2022/09/12
先進的なアイデアでライバルを圧倒「モスバーグM500」【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
アメリカで最も古い家族経営の銃器会社
モスバーグは1919 年に設立された会社で、コネチカット州ニューヘイブンにある革新的なデザイン能力と高度な機械的専門知識を持つメーカーとして、手頃な価格で高品質のスポーツ用銃器を生み出してきた親族経営企業だ。
スウェーデン移民であった創業者オスカー・フレデリック・モスバーグから数えて4世代、約100年にわたり家庭的な企業風土を一貫してきた歴史を持ち、他の銃器メーカーで経験を積んだ熟練スタッフも多く在籍し、堅実な銃器を製造している。会社が設立された当初は機関銃の部品やエンフィールド小銃の製造を行ない、1961年にはM500ポンプショットガンを発表。「労働者階級でも気軽に購入でき、信頼性の高い銃器を提供する」というモスバーグの経営理念の元で発売されたM500は大ヒット製品となった。労働者に寄り添い、家庭的な経営方針は現在でも続いており、あらゆるジャンルに開放的な会社となっている。
モスバーグM500(カナダ・ケベック警察刻印 #J194536)
- 全長:988mm(719mm)
- 口径:12GA
- 装弾数:5発
- 価格:¥253,000
後発ながらもアイデアでライバルを圧倒
モスバーグM500はポンプアクションショットガンとしては後発と言える製品だった。
市場にはすでにレミントンやイサカ、ウィンチェスターといった強力なライバルが出揃っており、大多数のシェアを獲得していた。そういったショットガン市場に新規参入となるモスバーグは、成功するためにモスバーグM500に先進的な機能を盛り込むことにした。気候変動や塩害に強く、軽量化できるアルミニウム製レシーバーの採用、工具なしでバレル、マガジンチューブ、フォロワーやスプリングを簡単に取り出すことができる良好な整備性、シェルストップ、エジェクターも特別な工具なしで脱着可能であり、これはメンテナンスやクリーニングを容易に行なえる、大きな利点となった。
過酷な環境で酷使しても故障が少ない堅牢な構造も相まってモスバーグM500は人気を博し、レミントンM870と並ぶポンプアクションショットガンのスタンダードモデルとなっていった。さらにモスバーグが注目を集めたのは70年代に米軍の軍用規格に合格したことであろう。米軍4軍に加え、沿岸警備隊に制式採用されたことがアピールとなり、モスバーグM500はポンプアクション界のトップに上り詰めた。
ショットガンに求められた多様性と信頼性を担保しつつ保守点検にまで気を配ったモスバーグM500はネームバリューでなく実力を重視するアメリカだからこそ認められた銃であり、それは王者レミントンでさえもモスバーグを見習ったような、工具なしで分解できる
ミリタリー仕様のモジュラーウェポン「M870 MCS」を開発したことで証明されている。操作系のレバーがアンビ化されたのも早く幅広い汎用性を示した。非殺傷や広域攻撃など特殊用途において最も安価な兵器として有効なモスバーグM500は現在では世界中で採用されるようになり、軍用、狩猟用として世界中で見ることができる。そういう意味では我々に一番身近な銃器となっている。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2022年10月号 P.222~223をもとに再編集したものです。