実銃

2022/05/26

【陸上自衛隊】中央即応連隊に配備された陸自新拳銃「H&K SFP9 M」【実銃】

 

陸自新拳銃「H&K SFP9 M」を撮影

 

 令和元(2019)年12月、9mm拳銃(SIG SAUER P220)の後継として採用された陸上自衛隊の新拳銃、ヘッケラー&コックSFP9の配備が始まり、陸上総隊隷下の中央即応連隊(中即連)による実弾射撃訓練の取材が許可された。今回はそこで使用されたヘッケラー&コックSFP9の細部を解説しよう。

 

陸自新拳銃の実射訓練に密着取材レポートはこちら

 

 

Heckler & Koch SFP9 M

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:186mm
  • 全幅:33mm
  • 全高:137mm
  • 銃身長:104mm
  • 重量:710g(弾倉含む)
  • 作動方式:反動利用式セミオート、プリセットストライカー
  • 装弾数:15/17/20発

※メーカー公表スペック

 

最新のオートマチックハンドガン

 

 ヘッケラー&コックSFP(Striker Fired Pistol)9は、近年オートマチックハンドガンの主流となっている最新のストライカーファイア/ポリマーフレームピストルの1つだ。ショートリコイル作動方式でブローニングタイプの閉鎖機構を備え、操作系をアンビ化(左右両側から操作可能)。マニュアルセーフティを廃して操作を簡略化しつつ、自動的に作動する複数の安全装置が高い安全性を確保している。
 平成26年(2014年)の登場当初はVP(Volkspistole=ドイツ語で「国民拳銃」)9と呼称されたが、類似名称の存在からヨーロッパおよびカナダ市場向けの製品名はSFP9、アメリカ市場向けはVP9とされた。
 陸自が採用したのはドイツのヘッケラー&コックが製造を手がけるSFP9 Mで、OTB(Over The Beach)能力、すなわち水陸両用作戦での使用が想定されたモデルである。なお、SFP9については発売中のホビージャパン別冊「アームズマガジンエクストラ 自衛隊の銃器」や、「月刊アームズマガジン」姉妹誌の「月刊 ガンプロフェッショナルズ 2022年5月号」でも詳しく解説されているので、ぜひ併せてお読みいただきたい。

 

 

スライド前部にもセレーションが施され、薬室点検(プレスチェック)する際の確実性が増している

 

スライド後部にチャージングサポート(コッキング補助用の出っ張り)が配され、高ストレス環境においても確実に操作できる

 

スライドを引いた状態。ヘッケラー&コック製品らしくポリゴナルライフリング銃身を持つ

 

弾数増加に合わせて射撃数も増加

 

 従来の9mm拳銃(SIG SAUER P220)は弾倉に9発の容量を持つが、SFP9の弾倉は15/17/20発(メーカー公表値)と大幅に増加している。それゆえ、いままでの9mm拳銃による射撃訓練に比べ、射撃数もまた増加していたようだった。
 9mm拳銃の単列(シングルカアラム)弾倉は実包を装填しやすい構造だが、複列(ダブルカアラム)で装弾数が多いSFP9の弾倉はフォロワースプリングのテンションが強く、実包装填を繰り返すと指にダメージを受ける。そのため、装填作業においてはサードパーティのローダーが使用されていた。
 操作性の高いパドル式の弾倉止め(マガジンキャッチ)と、スッと落ちる鉄製弾倉によって、SFP9は従来の9mm拳銃とは比較にならないほどスムーズで素早い弾倉交換が実現していた。専守防衛の名の下に配備されてきた自衛用拳銃(P220)から、現代的な戦闘用拳銃への更新がようやく実現したのだと実感できた。

 

スチールプレス製の弾倉は実包の装填によって弾倉が膨らむこともなく、脱着がスムーズで高い耐久性を持つ

 

従来の9mm拳銃(P220)(写真上)との比較。P220も優れた拳銃ではあるが新旧の差は埋めがたく、ほとんどの射手がSFP9(写真下)の高性能に軍配を上げていた

 

 今回の取材では陸自新拳銃だけでなく、特別に中即連の戦技訓練班メンバーによる閉所戦闘デモンストレーションを取材することができた。次回はそのレポートの一部を公開しよう。

 

中央即応連隊の閉所戦闘訓練レポートはこちら

 

企画・写真 : 笹川英夫
TEXT:神崎 大/アームズマガジン編集部
協力:陸上自衛隊 中央即応連隊、陸上総隊

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年5月号 P.192~194をもとに再編集したものです。

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