2021/10/27
FN F2000 自動小銃【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、米軍の未来兵器計画を具現化したアサルトライフル「FN F2000」だ。
ブルパップライフルの完成型
F2000が開発された経緯には米軍のOICW計画が大きく影響している。OICW計画とは1990年代に開発がスタートした次世代歩兵用個人火器のことである。小銃をモジュラー化することで様々なアクセサリーを装着させることが本計画の前提であったため、中心をなすアサルトライフルはコンパクトである必要があり、ブルパップ方式が採用された。
FN F2000 自動小銃(#008208)
- 全長:686mm
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:30発
- 価格:¥1,430,000
OICW計画自体は2004年に計画が中止となってしまい、F2000の存在意義自体が失われかけてしまったが、銃自体の完成度は高く、よりモダンなライフルのSCARの開発にも影響を与えている。その証拠にOICW計画でライバルであった他の銃がすべて消えていく中でもF2000はスロベニア軍での正式採用を皮切りに数カ国の特殊部隊が採用していたりと、現在でも使用され続けている。
米軍の要求をすべて詰め込んだ結果生まれた大胆なスタイル
F2000は見た目以上に大柄なブルパップアサルトライフルだ。実際に手に取ってみると近未来的な外見とは裏腹に、太く幅広いレシーバーにやや圧倒される。このようにF2000が大型化していった理由の一つにはFNと米軍の関係が密接になったことが挙げられるだろう。2000年代初頭、米軍におけるM16シリーズの納入業者という盤石の座をコルトから奪い、参入を果たしたことでFNは米軍と太いパイプを築いていたのだ。
FNにとってOICW計画による次世代アサルトライフルの採用は悲願であり、精力的に開発が進められた。米軍の無茶な要求をすべて実現するために、あらゆる要素を詰め込まれたF2000は骨太なブルパップアサルトライフルへと発展していったのだった。
FNの持つノウハウに加えて新たな機構まで開発した意欲作
最新のモジュール方式とアサルトライフルの銃身長を両立させ、将来完成させる予定であった新型ランチャーの装着まで想定されたことから、F2000にはブルパップ方式という主流ではない形態がとられている。これは米軍ウケが悪いように思えるが、FNではこれ以前にP90という次世代型のSMGを完成させた実績とノウハウがあったため、それなりの勝算はあったのだと推察できる。
開発には難所もいくつかあった。例えばF2000ではP90の排莢位置となる箇所がマガジンの装填位置になることから、新たな排莢箇所を備える必要があった。しかし射手の側面へ排莢する従来の方式を使うと、完全なアンビ化は望めなくなってしまう。そこでバレル上部にエジェクションチューブを設け、薬室から送り込まれた空薬莢をチューブ内にて圧送し、銃の前方から排莢させる「フロントイジェクトシステム」を開発した。この風変わりな排莢方法は特許も取得されており、F2000を象徴するシステムとなった。
コンパクトなデザインに最新アサルトライフルが持つ機能をすべて備え、多くの任務や状況に対応できるF2000はブルパップ方式の運命を握っている画期的なアサルトライフルなのである。
SHOP DATA
●東京上野本店
〒110-0005 東京都台東区上野1-12-7 Theシカゴビル
TEL 03-5818-1123 FAX 03-5818-1124
営業時間 12:00~19:30 年中無休
●大阪店
〒541-0048 大阪府大阪市中央区瓦町1-5-14 瓦町一丁目ビル4階
TEL 06-6223-9070 FAX 06-6223-9071
営業時間 12:00~20:00 年中無休
TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2021年12月号 P.104~105より抜粋・再編集したものです。