2021/09/27
トンプソン M1928A1【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、アメリカ史の表裏に名を残す名銃「トンプソン短機関銃」だ。
不名誉な形で名を馳せてしまった不遇の時代
トンプソンと聞いて想像するのは禁酒法時代のギャングの銃というイメージではないだろうか。だがこれはアメリカ軍の将校でもあった開発者のトンプソンにとっては不名誉なことであった。トンプソンはこの短機関銃を元々は軍への採用を狙って開発したが、高価だったこともあり軍からの大量発注もなく、戦後不況で会社の経営も難航したためにギャングやマフィアといった“ならず者”たちに販売を行なったのだった。
トンプソンM1928A1短機関銃(50連ドラムマガジン付き)(#AO59738)
- 全長:855mm
- 口径:45ACP
- 装弾数:20/30/50/100
- 価格:¥440,000
トンプソン短機関銃はひとりで持ち運びが可能で大量の銃弾を携帯でき、1930年代では数少ない高火力な銃器ゆえに無法者に愛された。それによりトンプソン短機関銃の知名度は上がったものの、同時にギャングたちの悪行によりイメージは悪くなる一方で、開発したトンプソンは経営者を辞することになってしまう。
トンプソン短機関銃が当初の思惑どおりに軍からの大量発注を受けるのは第2次大戦が始まってからであるのだが、直前の1940年6月にトンプソンは亡くなってしまい、夢の実現を見ることはなかった。
アメリカンスピリッツが詰まった短機関銃
オート・オードナンスは創業時から社屋も作業場も持たず、設計だけを行なう会社であった。そのため製造に関しては外注に頼るしかなく、簡潔なデザインとなった。
トンプソンは現在でこそ短機関銃と呼ばれるが、そもそもは個人で携帯できる機関銃として開発されたものだ。そのため、短機関銃とカテゴライズするうえでは過剰すぎるほど手の込んだ作りとなっていた。フレームは鋼鉄ブロックからの切削加工によるもので.45口径を撃つには頑丈すぎる強度であり、フレームが角を丸めた直角で構成されているのは加工を平フライス加工だけで行なえるようにしたためである。
生産を外注に頼ることで、注文に応じて複数の外注工場に発注すれば無駄な経費が掛からずに済むというメリットがあった。代わりに材料の品質にはばらつきがあったが、頑丈な構造のおかげで信頼性は高く、射撃による衝撃で本体が壊れるようなことは滅多になかった。曲線を基本に構成されることが多かった欧州の短機関銃とは一線を画した合理的なデザインからはアメリカらしさが漂っている。
もうひとつ、トンプソン短機関銃の特徴は、あだ名が複数あることだ。ギャングが使っていた頃は「シカゴタイプライター」と呼ばれ、G.Iが使えば「トミーガン」と呼ばれている。短機関銃の黎明期に誕生しただけに様々なジャンルで活躍したトンプソン短機関銃は戦中に開発されたM1A1のような簡略性は一切ない豪華な作りだ。
短機関銃でありながらも機関銃のような味付けがされた稀有な銃として、そしてアメリカを象徴する短機関銃として今なお語り継がれている。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2021年11月号 P.206~207より抜粋・再編集したものです。