2022/05/30
アメリカを征服した西部開拓時代の名銃「ウィンチェスターM73ライフル」【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、アメリカで今なお絶大な人気を誇るレバーアクションライフル「ウィンチェスター M73ライフル」だ。
ウィンチェスター飛躍の原動力となったモデル
「西部を征服した銃」として有名なウィンチェスターM73ライフルは西部開拓時代を代表するレバーアクションライフルだ。ウィンチェスターといえば銃器のセールスばかりが目立つが、もともとは洋服などを販売していた企業であった。レバーアクション機構の開発という功績は、ウィンチェスターが買収した子会社のボルカニックによるものである。なおボルカニックはヘンリーライフルを開発した実績も持っている。
ウィンチェスター M73ライフル(#318409B)
- 全長:1,100mm
- 口径:.38WCF
- 装弾数:12発
- 価格:¥660,000
ウィンチェスターが販売したレバーアクションライフルはM1866イエローボーイに始まり、改良を加えながら多くのモデルを発売し人気を博した。特にM1873モデルは他のライフルよりも高価であるにも関わらず好調なセールスを記録し、ウィンチェスター社が飛躍する礎を築いた。その理由の1つには.44-40弾というセンターファイア方式の弾薬を採用したことにより、拳銃の弾薬を流用でき利便性が高かった点が挙げられる。
もとは専用弾薬として開発された.44-40弾
「拳銃弾を使用できる利便性の高さ」と前述したが、実は弾薬の共通性は意図して生まれたものではない。
M73は装弾機構の都合でラウンドノーズ弾しか使用できず、強装弾も使えないため専用弾薬の開発が必要となった。そのような事情から開発・製造されたのがM73専用の.44-40弾であった。この.44-40弾は拳銃弾に近いものとなり、また拳銃弾としても優れていたので、コルトをはじめ多くのガンメーカーが.44-40弾に合わせた規格の拳銃を製造するようになったのだ。つまり拳銃のほうが後追いでM73専用弾薬を共用できるようにしたことで利便性が高くなった、というわけである。
軍の採用実績はないものの、絶大な人気機種に
M73といった連発式のウィンチェスターライフルは軍用として見た場合、構造が複雑で汚れや砂塵に弱く、製造コストも高くなる傾向にあった。また伏射姿勢を取った際には照準を合わせながらのレバーアクションが行なえず連射ができないのも大きな欠点だ。一方単発式のスプリングフィールド製ライフルは構造が単純でコストを抑えつつ耐久性が高いなどのメリットが多く、アメリカ軍は初期のカートリッジ式ライフルの多くに単発式を採用した。
ウィンチェスターライフルは軍用銃には採用されなかったものの、ライフルの一形式として絶大な人気を誇った。馬や馬車に乗った状態でも連射が可能なことから民間人や保安官が買い求め、中には自費でウィンチェスターライフルを購入する軍人などもいたほどである。
「西部を征服した銃」から「アメリカを征服した銃」へ
ウィンチェスターでの製造は1945年に終了したが、2006年のジョン・ウェイン生誕100周年に記念モデルを発売したのを機に生産を再開している。アメリカ人のアイコンとして人気は高く.22LRや.357マグナム、.410ゲージなど多種多様な弾薬に対応したクローンモデルがラインアップされており、現在でも販売が続いている。このようにウィンチェスターライフルは、もはや「西部を征服した銃」ではなく「アメリカを征服した銃」の呼び名こそが相応しいライフルとなっている。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
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この記事は月刊アームズマガジン2022年7月号 P.134~135をもとに再編集したものです。