2022/10/08
【陸上自衛隊】第43普通科連隊の勇姿を追った!
戦技を磨く“令和の防人”を見た! ─後編─
我が国防衛の最前線である西部方面隊の中核を担う第8師団は平成30年3月、全国に先駆け「機動師団」へと改編し、事態が生起した際には担任区域を越えて緊急展開する部隊であり、第43普通科連隊はその中核を担う部隊の1つだ。この部隊をクローズアップする本取材企画の後編では、この6月に霧島演習場で実施された市街地戦闘訓練における、ロープを用いた隊員による突入訓練や89式小銃による射撃訓練、室内戦闘訓練に加え、佐多射撃場で実施された中距離多目的誘導弾による射撃訓練をご紹介しよう。
屋上からのロープを使用した突入訓練
宮崎県えびの市と鹿児島県湧水町に跨がる霧島演習場の「霧島市街地訓練センター」で、第43普通科連隊による市街地戦闘訓練が実施された。前編では室内戦闘訓練の模様を中心にお伝えしたが、この後編ではまずロープを用いた屋外からの突入訓練の様子をご紹介する。
建物を制圧する際、ロープや梯子を用いて屋外から突入する方法もあり、こうした多様な能力を保持することで市街地作戦における選択肢が増え、成功率を高める。今回取材したロープによる突入はとりわけ難易度が高く、高度な戦闘技術を有するレンジャー隊員がこれにあたった。陸上自衛隊におけるレンジャー隊員はご存知の通り、過酷な状況下でのサバイバル、潜入、襲撃、伏撃、破壊といった各種訓練を修了した隊員であり、精鋭中の精鋭だ。この訓練では屋上から外壁を伝って降下、あるいは地上から外壁を登はんし、窓から突入する一連の動きが訓練された。
小銃射撃訓練
続いては、演習場内の射場で89式5.56mm小銃(固定銃床型)による射撃訓練を見せていただいた。この時は屋外での射撃訓練が行なわれていた。
室内戦闘訓練
本取材における市街地戦闘訓練のハイライトとして、レンジャー隊員を主体とする班による室内戦闘訓練が実施された。ここでは目標とする建物に接近して突入し、各階・各部屋をクリアリングしていくという一連の動きを訓練。磨き上げられた彼らの鮮やかな動きから、第43普通科連隊の練度の高さを実感することができた。
中距離多目的誘導弾による射撃訓練
本特集で取材した市街地戦闘訓練とは別の日に、第43普通科連隊の中距離多目的誘導弾による実射訓練が実施されたので、その模様を写真でご紹介する。訓練は九州最南端の佐多岬(鹿児島県肝属郡南大隅町)にある陸上自衛隊佐多射撃場で洋上の標的に対し、射撃訓練を行なった。
この佐多射撃場は無線標的機等を用いる機関銃による射撃訓練に加え、洋上標的を用いるヘリコプターのドアガン射撃訓練、さらには96式多目的誘導弾による射撃訓練も行なっており、毎年全国の陸自部隊の隊員がこれら装備の射撃訓練のため訪れている。
中距離多目的誘導弾とは
79式対舟艇対戦車誘導弾(79HATM)、87式対戦車誘導弾(87ATM)の後継として普通科部隊等に装備。79HATMの中距離域での対舟艇、対機甲火力、87ATMの精密な対機甲火力を受け継いでおり、舟艇から装甲・非装甲、人員、構造物にまで対応できる多目的性を持つ。着上陸侵攻や、離島侵攻対処をはじめとする新たな脅威、多様な事態に対して優れた機動性、即応性をもって対処できる。開発は防衛省技術研究本部、製作は川崎重工業が手がけている。
Text & Photos : 笹川英夫
取材協力:陸上自衛隊 第8師団、第43普通連隊
この記事は月刊アームズマガジン2022年10月号 P.134~143をもとに再編集したものです。