実銃

2022/10/03

洗練されたデザインかつ信用されたライフル「FAL L1A1自動小銃」【無可動実銃ミュージアム】

 

 この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
 さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

 

バトルライフル開発競争の勝者

 

 FALというライフルは第二次世界大戦後の銃器設計に多大な影響を与えたといってよいだろう。当初のFAL開発計画は、第二次世界大戦終結後すぐに始まったヨーロッパ諸国の軍備再建に向けた軍用銃開発計画に基づいたものであり、当初はドイツのStG44のような弱装弾薬を使用するフルオートマチック小銃の開発を目指したものだった。
 イギリスが主導していた.280ブリティッシュ弾やStG44のマガジンを使用するモデルまで開発していたが、アメリカが7.62mmx51弾をNATO標準弾薬とするよう要求したことで状況が一変する。それまで有力視されていた弱装弾仕様のライフルは7.62mmx51弾には対応できず、多くが開発中止に追い込まれた。その中でFALは7.62mmNATO弾に対応させることができた。軍事力拡大政策を進めるソ連や共産圏国家の脅威に晒された状況でFAL以上のライフルがヨーロッパの大国で開発できなかったことからNATO加盟国を中心に採用され、それを追従する形で世界中に広がっていった。

 

 

FAL L1A1自動小銃(IWS暗視サイト付き #AD6118477)

  • 口径:7.62mm×51
  • 装弾数:20発
  • 価格:¥660,000

 

先進性と保守性、様々な国々が採用できたライフル

 

 FALの快進撃の理由は当時の世界情勢と設計にあると言える。FAL原産国のベルギーではセンチメートルの単位が用いられて製造が行なわれていたが、FALを制式採用したイギリスによってインチ単位での再設計図面が製図されたことにより、センチメートル単位・インチ単位両方の寸法から選んで製造することが可能となった。
 このことから「軽量自動小銃」の名前の頭文字をフランス語で表した「FAL」か、英語で「LAR」と呼ぶセンチメートル単位で製造されたモデルと、セルフローディングライフルを略した「SLR」と呼ぶインチ単位で製造されたモデルに分かれた。イギリスがFALの採用を支持したことにより、中東やアフリカ、カナダなど90カ国以上の軍や法執行機関にて採用され、あらゆる戦場に投入された。そのためローデシアではFALとSLRの両方が投入され、フォークランドではFALとSLRが敵味方に分かれて戦う事態まで起きるほどであった。

 

この個体はフレームにイギリス軍でのモデル名L1A1と刻印されていることからインチモデルと判別できる。セミオートのみのセレクターや左側からのみ操作可能なマガジンキャッチなどイギリス独自の改良が施されている

 

 いくら優秀なFALとはいえ万能なライフルであったわけではない。機関部の油膜切れ時に砂が入ると作動不良が発生しやすく、またフルオート射撃では制御が難しく正確な射撃ができないことからSLRタイプではフルオートを排除するなど、弱点があるライフルでもあった。

 

エジェクションポートから砂などの異物が入ってしまうため排出用にボルトにジグザグのサンドカットを設けた

 

 しかし1950年初頭には完成していたことを考えればFALは東側諸国が装備するAKに対抗できる唯一のライフルであったのだろう。様々な戦場でのバトルプルーフによる採用国ごとの改良によって、バリエーション数も多くそれがまた魅力ともなっている。生産方法も削りだしを多用しているので第二次世界大戦中のボルトアクションライフルが作れる設備があれば生産が可能なことから、ライセンス生産に踏み切るハードルも低かったであろう。

 

フラッシュハイダーは銃剣の装着と発射炎を抑制させるためにFALに比べて大型のハイダーが採用された

 

フロントサイトガードのサイドが丸くカットされているのはサイトポストの視認性を上げるための改良である

 

第2世代のスターライトスコープ装着モデルはベトナム戦争やフォークランド紛争時を思わせるセットアップだ

 

 同時期のAKやM14に比べてもFALは洗練されたデザインであり、イギリスでは湾岸戦争時に後継機種のL85が不調のため、L1A1が再使用されたほど信用されたライフルであったのだ。

 

 

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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年11月号 P.132~P.133をもとに再編集したものです。

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