2022/05/09
【コラム】米軍特殊部隊が採用するMk48とはどんな銃?
米軍特殊部隊を支える機関銃
精鋭歩兵部隊において、機関銃は重要な意味を持つ。全自動射撃による圧倒的な火力によって、突撃する部隊を支援するからだ。筆者は今でも訓練時にドリルサージェントから言われた言葉を鮮明に記憶している。筆者がM249 SAW(Squad Automatic Weapon:分隊支援火器。以下SAW)を持って行軍中に、上り坂で移動スピードが落ちた時の話だ(他の訓練生は軽量なM16A2を持っているが、M249 SAWはM16A2より重量がある)。「飯柴! 行軍のスピードを落とすな! 歩兵部隊にとってお前の脱落はSAWの火力の脱落を意味するんだ! お前が遅れたら部隊が全滅すると思え!」と怒鳴られ、必死に喰らいついていった。
これは本当にその通りで、歩兵部隊にとって全自動射撃ができる機関銃の存在価値はあまりにも大きい。余談になるが、SAWの射手を務めると、腕力と行軍力が付く。M4カービンよりも重いので、自然と腕力と脚力を含めた総合的な体力が強化される。今回は特殊部隊の機関銃であるMk48について解説するレポートを公開しよう。
Mk48誕生までのLMG
筆者はMk46に関して月刊アームズマガジン2019年4月号で意見を述べているので、重複する箇所は基本的に書かないこととする。気になる方はそちらをチェックしていただきたい。
Mk48は、5.56mm口径のM249 SAWをベースに、7.62mm口径に改良設計された機関銃である。5.56mm口径のM249 SAWは基本的に誰でも取り扱える。だが7.62mm口径の機関銃となると、そういうわけにはいかなくなってくる。重量とサイズが格段にプラスされるため、身長が180cm以下の人間が取り扱うのは物理的に難しい。筆者が現役時代はM240Bという7.62mm口径の機関銃が部隊にあった。これが頑丈で信頼性の高い良い銃なのだが、とにかく長くて重かった。先ほど身長が最低180cmなければ取り扱えないと書いたが、実際には190cm以上の兵士に支給されていた。みなNFLのプロ選手並みの体格を持っていたが、それでも何とか持っているという感じだったのを記憶している。実際問題、行軍時などに「ちくしょー、M240Bかよ。冗談じゃねえぜ」と文句をたれていた。それはそうだろう。同じ距離を行軍するのに、いくら体格が大きくても、20km行軍であんな重い機関銃を持たされたのではたまったものではない。「自分は体格がデカくなくてよかったなあ…」と冷や汗をかいたのを記憶している。
ここまで言うと、「そんなに重いんだったら、5.56mm口径のMk46を使えばいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだ。確かにそうかもしれないが、5.56mmと7.62mmの差は、あまりにも大きい。ボクサーのパンチに例えるなら、フライ級とウエルター級くらいの差があると言っていいだろう。
前置きが長くなったが、7.62mm口径の機関銃の軽量化は、米陸軍にとって最重要課題のひとつだったと言える。前述したドリルサージェントが筆者に言ったように、機関銃の火力は歩兵部隊にとってなくてはならない存在だ。特に12人という少人数ユニットで行動するSFODAなどではなおさらである。ちなみにMk48という名称から、米海軍の要請によって開発されたのがわかる(陸軍と海兵隊が採用した銃器にはMが付き、海軍が採用した銃器にはMkが付くので、容易に判別が可能)。24名というSEALs小隊が7.62mmの火力を欲したということなのだろう。その結果、M240Bでは12.5kgあった重量は8.4kgまで軽量化に成功した。33%の大幅な軽量化だ。1.26mあった全長も1m以下に短縮されている。この辺はさすがFNHのエンジニアリングと言っていいだろう。
Mk48の特徴
前述した通り、Mk48は基本的にはM249 SAWをベースに7.62mmx51 NATO弾を使用するよう設計を変更したものである。SEALs小隊が行なうような水陸両用作戦・特殊作戦では、数で勝る敵の火力に少人数で対応を強いられる場合があるが、このような状況下でも長射程・威力を確保しつつ、少人数の特殊作戦部隊でも携行できることを求められたためであった。
