2022/04/30
アーマライト・ライフルのラストナンバー「アーマライト AR-18」【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
今回紹介するのは、アーマライト社が西側陣営への普及を目指したライフル「AR-18自動小銃」だ。
アーマライト18番目のライフル
アーマライト社は、航空機企業ロッキードの特許顧問だったジョージ・サリバンが狩猟で使うライフルに不満を持ち、自宅のガレージで軽量なライフルを作り始めたことに端を発する。後に航空機の素材や機構などを流用して事業を拡大したいフェアチャイルドの資本協力を得て法人化、この頃にサリバンはユージン・ストーナーと出会い、その才能を見抜いてアーマライト社へと招いている。
AR-18は数字が示す通りアーマライトが18番目に発売したライフルだ。現在ブランド名としてのアーマライトの名は残っているが、同社による自社製品はこれ以後開発されることはなかった。ストーナーをはじめとした多くの技術者たちによって産み出されたオリジナルアーマライトの最後のモデルが、このAR-18なのだ。
アーマライト AR18自動小銃(#A5464)
- 全長:940mm
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:20/30/40発
- 価格:¥275,000
目指したのは“西側陣営版・AKライフル”
アーマライトはAR-18の開発を行なうにあたって設計の基礎となるベースモデルを用意した。それはAR-16というユージン・ストーナーが試作した7.62mm口径のショートストロークガスピストンライフルであり、AR-18はこのAR-16の特徴を多く受け継いでいる。
前年にAR-15を米軍に送り出していたアーマライトは、続けてAR-18が米軍に採用される可能性は低いと考えていた。そこでAR-18は西側諸国での採用を狙い、第2次世界大戦時代相当の工業レベルでも生産できる製造工法を採用。工業技術力と軍事予算に乏しい第三国でも製造できるものとした。世界で急速に普及したAKライフルのような立ち位置を目指したのだ。
徹底した省力化設計が西側陣営の諸国に受け入れられると思いきや、AR-18のセールスは成功したとは言えず、大量の在庫品は闇に流れた。そのうえ大半が英国と戦うアイルランド共和軍IRAの手に渡ってしまう。IRAはAR-18を宣伝に使い「アーマライトと投票箱戦術」のスローガンが掲げられ、リトル・アーマライトという歌まで作られている。
造りやすさが仇となり、アーマライトのラストナンバーに
ネガティブな面が目立つAR-18ではあるが、手堅い発射機構と高効率の生産性を兼ね備えたコンセプトは、後年のアサルトライフルに大きな影響を与えており、技術面では一定の成功を収めていたと考えていいだろう。しかし簡素化の欠点としていくつかのパーツの強度が足りず、箱出しの状態でAR-18を採用した正規軍はない。
さらにAR-18にとって不運だったのは、完成後に親会社のフェアチャイルドによる資金の提供が止まったことと、他社へ移ったストーナーによってAR-18の開発デザイナー3名のうち2名が引き抜かれてしまったことだ。資金と人員の両面で改良の道が閉ざされてしまったのである。しかもAR-18の設計が「簡単に作れる」ものだったため、逆に「簡単に真似できる」になってしまい、アーマライト社に利益をもたらさなかった。
AR-18モドキが溢れかえる現在、オリジナルアーマライトのAR-18は今こそ「再評価を受けるべきアサルトライフル」の筆頭ではないだろうか。
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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
撮影協力:F2プラント(栃木県栃木市藤岡町藤岡2262)
小道具協力:なす軍曹
この記事は月刊アームズマガジン2022年6月号 P.222~223をもとに再編集したものです。