2020/08/02
ツァスタバ M76 スナイパーライフル 【無可動実銃の魅力】
世界中の紛争地帯でいまだ現役のスナイパーライフル
第二次世界大戦でドイツに占領され、戦後は新たな他国の介入を強く拒んで第三国になる道を選んだユーゴスラビア。旧東側諸国の中では非常にユニークな武器体系を持った国だ。
第二次世界大戦後ユーゴスラビアは戦時賠償でドイツから譲渡された製造設備を使ってドイツ式の武器を製造していたが、やがてフルシチョフ体制となったソ連とは関係が修復され、AKのライセンスを取得し製造に踏み切る。AKの生産自体は比較的遅いほうになるが、それまで旧ドイツ型の製造を行なってきたからか、高品質で独特な改良を行なったのは同様の経緯を持つ東ドイツと同じだ。
ツァスタバ M76 狙撃銃(#40972)
- 全長:1,135mm
- 口径:7.92mm×57
- 装弾数:10発
- 価格:¥280,000
ツァスタバ M76は、セミオートスナイパーライフルとして開発されたSVDをそのままコピーするのではなく、AKMのユーゴスラビア版であるM70をベースにしている。コンセプトとしてはM16をスケールアップすることで成功したSR-25に近い。
そのため操作方法や分解方法でM70と共通する部分が多く、AKの取り扱いをマスターすればほぼ同様に扱うことができる。5つの民族と4つの言語が混在するユーゴスラビアには最適であった。
ツァスタバのAKといえば側面に3つの放熱孔を持つハンドガードだろう。スナイパーライフルのM76にもそれは継承された
長い銃身の先端にはハイダーと一体になったフロントサイトが装備されているが、このフロントサイトポストは銃剣の装着が可能で、実際に支給もされていたようだ
ストックにも大きな文字でシリアルナンバーが刻まれている。バットプレートはAK系では珍しいゴム製だ
全長ではSVDより短いが、有効射程は約800mと長距離狙撃にも使える命中精度があったので、標準の7.92mm×57モーゼル弾用のほかに、SVDと同じ7.62mm×54R弾用、NATO標準の7.62mm×51弾用も生産して世界中に輸出された。
4倍率のZRAK M-76スコープ。形状や照準器内部のレティクルはドラグノフに装備されているPSO-1に類似している
ZRAK M-76スコープには専用のスコープカバーが装備されている
そのM76の実力が発揮されてしまったのは92年のサラエボにおける事件であった。民族浄化の名のもとに多くの一般人のセルビア人が狙撃され、その時セルビア人兵士の手にはM76が握られていたようだ。近年でもシリアで使用されるなど、今もなお数奇な運命を漂わせるスナイパーライフルである。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2020年9月号 P.108~109より抜粋・再編集したものです。