実銃

2021/03/03

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】

 

他社を寄せ付けない圧倒的な存在感

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】

 

 APC556はB&Tがモジュラー式のウェポンシステムとして開発した最新ライフルだ。B&TはMP5用のアップグレード・パーツを開発・提供しているメーカーであり、当初は軍・警察機関向けを前提としてH&K製MP5の後継の座を狙った9mmサブマシンガン、APC9(Advance Police Carbine)を開発し、完成度の高いSMGとなった。そして2016年には満を持してAPCのアサルトライフルバージョンを発表し、さらなる需要の拡大を目指したのだ。

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】

 

B&T APC556 PDW 自動小銃
(エイムポイント、サイレンサー、伸縮式パット付き #GB17-0927)

  • 全長:725mm(545mm)
  • 口径:5.56mm×45
  • 装弾数:30発
  • 価格:¥750,000

 

 B&Tはヨーロッパを中心に特殊部隊のための武器を製造し、ステアーTMPを改良したMP9やGL06グレネードランチャーを数多く納入した実績がある。しかしまだ小さな会社であり、アメリカ軍へのAPC9のSCWへの採用も比較的少数だ。大量の注文を満たすために会社を急拡大すれば品質低下を招く懸念がある。故に拡大路線を取らず、今後も小ロットでの採用が見込まれている。

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】
すべての操作レバー類は左右対称に設計されている。これは社長のカール・ブルッガー自身が左利きであるため、設計段階で重点的にチェックされているのだ

 

 APC556カービンのメカニズムは、ショートストロークガスピストンと古典的な作動システムを備えている。また現代の特殊作戦には不可欠なサイレンサーの装備を考慮した設計となっている。サイレンサーはB&Tがもっとも得意とする分野であり、取り付けには後部のリングを回転させるだけでロックがかかる構造だ。切り替え式のガスレギュレーターを標準装備しているため、サイレンサーの有無にかかわらず作動の信頼性が高く、フルオートでも銃が暴れない仕組みになっている。

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】
この無可動銃のサイレンサーにはダミーの文字が入っているが、これは本銃を観賞用と知ったB&Tによって施された。このように顧客に合わせて細かいサービスを提供できるのも、世界中の銃器メーカーにOEM生産をしているB&Tならではのことだ

 

 ライバルとされるのはFN SCARやHK416になるが、2つの重量が3.3kgに対してAPC556は3.8kgと0.5kgほど重い。これはおそらく、ボルトとチャージングハンドルが大型化したことによるものだが、恩恵もあり、故障や作動不良はライバル機種よりもAPC556のほうが少ない。ハンドガード部にはM-LOKなどの最新のアタッチメントシステムは採用されず、信頼性が高いピカティニーレールを備え、実用性一点張りとした。

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】
金属製のアッパーレシーバーは無理な軽量化は行なわず耐久性を重視した作りとした。標準装備のドットサイトこそエイムポイント製だが、マウント部はB&Tのものが使われている

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】
マグプル製などのポリマーマガジンを用いず、新規のマガジンまで製造している。当然であるがAR15シリーズのマガジンはすべて流用することも可能だ

 

B&T APC556 PDW アサルトライフル【無可動実銃の魅力】
PDWストックのアームに刻まれたスリットは逆三角形になっており、引き出す際にはストッパーが掛からず、素早く展開が可能だ

 

 APC556は優れた銃にもかかわらず採用情報は少なく、主要な購入先は発表されていない。カタログによると、1挺の価格は2,500ドル以上と高価であり、採用が減少した理由はコスト高が要因だといわれている。
 競争の激しい5.56mmアサルトライフル市場ではコストパフォーマンスに優れた商品も数多く存在するためAPC556が成功を収めるにはそういった点も考慮する必要があるだろう。ただし、APC9 SCWのように高い要求値を求められる案件においては、APC556は採用を勝ち取る可能性があるライフルであることも事実である。

 

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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年4月号 P.116~117より抜粋・再編集したものです。

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