2018/12/17
無可動実銃は極上の嗜み ガリル ARM【2019年1月号掲載】
鋼鉄とグリスの匂いが漂う至高の浪漫
この国では、軍用銃を撃つことはおろか触れることすら難しい。故に軍用銃に対する評価は誰かの言葉の受け売りに偏ってしまう。だがその銃の真の価値を知っているのは、その銃で戦った戦士だけではなかろうか。銃の傷ひとつひとつが戦士の記憶だからこそ、無可動実銃に触れることは、戦士の記憶と自分を重ねられる崇高な儀式ともいえるのだ。
悲願の国産アサルトライフルの誕生
1967年の六日間戦争で、イスラエル国防軍はアラブ側が使用するAK47の優秀さを痛感し、1950年代からそれまで採用してきたイスラエル版FAL(Romat)より軽量、丈夫で、さらに命中精度の高いライフルの必要性を実感した。そこで軍首脳部は西側諸国に合わせたNATO標準の5.56×45mm(M193)弾を使用するアサルトライフルの開発を決定。トライアルにはM16A1、HK33、ストーナーM63、ウージー開発者の試作ライフルも参加したが、最終的にガリルが選定された。
長年にわたるアラブ諸国との戦争を通じて、イスラエルはAKを鹵獲兵器として使用してきた。その経験からカラシニコフが砂漠地帯における世界最高のライフルの1つであると評価し、新型小銃は耐久性と信頼性に勝るカラシニコフタイプを採用することにしたのだ。
ガリルは1973年にFALに代わる制式突撃銃としてイスラエル国防軍に採用され、1年後の1974年より導入が開始されたが、全軍に支給される前に第四次中東戦争が勃発してしまい、製造に手間のかかるガリルでは配備が間に合わないとの判断から、ベトナム戦争での余剰兵器となった中古のM16が格安でアメリカから入手可能になったため主力火器の座から降りている。
これが有名な栓抜き機能だ! 兵士が機関部やマガジンリップを栓抜き代わりに使い、作動不良が多発したために設けられた。ガンマニアならこれで開けた飲料水は格別に感じられることだろう
栓抜きとして使われているこの部分はバイポットを収納するための役割を持つ。さまざまな銃の寄せ集めと言われるガリルにおいて、木製ハンドガードは数少ないオリジナルデザインのパーツだ
'70年代にアンビセレクターを標準装備させるなど、同世代のアサルトライフルに比べて先進的な設計思想を伺わせる
ストックはサイドスウィングして畳むことができる。塗装のはげ方から激しい使われ方をしたことが伺える
90度に曲げられたボルトハンドルは左右どちらからでも容易にコッキングが可能だ。戦闘経験に富んだイスラエルは、AKのウィークポイントを完全に克服している
時代の先を行くAKの改良版
ガリルは試作段階において、フィンランド製カラシニコフ・コピーのバルメRK M62のレシーバーを輸入。アメリカのコルト社とキャデラックゲージ社それぞれに口径5.56mm仕様のバレル素材とマガジン、ボルトを発注し、ストックはFN FALを流用。そしてイスラエル国内で組み上げた物を試作品としたことから、諸外国からは「寄せ集め部品ライフル」と揶揄された。しかしこれは当時のイスラエルが戦時下にあって完成品の輸入が難しかったことと、他国に新型銃器開発の計画を知られたくないようにするため、部品調達の分散化が図られた経緯によるものだ。国情的にもあらゆる兵器を国営企業が生産しなければならず、複雑な工程のかかる兵器は望まれていなかった。それでも兵力において圧倒的に劣勢だったイスラエルにとって、兵士1人1人が貴重なため兵器にはそれなりの性能が求められる。
ガリルが本格採用に至らなかった厳密な理由は不明だが、中古M16との価格の差やアメリカとの政治的判断があったのだろう。自国での採用は見送られたが、その後IMI社はガリルの積極的な輸出を開始し、およそ20カ国で採用された。特にアパルトヘイトによって国際的に孤立していた南アフリカにライセンスを与えたベクターシリーズは大成功を収めている。全体的に見ればAK47のコピーといった感じだが、厳密にはフィンランドのバルメ社のRk62に改良を加えた亜流品であり、AKの信頼性と5.56×45mm弾の命中精度の良さをあわせ持つ新世代ライフルといえるだろう。それはこの後、同様のコンセプトをもったSOPMOD化したAKやAKの機構をもったM4スタイルのHK416が高評価を得ていることからも明らかだ。
ガリルは現在でも近代化改修を施したガリル・エースや多くのライセンス品が生産されており、ガスピストン方式のアサルトライフルのスタンダードとして今後も使用され続けることだろう。
DATA
ガリル ARM 自動小銃
木製ハンドガード・着剣装置付(複数在庫品)
- 全長:975(742)mm
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:35/50発
- 価格:¥194,400
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TEXT:IRON SIGHT
撮影協力:東京サバゲパーク
この記事は2019年1月号 P.74~75より抜粋・再編集したものです。