実銃

2021/01/30

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】

 

唯一特殊部隊員を納得させたバトルライフル

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】

 

 アメリカ軍は想定していた中近東での戦争に備えて1980年代にM16A2を配備したが、実際の戦闘を行なうと様々な問題があることに気付かされた。特に、戦闘経験が豊富な特殊部隊では5.56mm弾の限界を把握しており、7.62mm弾も兼用する戦術を取る。ところが7.62mm弾の銃器は古い型しかなく、M14を近代化改修してみたがそれも付け焼き刃でしかなかった。
 そのことを踏まえ、特殊部隊を統括するSOCOMはSCAR(Special operation forces Combat Assault Rifles)計画を提案。そして多くのトライアルメーカーの中で唯一、FNがSOCOMの提示した厳しい条件に応えて当初の要求通り5.56mmと7.62mmの2種類を開発して提出した。それぞれにSCAR-LとSCAR-Hの名称が与えられている。

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】

 

FN SCAR-H 自動小銃 スタンダード・バレル・モデル(#H010903)

  • 全長:965mm (711mm)
  • 口径:7.62mm×51
  • 装弾数:20/30発
  • 価格:¥1,300,000

 

 SCAR-HはAR15(M16)系統の操作系に加え銃身長が変換可能であり、STD(標準バレル)、CQC(ショートバレル)、LB(ロングバレル)の3種類が用意され、シチュエーションに応じた運用が可能になるなど、これまでのバトルライフルの欠点も克服した設計となっている。それゆえSCAR-Hはアメリカのみならず、保有するバトルライフルが老朽化していた世界中の特殊部隊からも歓喜を持って受け入れられた。

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】
ガスブロックの直近で発射ガスを受け止め作動させるショートストローク・ガスピストン方式を採用し、ガスの汚れによる作動不良を解消。サイレンサーなどの使用が考慮され、レギュレーターは可動式としている

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】
本体のデザインは完全新規設計ながらも操作系はM4とほぼ同一に配置されているのがわかる。唯一M4からそっくり移植されたのはグリップだけだ

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】
ストックのロックを外す黒いボタンは最初のGen1のものだ。強い力が掛かると破損してしまうため、Gen2では固定式となり、対策が施されたGen3ではTANカラーのボタンになっている

 

 またSCAR-Hは6.5mmクリードモア弾や.260 Remington弾にもモジュール交換だけで対応できるように設計されており、新たな弾薬のプラットフォームとしても使用できる利点があった。現在では5.56mmバレルとロアレシーバーに換装したMk17 5.56mmモデルも確認できるなど、モジュール式を生かした運用もされている。

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】
この個体は米軍に納入されるために作られたものであるため、モデル名のMk17 Mod 0の刻印だけがある。M4の操作系と同様であることが求められたが、素早いセレクター操作を可能にするため切り替え角度は45°に変更された

 

FN SCAR-H【無可動実銃の魅力】
Item Unique IDentification (IUID) システムプレートは最初期に採用されたSCARにだけ付けられたものだ

 

 これまでの7.62mmの弾を使用する銃は重く、反動が強いのが一般的であったが、SCAR-Hは軽くて撃ちやすくなった。それこそがSCAR-Hが特殊部隊にもたらした最大の恩恵で、高い攻撃性と銃への信頼性の高さから今後も使用頻度は高くなる一方であろう。最初のモデルが発表されてから10年経った現在でも、細かな改良だけで外観は一切変更されていないことからもSCARの完成度の高さは実証済みで、日本でも20式小銃の参考モデルにされるなど馴染み深い銃である。

 

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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年3月号 P.104~105より抜粋・再編集したものです。

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