実銃

2021/09/13

【実銃】パリに眠る第二次世界大戦期の銃たち+α

 

 フランスの銃刀法ではピストルも含めて個人の銃器所持は認められているが、所持数に限りがあり新規購入のハードルは高い。しかし、一度所持許可を取った銃であれば、許可証の変更手続きは比較的簡単にできることから銃の買い替え需要が高く、フランスでは中古銃市場が活況を呈している。その中には第二次世界大戦期の拳銃など珍しい銃も眠っている。今回はそちらをご紹介しよう。

 

パリの銃砲店に並ぶ実銃ラインアップはこちら

 


 

第二次世界大戦期の銃が何故あるのか?

 

 フランスは第二次大戦が勃発するとすぐに北半分をドイツに支配され、特に1944年6月のD-Day(ノルマンディー上陸作戦)以降はフランス各地で激戦が展開された。ちなみに、筆者の住む家も大戦中のドイツ統治下にはドイツ軍将校が住んでいたという記録が残っている。そんなわけで今でも当時の銃が発見された、なんて話はよくある。元レジスタンスの方が亡くなり、遺品整理をしていたら当時彼が使っていた銃、あるいはドイツ軍から鹵獲した銃が納屋で見つかり、銃砲店に売りに出されることもしばしば。フルオート銃(ステンMk.IIやMP40など)は、廃棄されるか無可動銃に加工されて売りに出されるが、ライフル(ボルトアクションかセミオート)やピストルは登録されて中古市場に出回ることになるのだ。

 

ERFURT
Lange Pistole 08

 

 

 第一次大戦期にドイツ軍の突撃歩兵が使用したルガーP08の8インチバレル仕様(Lange=長い)で、Artillery Luger(=砲兵ルガー)の名でも知られる。当時はオプションとしてストックや32連スネイルマガジンも存在した。こちらはエアフルトが1914年に製造したレアモノ。

 

Walther
P38

 

 

 1980年代まで製造されていたこともあってさまざまなモデルが出回っているが、やはり人気は大戦中のモノ。古いだけあって状態のいい品は少ないが、このac42(1942年製)は状態もよく、ナチスドイツ時代の国章(鷲と鉤十字)の刻印もしっかり残っている。ナチス関連の扱いはヨーロッパではかなりセンシティブなため、削られていることも多いのだ。

 

Mauser
C96

 

 

 C96もかなり程度のいいものがあった。7.62mmモデルで、ストックも付属している。つい筆者も欲しくなってしまったが、50万円という価格を聞いて腰が引けてしまった。以前はもう少し程度が悪かったが、10万円前後のものを見かけた。あの頃買っておけば…。C96は9mm口径のモデルも多く見かける。実際、この時C96は4挺ほどの在庫があった。その中でもこれがダントツで状態が良かった。

 

FN
Browning Hi-Power
Commemorative Edition
1945★1995

 

 

 第二次大戦の連合軍戦勝50周年を記念して1995年に製造されたブローニングハイパワーの限定モデル。随所に彫刻が施され、スライドには戦場の情景を描写。グリップには勝利を示す「V」のメダリオンが入る。豪華なケース付き。

 


 

UNIQUEの復活

 

 FMRのオーナー・ステファンは、フランスの銃器ブランドUNIQUEの名を受け継ぎ、旧来の製品に加え新規モデルも販売している。UNIQUEは1923年に設立され、小口径のポケットピストルを主に製造。第二次大戦後は.22口径の競技銃(ピストルとライフル)を中心にラインアップしてきたが、2001年に工場が閉鎖されており、FMRが復活させたというわけだ。

 FMRはUNIQUEの名を冠した銃として、RSシリーズというオリジナルライフルを設計、製造している。こちらのライフルもいずれキチンとレポートしたいと思っている(パリ近郊では300m、ベルギーには民間人も気軽に撃てる600mレンジがある)。

 

FMR UNIQUE
RS1 2.0

 

 

 FMRがUNIQUEブランドで開発したスナイパーライフルシリーズ、RS1。「2.0」は法執行機関などへの売り込みも視野に入れたマルチキャリバーライフルだ。バレルの取り外しも簡単で、2分割して運搬可能。レシーバーやロッキングラグと噛み合う部分は柔軟性を持つ銅メッキが施されており、バレル装着時にしっかり固定され、かつボルトもしっかり閉鎖されるため、最大限のアキュラシーを得ることができるのだ。

 

UNIQUE
DES-69

 

 

 UNIQUEの代表的な.22LRセミオートターゲットピストル。競技用の左右非対称のターゲットグリップや、バレルウエイトを備えている。FMRの在庫を見ると、競技出場時の検定通過ステッカーがそのまま残っているものが多く、歴戦の勇士といった風情だ。市場在庫は豊富だが価格は下がっておらず、人気は衰えていないようだ。

 


 

 フランス国内ではコロナ対策の一環でスポーツ施設は営業できず、いつ射撃ができるようになるか分からない状況だったが、徐々に制限は解除されつつある。また、ヨーロッパ各国は陸続きで国境を越えての物流も活発なことから、入出国制限も緩和される方向だ。今後のレポートにご期待いただければ幸いだ。

 

Text & Photos:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

Special Thanks to l'Armurerie FMR Unique:https://armurerie-fmr.fr

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年8月号 P.202~209より抜粋・再編集したものです。

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