2022/06/30
進化し続けるブルパップの傑作「ステアーAUG A3」【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、オーストリアが生んだブルパップライフルの傑作「ステアーAUG A3」だ。
AUGが「ブルパップの傑作」と呼ばれる理由
ブルパップ方式は21世紀を見据えた次世代のアサルトライフルとして開発されたものである。1970年代に実用化された代表的なものにフランスのFA-MAS、イギリスのL85、ドイツのG11と大国が威信をかけて開発したものが多いなか、最も成功したのがオーストリアが開発したステアーAUGである。
ステアーAUG A3 自動小銃(#3043255)
- 全長:740mm
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:30発
- 価格:¥660,000
ユニット化された構造はバレルユニットを交換するだけで複数のバリエーションに換装することが可能だ。そのため操作方法の教習が一本化できるなど軍用銃としては理想的なものであった。加えて当時としては先進的な強化プラスチック素材を多用するなど先見性に富んだ設計ながら、手堅いショートストロークピストン式を採用したことで高い信頼性も獲得している。
他のブルパップが独自過ぎた構造によって作動不良や拡張性のなさに対する改良の限界を迎えるなか、AUGだけが時代の要求を満たし、後発のブルパップに強い影響を与えるモデルとなったのである。
時代の流れに対応できた設計思想
それでも実際に21世紀を迎えてみると、ブルパップライフルとして最も成功したAUGと言えども機能面で不足している箇所が多く露見されるようになった。モジュラー機構やプラスチックパーツの多用など大きな部分では開発当初の目論見どおりの成果をあげたが、最新式の光学機器やフラッシュライトといった各種デバイスをライフルに装着するため拡張性の向上という問題が浮かび上がる。これを急いで解決する必要に迫られて改修が行なわれた。
アッパーモジュールのデザインをキャリングハンドル兼用のスコープからフラットトップレールへと変更し、様々な光学機器の搭載を可能にした。バレルユニットには標準装備されていた折り畳み式のフォアグリップを廃止し、代わりにアクセサリー選択の自由度が高いレールアダプターシステムへと変更されている。
AUGがこの程度の改良で現代にも通用するような優れたライフルだという事実は、オーストラリアやニュージーランドといった英国連邦の国々でさえ英国のL85を差し置いて制式採用したことからも証明されている。A3と同様の改良はこれらの国でも施され、AUGは現用で使用され続けている。
進化を続けることが生き残る鍵
AUGは常にオーストリア軍からの要求を受け入れて進化をしてきたライフルであった。要求が的確だったこともあるだろうが、それを具体化し続けた結果、この先も継続使用されることが約束されている。ブルパップライフルが廃れることなく、現在まで発展し続けたことに大きな功績を残したのは間違いない。
現在、すでにAUGのパテントは失効しており、ステアー社の許諾なしにクローンの製造が可能となった。これにより民間からの新たなアイデアがAUGに投入され、さらなる進化の可能性も出てきた。M4タイプが幅を利かせる軍用ライフルのなかで、これからもAUGは個性豊かな魅力を発揮し続けるだろう。
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この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.154~155をもとに再編集したものです。