ミリタリー

2022/05/27

【陸上自衛隊】磨き上げられた戦技! 中央即応連隊の閉所戦闘訓練

 

閉所戦闘の実演

 

 令和元(2019)年12月、9mm拳銃(SIG SAUER P220)の後継として採用された陸上自衛隊の新拳銃、ヘッケラー&コックSFP9の配備が始まり、陸上総隊隷下の中央即応連隊(中即連)による実弾射撃訓練の取材が許可された。その取材の中で特別に中即連の戦技訓練班(戦訓班)メンバーによる閉所戦闘(自衛隊における近接戦闘の呼称)のデモンストレーションが実施された。

 

 

ルームエントリーの実演

 

 近接戦闘(CQB:Close Quarters Battle、あるいはCQM:Close Quarters Marksmanship)に関わる戦技は、世界中の軍隊にとって秘中の秘であり、核心部分は非公開なのが常識ではあるが、今回の取材では特別に中即連の戦訓班メンバーによる閉所戦闘デモンストレーションが実施された。ここでは5人組によるルームエントリーを実演し、5名それぞれの役割については細部の解説は非公開である。娯楽作品のような派手なCQBシーンとは異なり、実際には武器を持つ者や非武装の者を瞬時に見極める判別射撃の能力が求められる。切迫した閉所にあっても、武器を持たずに抵抗する者に対しては、格闘によって制圧、捕縛する安全化までが任務なのだ。

 

邦人救出作戦を想定した訓練の一コマ

 

 非武装アンノウン(敵味方不明者)が銃を掴んで抵抗してきた場合の制圧までの流れ。戦訓班は創立以来、CQC(近接格闘:Close Quarters Combat)の開発研究に注力しており、戦術のバリエーションも豊富なはずだ。

 

 

 

 

 

現実味を増す邦人救出作戦

 

 令和4(2022)年の北京冬季五輪の閉幕とともにロシアによるウクライナ侵攻が始まり、これは地域紛争に留まらず本格的な欧州戦争の様相を呈している。欧州地域の日本人は多く、戦争被害の拡大とともに緊急的な救出作戦が必要になるかもしれないと危惧されていたが、幸いにしていまのところそのような状況には陥っていない。しかし、戦災で混乱した地域へ向かい、場合によっては武装勢力の妨害もある中での邦人救出任務という局面は今後ありえない話ではなく、在外邦人等の保護も含め各種の国際任務にも従事する中央即応連隊の出番があるかもしれない。もしそんな状況下で不安の中にある在外邦人がいたとしても、彼らの左腕に付く日の丸(日章旗)パッチを見れば心強い援軍が到来、と感じるのではないだろうか。その出番が来ないことを祈りつつ、しかしいつ生起するか分からない非常事態に備えて、中即連の隊員達は戦技を磨き続けている。

 今回の訓練や陸自新拳銃のレポートは「月刊アームズマガジン2022年5月号」でより詳しく解説している。気になった方はそちらも併せてご覧いただきたい。

 

SFP9の射撃訓練に参加し、CQBテクニックを展示してくださった中即連の戦訓班インストラクターのみなさん。常に戦技を磨き続け、高い戦闘能力と緻密な判断力を併せ持つプロフェッショナル集団である

 

企画・写真 : 笹川英夫
TEXT:神崎 大/アームズマガジン編集部
協力:陸上自衛隊 中央即応連隊、陸上総隊

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年5月号 P.196~197をもとに再編集したものです。

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