2021/05/01
シュミット・ルビン K11【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのはその1挺「シュミット・ルビン K11」だ。
先進的な技術を常に取り込んだ画期的なライフル
シュミット・ルビンが画期的なライフルと成りえたのはストレートプルボルトアクションという特徴のほかに、世界で初めて鉛弾の先端を銅で覆ったフルメタルジャケット弾を同時に開発、採用したからだ。銃を設計したルドルフ・シュミット大佐と、弾薬を開発したエドワルト・ルビン中佐の名前を合わせたシュミット・ルビンという銃名からも、設計段階にて新型弾薬ありきのライフルであったということが窺い知れる。
シュミット・ルビンK11 騎兵銃(#6503)
- 全長:1,150mm
- 口径:7.5mm×55
- 装弾数:6発
- 価格:税込¥134,200
ストレートプル方式とはボルトハンドルを前後にスライドするだけで開放・排莢・装填・閉鎖のすべての動作が完了するシステムである。一般的なターンボルトと比較して動作時間が短く、発射速度が向上する利点がある。通常のボルトアクションのボルトがほとんどソリッドな鉄なのに対し、ストレートプルのボルトは複雑な構造になっており強度の問題も重なって現在ではボルトアクションライフルとしてはマイナーな方式となっている。
ストレートプルボルトアクションは他国でも採用された例があるが、軍用銃としてはシュミット・ルビン系が成功例として認識されている。これは同時期のふたつの大戦にスイスが参加しなかったため不具合が露呈しなかったこと、さらに多くの改良を行なった結果であり、その辺りは精密機器大国スイスらしさを象徴していた。
ボルトの形状はオートマチックライフルに用いられるようなラグをもち、ハンドル部を独立させるなど開発当初から将来的にオートマチックライフル化を見越したような設計がなされた。当初に採用したフルメタルジャケット弾は雷管の腐食など大きな問題を含みながらの運用であったが、1911年に非腐食性の7.5mmスイス弾(GP11)を開発。このGP11弾に合わせた改良を行なったのがシュミット・ルビンM1911型である。弾薬とバレルのライフリングを変更したことで弾道が安定したため、短銃身型のカービンモデルも同時期に製造された。
当初はライフル型の生産のほうが多かったが、1920年代の終わりまでカービンモデルの正規採用を決める協議が持ち上がり、生産コストと軍備拡充の観点から次期生産型をカービンモデルに一本化する方針が定められた。K11モデルは最終的にベルンにおいて1914年から33年までの間に184,200挺が製造され、集大成のシュミット・ルビンK31誕生の礎を築いた。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
撮影協力:VILLAGE2
この記事は月刊アームズマガジン2021年6月号 P.212~213より抜粋・再編集したものです。