実銃

2023/02/22

シンプルにして最強のライフル「AKM」を解説!【無可動実銃】

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、
培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

 

AKを完成させた近代化モデル

 

 AKシリーズが成功した理由はシンプルな設計にあることであろう。冷戦時代の急速な軍備拡張はソ連の国力に関係なく増強する必要があったのだ。そのために必要なことは合理化であり、ソ連は主力小銃をAK47アサルトライフル一本に統一することにした。そこでAK47の生産における非合理的な箇所の修正と、根本的な改良を加えた第2世代のアサルトライフル「AKM」を開発。さらにはソ連で生産したものを共産国に輸出するだけではなく、ライセンス製造を許可したことによりソ連製以外のAKMが世界中に普及していった。気候に左右されず、ダストカバーの欠落や部品がテープ巻きで固定されているような多少の破損状態であっても、あるいは、錆や泥にまみれていても確実に作動するといった完成度の高さは後継のAKシリーズにそのまま受け継がれるほどだ。AKMの実力は敵である西側の軍隊でも評価されており、相対したアメリカ特殊部隊やゲリラ、イスラエルなどは鹵獲したAKMをそのまま流用したほどである。

 

 

AKM 自動小銃 (中期型)

  • 全長:890mm
  • 口径:7.62mm×39
  • 装弾数:30発
  • 価格:¥220,000

 

シンプルにして最強のライフル

 

「機能性に優れたものは美しい」とはAKMにピッタリの言葉である。 
 初期型AK47は製造時に素材となる2,650gのスチールブロックに100工程ほどの切削加工を施し、2,000gの切り屑を出すという大変手間とコストが掛かる銃だった。AK47の開発当初、ソ連はプレス加工によってAK47を大量生産する方法を計画していたが、ソ連のプレス技術が未熟であったことから断念せざるを得ない状況となり、前述した非効率な切削加工による製造を行なうことになってしまった。

 

AKからレイアウトや寸法を変えることなく生産性を上げた集大成がフレーム部だ。溶接とリベットやレシーバーの材質が薄くなったため、強度維持の目的でリブが設けられ、スパルタンな印象を与える


 AK47は改良を受けて3型まで製造されたが1950年代に入ると技術の向上により、根本的な改良が行なわれることとなった。改良型AKにはプレス加工によってスチールプレートを折り曲げて製造されるレシーバーや、溶接してからリベットで結合させた主要部品など、最新の技術が惜しみなく投入された。

 

斜めにカットされたハイダーは右斜め上方にガスを噴き出し、左下方に押し戻す効果が得られる

 

 これにより無駄のない製造工程が確立し、迅速かつ低コストでAKライフルを大量生産できる環境が整ったのである。改良型AKはソ連軍のトライアルに勝ち残り、AKMという名称を与えられて制式採用の座を得た。AKMは木製パーツに合板を使用し、レシーバーを薄くしつつ強度を上げるために強化リブを設けるなどAK47より、近代的な外観を手に入れている。

 

ブナの合板を削ったストックはほぼ同じような模様が出る。所々に見られるピンは破損を防止するためのものである


 AKMにより確立した設計思想は現在でも受け継がれており、口径の変更が行なわれたAK74以降もAKMから大きく逸脱した変更はされていない。AKMは単純な操作方法をAK47から引き継いでおり、全体の寸法もAK47と同じままなので輸送や保管に関してもシステムの変更を必要としない。

 

ハンドガードに設けられた膨らみは保持性の向上と発射リコイルを受けても離さないようにするためだ

 

マガジンはAK47と同一のものを使用。レシーバー側にある窪みはマガジンを安定させるためのガイドとなっている

 

 ソ連を中心とした東側諸国は経済的には恵まれていなかったが、シンプルで堅牢、そして統一されたAKMの数を揃えることで、新技術や高性能な銃器を装備した同時代の西側諸国と同等に渡り合えたのだ。AKMは現在でも世界中で使用が続けられており、その様子は当分変わる気配がない。大口径で故障知らず、しかも安価というシンプルなスタイルにはどんな高性能な銃も勝てないことを証明し続けているのだ。

 

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TEXT:IRON SIGHT
撮影協力:フォレストユニオン (千葉県印西市平賀2470)

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年3月号 P.218~219をもとに再編集したものです。

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