々に置き換えられるようになった。
交代させられた多くのM653がイスラエルに安価で売却され、IMIによってリターンスプリングを強力なモノに交換されてからイスラエル軍に支給された。
そのため、M653はイスラエル軍で使われている印象が強い。イスラエル製のガリルSARよりも軽量で、過酷な環境にも耐え、何より大量に入手可能だったからであろう。この売却計画はアメリカ、イスラエルどちらにとっても都合が良いもので、米軍でのM4への置き換えが加速することで、イスラエルは多くのM653を入手できるようになり、ほぼすべての部隊に供給できるようになった。
M653はアジア圏でライセンス生産も盛んに行なわれ、フィリピンでライセンス生産されたM653Pは映画『プラトーン』で登場しており、これが登場人物の名前を付けた「バーンズモデル」として日本で定着した。レトロなM16のスタイルは一定のファンを獲得しており、本家コルトでは製造を終了しているが、他メーカーからはレトロシリーズとして販売されるなど現代でも人気の高いモデルである。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2023年12月号に掲載されたものです。
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