2022/01/04
世界も日本も参考にした東欧の名銃「ZB30J」【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、その高い信頼性を世界が認めた名銃「ZB30J軽機関銃」だ。
チェコスロバキアが生んだ名銃ZB26の系譜
オーストリア・ハンガリー帝国の一部だったチェコスロバキアは第一次世界大戦後に独立し、戦後の混乱と周辺国の脅威から国を守るために軍備の増強を図った。その一環として機関銃の開発が行なわれ完成したのがZB26軽機関銃である。ZB26は当時のどの軽機関銃よりも安価で故障知らずであったため、チェコ政府は外貨獲得のために輸出することを決定、最終的に12万挺以上が製造されて24カ国に輸出された。その際に輸出国の弾薬に合わせた改良が施され、ZB26には多数の派生型が生まれている。
ZB26を積極的に採用した国の中にユーゴスラビアがあった。ほぼ同時期にオーストリア・ハンガリー帝国から独立したユーゴスラビアとチェコスロバキアは、ともに独立元であるハンガリーが共通の脅威となったため協定を結ぶ。
この協定によりユーゴスラビア軍でもZB26が採用されたのだが、ユーゴスラビア製の弾を使用した際に様々な問題が露呈する。それに対処するために改良型のZB30J(Jはラテン文字表記“Jugoslavija”の頭文字)が開発された。
ZB30J 軽機関銃(#69)
- 全長:1,100mm
- 口径:7.92mm×57
- 装弾数:20発
- 価格:¥330,000
ZB30Jではガスシリンダーを短縮するのだが、その際にバレルの全長まで一緒に短縮されている。これはバレルのライフリング内にガス注入穴を設けるのを嫌った設計であり、短銃身化によって寸足らずとなった部分はハイダーを延長することで全長を補っている。他ではあまり類を見ないユニークな改良が施された銃でもある。
敵味方双方に頼りにされたZB30J
細かい箇所でも簡略化が図られたこのZB30Jは輸出型の基本モデルとなった。後年、ユーゴスラビア王国は第二次世界大戦でドイツに早々と降伏し、ユーゴスラビア軍は大規模な戦闘を経験しなかった。ドイツ軍により武器庫から大量に鹵獲されたZB30JはMG30(t)と名前を変え、軽機関銃が不足していたドイツ軍にて使用された。
第二次世界大戦終結後のZB30Jは旧式扱いになったが、供給元のチェコスロバキアも共産圏勢力であったことが幸いして、ユーゴスラビアでは使用が続けられた。ZB30J以降の軽機関銃はソ連式の武器形態であるベルト給弾型に変わってしまったため、箱型マガジンのZB30Jは徐々に退役していった。
優秀な設計であったZB30Jは、第二次世界大戦中に使用された軽機関銃の中でも高い信頼性を持ち得ていた。英国では本銃を自国で改良したブレン軽機関銃を長い期間使用し、日本でも九九式軽機関銃や、自衛隊向けに開発された64式小銃のガス式装填機構の参考モデルになるなど、意外なところに多くの影響をもたらしている。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
撮影協力:F2プラント(栃木県栃木市藤岡町)
この記事は月刊アームズマガジン2022年2月号 P.230~231より抜粋・再編集したものです。