2019/06/23
M14ライフル 無可動実銃の魅力
鋼鉄とグリスの匂いが漂う至高の浪漫
この国では、軍用銃を撃つことはおろか触れることすら難しい。故に軍用銃に対する評価は誰かの言葉の受け売りに偏ってしまう。だがその銃の真の価値を知っているのは、その銃で戦った戦士だけではなかろうか。銃の傷ひとつひとつが戦士の記憶だからこそ、無可動実銃に触れることは、戦士の記憶と自分を重ねられる崇高な儀式ともいえるのだ。
悲運が付きまとった正統派ライフル M14
アメリカ軍に圧倒的で強力な火力をもたらしたM1ガーランドの成功はその後のアメリカ軍の兵器体制に大きな足跡を残した。戦場では火力こそ重要なもので、小銃の自動化と連射機能が課題であり、それを第二次世界大戦中に生産できたのはアメリカ軍だけであった。戦後東西に分かれ、あらたな大戦を見据えて各国が再軍備を進めるなかで、アメリカ軍は.30口径(7.62mm)弾のみが必要条件を満たすとして、.30-06弾を改良させた7.62×51mm弾をNATO標準弾とした。当時から小口径弾の先見性は考慮されていたが、冷戦の驚異はもっと直接的なものであり、荒廃したヨーロッパを戦場と想定した場合、確かな実績と生産設備が揃っている従来の弾薬を選択するのは当然の結果であろう。
こうしてM1ガーランドをさらに発展させたM14ライフルが開発されたが、アメリカ以外の国はより先進的なアサルトライフル型の小銃を採用したためM14は他のNATO軍に採用されることはなかった。また次の戦争が大国間の代理戦争となり、戦場が当初の予定と違うべトナムのような限定した地域になってしまうと、M14のようなフルサイズの小銃より軽量のM16が採用され、M14は予備兵器として倉庫で永い眠りについてしまった。
M1ガーランドの面影を強く残す機関部を見ると前世代の銃であることがうかがえる。サイトの前にある凹みは弾薬クリップを差し込むためのものだ。ボルトハンドルの開口部に手を挟まないようにボルトリリースレバーが追加されるなどの改良も行なわれている
バレル先端の大型フラッシュハイダーにはフロントサイトとバヨネットラグを装備。着剣して撃つと弾着が大きく下がるのであまり使用されない
21世紀になって再び活躍
無用の長物な代名詞とみなされているM14だが、その性能については決して劣っていたわけではない。7.62mm弾に充分な威力を発揮させるバレル長とガーランド譲りの丈夫な構造を持つ。コントロールは難しいがフルオート射撃が可能で20発のボックスマガジンを装備するなど現代でも通用する装備だ。ジャングルのような閉鎖地域では充分な実力は発揮できないが、9・11後のアフガニスタンでは小口径弾では威力不足が露呈したため倉庫にモスボールされていたM14が引っ張り出され、再び活躍している。本来ならば新型のバトルライフルを支給するべきだが、M4ライフルに比べはるかに高額で全部隊に支給するのは困難なため白羽の矢がたった。
M14は多くの友好国に援助として贈られた。この個体もサイトの下に刻まれたヘブライ語からイスラエルに贈られたものとわかる。セレクターにはセレクターを固定させるセレクターロックが付けられている
また同世代のFALやG3といったライフルは90年代まで使用され耐用年数が過ぎてしまったものが多く状態の良いものは少ない中、僅か10年足らずでしまわれてしまったM14は充分に使用できる状態にあったのだ。それ以前にも一部の特殊部隊によって運用され、有名なところでは『ブラックホーク・ダウン』でのシュガート軍曹がM14を愛用している。
アッパーハンドガードには射撃の熱によるダメージと経年劣化によるひび割れが発生している。木製に比べて耐久性に優れている
トリガーはステージ1に属するため固くガク引きになりやすく、セーフティの操作性も良好とはいえない。そのことからもM14はスナイパーライフルよりバトルライフルの要素が強いことがうかがえる
M14がM16に比べて優れているのは威力だけだ。800mでの両者の命中精度には大差はないが弾のエネルギーは5.56mm弾の3倍以上にも達する。現代戦には必要不可欠な各インターフェースや光学機器などを装備するには改良が必要なことから、M14が新規に製造されることはないであろう。恐らく余剰品がなくなってしまえば消えてしまう銃であるが、M14は伝統的な小銃の最終形態として最も完成されたライフルであったことは間違いない。
DATA
M14 ライフル(Winchester製)
- 全長:1,125mm
- 口径:7,62mm×51
- 装弾数:20発
- 価格:¥486,000
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TEXT:IRON SIGHT
撮影協力:ユニオンベース
この記事は月刊アームズマガジン2019年7月号 P.86~87より抜粋・再編集したものです。