2020/10/18
【実射】ストライカー式 VS ハンマー式!! GRAND POWER実射比較!!
あのSTIが認めたほどのすばらしいトリガーフィーリングを備えた、グランドパワーのポリマーフレームオートK100。それをベースにストライカー式としたものが、Q100だ。ハンマーの有無とスライド、トリガー周りのデザイン以外は、共通化されている部分が多い。それゆえ撃ち味もK100の美点を受け継いでいることが期待される。今回はそれを検証すべく、両銃を撃ち比べてみた。
こちらはQ100の実射シーン
まずは復習も兼ねてK100から撃つ。スチール製マガジンにたっぷり9mmパラべラムを詰めてK100に叩き込み、スライドを引いてチャンバーに初弾を送る。ターゲットに向けトリガーを絞ると、とてもキレのある撃ち味が感じられ、何発か確かめるように射撃した。絞りきったトリガーをほんの少し戻すだけでリセットされ、まるでK100が「もっと撃とう、もっと撃とう」と連射を促してくるかのようで、実に気持ちがいい。
そして、いよいよQ100に切り替えることに。マガジンを装填してスライドを引いてみると、ハンマーがない分軽く感じられた。グリップはK100とほぼ同型なので、違和感はない。指をストレートトリガーに伸ばしてみると、やはり遠く感じた。ちなみに、一緒に撃ったミカエルは、Q100のトリガーの位置は気にならないという。確かに彼の指は筆者よりも長く手が大きいので、サイズの問題なのだろう。
K100はとにかくトリガーフィーリングがすばらしく、Q100に比べてマズルジャンプが抑えられているように感じた。Q100はハンマーがない分ストレートにスライドが後退し、マズルジャンプを強烈なモノにしているのだろう
K100のコンパクトモデル、P1も実射。スライドが短い分K100よりややリコイルが強いが、Q100とK100と比較した時ほどの違いはない。筆者の好みとしてはこのP1が一番しっくりきたかな?
トリガーの感触はK100に比べぬるっとしているが、トリガーセーフティは特に違和感はなかった。だがマズルジャンプは、K100に比べわずかに大きく感じられた。それ以降、確認するように射撃してみたが、間違いなくK100に比べやや銃口が跳ねるのだ。その原因は恐らく、リコイルスプリングのバネレートが大きく違うことにある。
K100はブローバックの際ハンマーを起こす力が必要な一方、ストライカーファイアのQ100はそこまで大きな力は必要ない。そんなところから考察するとK100は弾が発射されスライドが後退し始めると、ハンマーが起きる際の抵抗で力が分散されリコイルが吸収される。そしてハンマーが起きてようやくスライドが後退し始める。ストライカーファイアのQ100はK100に比べ抵抗が低く、スライドは発射時のリコイルを一気に受けて後退。一杯まで下がると、フレームにその衝撃をぶつけて止まる。それが、やや大きめのマズルジャンプを生んでしまう原因なのだろう。
結局、Q100のトリガーからは、K100のように連射を促す声は聞こえてこなかった…。
薄いスチールプレスのマガジンを採用したことで、グリップはダブルカアラムとしては比較的スリム。何発撃ってもマガジンの変形がなく、マグチェンジもスムーズだ。一方、ポリマーマガジンは強度を出すために厚くなりがちで、膨張するとマグチェンジしにくく、作動不良を誘発することもある。スチールマガジンを選んだグランドパワーが正解!
ハンマー式からストライカー式に移行したピストルの例として、SIG SAUER P320がある。ベースとなったP250がダブルアクションオンリーという変わり種であったこともあるが、P320のスライドは背が高いままで、ストライカー式の利点をあまり活かせてないように思える。一方、K100はロテイテッドバレルの採用により元々スライドの背が低いため、ストライカー式を採用したQ100でもそれは受け継がれ、アドバンテージと言えそうだ。とはいえ、K100シリーズの最大の利点であるすばらしいトリガーフィーリングが失われているのは、残念でならない。
ストライカー式はハンマー式のようにトリガーフィーリングのキレを出しにくいのは分かるが、Q100のトリガーには最後まで納得がいかなかった。グランドパワーがK100で見せたすばらしいトリガーフィーリングは一体どこへ…?
いずれにせよ、Q100とK100を撃ち比べてみて、グランドパワーのピストルは大きな可能性を秘めていることが分かった。同社はストリボーグの販売も好調で、工場の拡張を予定しているという。それだけ、グランドパワーはじわじわときているのだ。
WEB版ではかいつまんだレポートになったが「月刊アームズマガジン11月号」ではこの実射比較の詳しいレポートが掲載されている。ぜひ、お手に取ってチェックしていただきたい。
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
Special Thanks:Steiner Scenics Armourers SFX Kft.
この記事は月刊アームズマガジン2020年11月号 P.136~143よりウェブ用に再編集したものです。