基本的な構造はM249と変わらないが、いくつか複数の改修がなされている。撃った人間なら誰にでもわかることだが、M249SAWの5.56mm弾と比べて、7.62mm弾のほうが反動が強く弾頭も重い。よって射撃中のコントロール、弾薬消費を考慮した結果、発射速度は最高でも800発/分に抑えられた。銃本体が軽量化されているので、これは必要不可欠な措置だ。また給弾機構についても、M249 SAWはM4カービンのマガジンとベルトリンクの両方を切り替えて使用できたのに対し、Mk48は先行するMk46と同様にマガジンによる給弾の機能を省いており、ベルトフィードのみとなっている。
カタログなどで「M249 SAWはベルトフィードとマガジンの両方による射撃が可能」と記載されているが、これは大きな間違いだ。マガジンによる給弾はあくまで最終手段である。つまりベルトリンクで繋がれた5.56mm弾が尽きて、M4のマガジンが残っているような状況だ。これは「ブラックホーク・ダウン」のような、最悪の事態と言っていい。このような状況下に陥ったとしても、M249 SAWをマガジンで射撃することはお薦めしない。なぜならほぼ間違いなくジャムるからだ。クローズドボルト用のマガジンをオープンボルトの銃で撃ったらそうなるに決まっているのは普通に考えればわかる話だ。なので、この措置は当然であると同時に、7.62mm用のマガジンの絶対数が少ない、というのも理由だったのだろう、と推測できる。
Mk48の改良型
改良型のMk48 MOD.1では、M249 SAWと同様に全長が異なる銃身やストックの組み合わせを選択できる。例えば伸縮式のパラストックなどに交換し、取り回しや携行性を高められる。筆者も第82空挺師団時代に使っていたが、このストックは諸刃の剣だ。確かに伸縮するので降下時に邪魔にならないし、取り回しがしやすい。だが形状が取り回しを優先しており、射撃を考慮しておらず、撃ち難くなり、結果命中精度が落ちた。ただこれも慣れの問題で、使っているうちに気にしなくなったのは事実である。なのでこの辺は経験豊富な特殊部隊兵なら自己責任で選択できる。
さらに全長を短縮したいなら、銃身を切り詰めたスナブノーズ(と部隊で呼んでいた)も選択可能だ。これによって取り回しはさらに良くなり軽量となるが、今度はホントに命中精度と有効射程距離が目に見えて落ち、射撃時のコントロールが難しくなる。そして一番危惧されるのは夜間射撃時のマズルブラストだ。これが肉眼でもNVG視界越しにも大きくなる。ただ今までスナブノーズ銃身を装着したMk48の写真は確認されていない(筆者が知る限り)ので、必要性は薄いのかもしれない。
Mk48には、Mk46同様にフィードトレイカバー上にピカティニーレールが取り付けられた。これにより各種オプティクスが搭載できるようになり、命中精度が向上した、はずだった。はずだったというのは、ベルトフィード式機関銃とは本来エリアウェポンであり、ピンポイントの命中精度は要求されない銃器だからだ。下手にオプティクスなどを覗いたら、視野が狭くなって支援火器として本末転倒になってしまう可能性がある。また当然重量が増す。銃身を切り詰めてまで削った軽量化がチャラになってしまうのだ。そして最悪なのがフィードトレイカバー上の位置にオプティクスがあるため、リロードの際に邪魔になった。筆者の個人的な意見だが、4倍率の視界より、リロードが早い方が生存率が高まるはずである。言うまでもなくリロード中は射撃はできない。Mk46 / 48ともに、ハンドガード上部にレールがあるが、光学機器を載せるとしたらこの位置が望ましい。
FNHはM249 SAWシリーズのさらなる改良型をリリースし、世界各国から注目を集めている。その実銃については月刊アームズマガジン2022年5月号で軽く紹介したので、そちらも参照していただければ幸いだ。
TEXT:飯柴智亮
この記事は月刊アームズマガジン2022年5月号 P.34~35をもとに再編集したものです。