2020/09/21
【実銃】ベレッタ92対決! 「92X PERFORMANCE VS M9A3」
イタリアの名門銃器メーカー・ベレッタが生み出し、M9として米軍制式拳銃の地位を勝ち得たことでオートピストルの代表格にまで登り詰めた92シリーズ。その究極進化形といえるのが、新設計の重いスチールフレームを採用したことでも話題となっているコンペティションモデル、92X PERFORMANCEだ。今回はM9の最新改良型であるM9A3と比較してみよう。
世界に認められた銘銃、ベレッタ92
ベレッタ92は1970年代にイタリア軍の制式ピストルM1951の後継として開発され、後にアメリカ軍がM9、フランス軍がPAMAS G1として制式採用。各国の軍・法執行機関(日本の警察も含め)に導入され、世界に認められた銘銃であることは、誰もが知るところだろう。その後、改良と開発が重ねられ、M9の後継となるアメリカ軍制式ピストルトライアルに向けたM9A3が登場した。
だが結局、アメリカ軍はシグザウエルP320をM17/M18として制式採用。さらにベレッタもまた、時代の趨勢に合わせポリマーフレーム&ストライカーファイアのAPXを開発し前面に押し出していたためベレッタ92は過去のピストル、レジェンドのひとつになったのかというムードが漂った。
ところが、2019年のIWAで突然ベレッタ92の最新バージョンとなる92X PERFORMANCEが発表されたのだ。今回紹介する銃が、こちらである。
BERETTA 92X PERFORMANCE
- 使用弾:9mm×19
- 全 長:222mm
- バレル長:125mm
- 重 量:1,350g
- 装弾数:15発
この銃はコンペティション(競技)シューターをターゲットとしたモデルで、従来のミリタリーユース向けモデルとは一線を画している。ミリタリー向けとなると携行性(軽さ)やあらゆるシチュエーションでの耐久性、作動の信頼性といった、ピストルにとって一番の目的である「射撃」には制約となる要素が盛り込まれてしまう。だが、コンペティション向けモデルならメーカーはこうした制約から解き放たれ、究極の射撃性能を追求できる。自動車に例えるなら、ミリタリー向けのハンドガンが悪路走破性を備えたクロスカントリービークルで、92X PERFORMANCEはサーキットにおいて究極の走行性能を発揮するフォーミュラーカーといったところだろうか。
92X PERFORMANCEのフレームは重いスチール製。スライドはブリガーディアタイプで、滑り止めのセレーションが前後に入ったことでより掴みやすくなっている
各レバーの指かけ部は大きく張り出し、操作性を高めている。サムセーフティとテイクダウンレバーはサムレストを兼ね、快適な射撃とリコイル制御に役立つ
ちなみに、一般的に9mm×19弾を使用する競技用ピストルは、リコイルの抑制や構える際のバランスを考慮して1kg以上の重量が求められる。例えば、以前に紹介したワルサーPPQ Q5SFは1,200gといった具合だ。(そのときのレポートはこちら)
M92Xの場合、全体的に設計を見直してフレームの材質をアルミからスチールに変更。スライドの厚みも増すことで重量を1,350gとし、従来のM92シリーズとは一線を画すバランスと射撃性能を手に入れることになったのである。となれば、従来のミリ
タリーユース向けM92シリーズの完成形ともいえるM9A3と比較してみたくなった。
BERETTA M9A3
- 使用弾:9mm×19
- 全 長:220mm
- バレル長:127mm
- 重 量:970g
- 装弾数:17発
M9A3はアメリカ軍で鍛え抜かれたコンバットピストルM9の進化形だ。バレルは特殊部隊での使用を考慮し、サイレンサー用のスレッドが最初から施されている。ただしサイトのデザインはサイレンサー装着時のエイミングを考慮していないようだ。また、射撃を最優先に考えた92X PERFORMANCEとは異なり、ホルスターから抜き差しする際に引っかかりが少なく、それでいて操作性に支障が出ないようにデザインされている。M92Xよりも軽く、装弾数も多い。つくづく実戦向けの銃なのだ。
ラウンドグリップが付属し、射手の好みで交換可能。グリップ下端にはミリタリーユース向けらしくランヤードリングが付いている
2挺を並べてみると92シリーズのキャラクターは保ちつつも、ディテールの違いから用途や性格が異なることはひと目でわかる。グリップは前後ともにクロスチェッカリングを採用しているが、レバー周りのデザインやラウンド形状のトリガーガードなど、ディテールが異なっているのだ。また製品に含まれるガンケースにも、それぞれのキャ
ラクターが現れている。M9A3は弾薬ケースを模したミリタリーチックな樹脂製ケースに縦に収まっている。一方92X PERFORMANCEはロック付きのアタッシュケースタイプのガンケースで、デザインはベレッタらしいエレガントなものだ。
さて、ここまで二挺の拳銃を比較してきたが、本日17時公開の後編レポートでは、この二挺のBERETTAを実射比較する。用途や性格が異なる二つの銃は、どんな手ごたえを生んでくれるのだろうか? ぜひチェックしていただきたい。
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
Special Thanks:FMR Unique Armory
この記事は月刊アームズマガジン2020年10月号 P.128~135よりウェブ用に再編集したものです。