実銃

2018/11/12

無可動実銃は極上の嗜み RPD【2018年12月号掲載】

鋼鉄とグリスの匂いが漂う至高の浪漫

この国では、軍用銃を撃つことはおろか触れることすら難しい。故に軍用銃に対する評価は誰かの言葉の受け売りに偏ってしまう。だがその銃の真の価値を知っているのは、その銃で戦った戦士だけではなかろうか。銃の傷ひとつひとつが戦士の記憶だからこそ、無可動実銃に触れることは、戦士の記憶と自分を重ねられる崇高な儀式ともいえるのだ。

 

前回の無可動実銃はコチラ

 


 

大戦の教訓を生かした生粋の分隊支援火器

 

ポーランドRPD軽機関銃

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

 

DATA

  • 価格:¥118,800
  • 全長:1,036mm
  • 口径:7.62mm×39
  • 装弾数:100発/ベルト給弾

 

 第一次世界大戦の戦訓として、歩兵の機動性が重要視された。分隊単位での戦闘を想定した軍備のため、各分隊に1挺の機関銃が必要となり、大量の軽機関銃が配備されている。第二次世界大戦中には、銃器設計局を率いたデグチャレフが設計した円盤型弾倉が特徴のDP28軽機関銃が採用されたが、47発の装弾数では火力に乏しく、10kgの重量は重たくて歩兵が携行するには不向きであった。そこで制式小銃弾の変更に伴い、新型弾に対応した新たな軽機関銃の開発が行なわれることになり、DP28軽機関銃で実績のあるデグチャレフに白羽の矢が立った。
 RPDはDP28の機関構造を継承し、給弾方式をベルトリンク式に変更することで本体下部に装着されたドラムマガジンには最大100発の弾薬を装填できた。
 しかしRPDの弾薬はAK-47と共通だが部品の互換性がなかったため、現場での整備効率が阻害される欠点を露呈した。しかも給弾方式がベルトリンク式であるため、AKの弾倉が使用できないことに不満が噴出してしまう。そのため、採用から10年ほどでAKをベースとしたRPK軽機関銃にその座を譲っている。

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

ドラムマガジンは第一世代のLMGから伝統的に採用されてきたもっとも魅力あふれるパーツだ。このシルエットとベルトリンクこそが軽機関銃の顔といえよう

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

中央が大きくえぐれたハンドガードは細身にみえるが実際は連射で熱くなったバレルから手を守るため分厚くなっている

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

下方にせり出した斧のような型状のストックは、その後のRPKにも引き継がれている

 

東西両陣営に使われた傑作機関銃

 

 RPKと交代して、東側諸国では使用されなくなったRPDだが、ソビエト連邦や中国は、余剰となったRPDを予備兵器として保管していた。そのRPDをソビエト連邦や中国は、軍事援助品として供給したため、世界中の地域紛争で使用されている。ゲリラはもちろん、ベトナム戦争においては北ベトナム軍や南ベトナム解放民族戦線が大量に供給されていた。
 RPDはボルトの左右にフラップが付き、ペンギンの羽のような動きで閉鎖開放を行なう、フラッパーロッキング機構を採用している。H&Kのローラーロック式に近いこの機構のおかげで性能が高く、ゲリラ戦を任務とする特殊部隊も鹵獲して使用しているのだ。有名なところではローデシアの傭兵やベトナム戦争でのSOGだろう。ローデシア軍ではヘリボーン作戦においてヘリコプターの定員が4名だったことからチームも4名編成と少数であり、火力が必要なためRPDが好んで使われたようだ。

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

I型、II型のRPDではボルト直結のハンドルだが、写真のIII型からは可倒式でボルトとは分離式になった

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

カバーを開けるとフラッパーロッキングボルトを確認することができる。フィードカバーを開いてベルトリンクを給弾する操作は、RPDでしか味わえない楽しみだ

 

無可動実銃は極上の嗜み RPD

機関部の右側からはカートが抜かれた空のベルトリンクが連結したまま排出される。排出されたベルトリンクは弾薬を差し込んで再利用される

 

 アメリカ軍のSOGでは撹乱と偽装やジャングルでの取り回しを考慮してバイポットを外し、銃身を短くカットしたソードオフRPDの使用が確認されている。10㎏あるM60よりも軽いRPDは好評だったようで、一部の部隊では音の出る金属製のドラムマガジンは外され、代わりに音の出ない布製のポーチが付けられていた。AKと同一の弾丸を使用するRPDはマガジンの補充の効かない地域でも、弾丸さえあれば撃つことができるため今後も世界中で重宝される続けることだろう。

 

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TEXT:IRON SIGHT
撮影協力:フォリッジグリーン

 


この記事は2018年12月号 P.104~105より抜粋・再編集したものです。

 

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