ミリタリー

2022/08/19

【陸上自衛隊】16式機動戦闘車、青空に砲火轟かせる

 

切磋琢磨する第3普通科連隊

 

 改編に伴い、長い歴史に幕を閉じる第3普通科連隊(名寄駐屯地)は冷戦時代はまさに日本最北を守る先兵として、過酷な自然環境にも負けず錬成を重ねてきた。また、イラク復興支援群の第1陣として派遣されるなど、歴史にその名を刻んだ。彼らは新しく第3即応機動連隊へと生まれ変わり、切磋琢磨を続けていく。前回に引き続き、彼らの足跡を辿っていこう。

 

前回のレポートはこちら

 

準備が進む各部隊

 

 第3普通科連隊に16式機動戦闘車が加わった一方で、各中隊も改編へ向けて動き出し、切磋琢磨していった。
 第3普通科連隊は、本部及び本部管理中隊、第1~4普通科中隊、重迫撃砲中隊からなる。即応機動連隊化に伴い、ナンバー中隊の数は3個中隊体制へと減勢されるが、部隊の核心である点は変わらない。

 話は前後するが、令和3年7月1日から6日にかけ、「令和3年度第1次連隊訓練検閲」、7月7日から7月12日(予備日含む)にかけ「令和3年度総合戦闘射撃」が立て続けに実施された。ここでは第3普通科連隊と第2戦車連隊に加え、第2特科連隊、第2施設大隊等が増強され、第2師団隷下部隊が戦闘団を編成し戦った。
 特科火砲の砲弾が敵陣地に降り注ぎ、その間隙を縫い普通科と機甲科が前進する。この時、普通科中隊の頼もしい相棒となったのが第2戦車連隊の90式戦車だった。まさに第3即応機動連隊となってからの普通科中隊と、16式機動戦闘車の連携を見ているかのようであった。

 連隊最大の火力を誇る重迫撃砲中隊も負けてはいなかった。120mm迫撃砲RTを駆使し、敵の陣地へと砲弾を雨あられと撃ち込んでいく。同中隊は火力支援中隊へと改編され、第3即応機動連隊の女神として微笑む。
 こうして各中隊も来るべき改編に向けて、最終調整に入った。

 

重迫撃砲中隊による120mm迫撃砲RTの射撃。普通科連隊が配備する最大火砲であり、射程は通常弾で8kmと長い。同部隊は任務は変わらないが、特科職種の隊員たちが中心となる火力支援中隊へと改編される

 

120mm迫撃砲RTの夜間射撃の様子。3門同時発射は大迫力だ。敵の最前線へと砲弾の雨を降らせる

 

特科火砲が敵陣地へと砲撃を加えている間、普通科中隊は前線より後退し、防御陣地を構築する

 

小銃小隊による89式小銃の射撃。普通科部隊だけでなく、陸自各職種においても欠かせないバディ(相棒)だ

 

16式機動戦闘車、初射撃

 

 16式機動戦闘車を受領すると、早速射撃訓練を実施した。記念すべき初射撃となったのが、令和3年10月12日だ。
 戦車は、最初の1発目を射撃する際は、車内からではなく外からリモートで撃発を行なう。事故等万が一の事態に対処するためだ。16式機動戦闘車もこの方式がとられた。
 射撃までの準備が整うと、乗員は全員車外へと出てきた。車体横には、遠隔操作機器である箱型の「16MCV車外撃発装置」が置かれていた。その周りに配置に就く乗員たち。そして、号令とともにスイッチを押す。それと同時に砲口から轟音ととともに火球が生まれ、砲弾をまっすぐに標的へと向けて撃ち出した。こうして、無事に初弾は発射された。
 その後、乗員たちは乗車し、通常の射撃訓練へと移行した。このリモート射撃は、すべての新車に対し行なわれていく。
 今回の射撃でも、普通科中隊は射撃を実施した。それも、前後に移動しながら身を隠しつつ射撃をするという高難易度の訓練に挑んだ。他の普通科連隊が、少しでもレベルの高い訓練を行なっていると聞けば、日本中どこへでも人員を派遣し、どん欲に学んでいった。ここまで積極的な姿勢を見せるのは、全国に普通科連隊は数あれど、第3普通科連隊ぐらいのものであろう。入魂式以降も段階的に16式機動戦闘車は配備されていった。

 

 

Text & Photos : 菊池雅之
取材協力:陸上自衛隊 第2師団/第3即応機動連隊

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年5月号 P.208~215をもとに再編集したものです。

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