実銃

2020/08/21

【実銃】純フランス製セミオートピストル「MAB PA-15」とは?

 

 フランスは軍事大国で武器輸出も盛んな国家。だが、実は純国産と呼べる銃器が少ない。そこで今回紹介するのは、筆者が所有するフランス最後の純国産セミオートピストル、MAB PA-15。設計は1966年と半世紀以上も前のものだ。純フランス製ピストルに秘められた魅力とは一体何なのだろう?

 


 

MAB PA-15

 

MAB PA-15

  • 使用弾:9mm×19
  • 全 長:203mm
  • バレル長:115mm
  • 重 量:1,090g
  • 装弾数:15発

 

 筆者が住むフランスは新型コロナウイルスによる規制が徐々に解除され、射撃場もようやく再開となった。そして今月、実銃レポート復活第1弾としてチョイスしたのがフランスのセミオートピストル「MAB PA-15」だ。この銃、筆者のコレクションの中ではもっともお気に入りなのだが、「月刊アームズマガジン」の読者のみなさんにはまだお披露目していなかった。その理由は、この銃が「マイナーすぎる」こと。ヨーロッパの中古銃市場でかなりレアな存在で、フランスの射撃場でこの銃を見せても知っている人はなかなかいない。今回はその銃にスポットライトを当てたいと思う。

 MAB(Manufacture d'armes de Bayonne)は1920年代に創業したフランスの銃器メーカーで、主にFNハースタルのピストルを範とするラインアップを展開していた。PA-15は1966年に登場したセミオートピストルで、当時好評を得ていた同社のPA-8(シングルカアラム、装弾数8発)のダブルカアラム版だ。マガジンを抜くとハンマーが落ちないマガジンセーフティなどは、FN HP35ハイパワーの影響を受けている。ただし装弾数はハイパワーの13発を上回る15発(PA-15の名称の由来でもある)とし、バレルを回転させてスライドの後退を遅らせるディレイドブローバックを採用するなどの相違点もある。また、ハンマーの位置が前方にあり操作しづらく、サイトが見にくいなどの欠点はあった。

 

MAB PA-15

PA-15には4種のバージョンがあり、シリアルナンバー等が打刻された右側面の刻印から判別できる。MADE IN FRANCEの刻印も微妙にズレていて、人の手によるものかもしれない

 

MAB PA-15

スライド後端のフォルムは見慣れると美しい。レトロテイストなカーブと、そこから少しだけ顔を出すハンマー。小さなリアサイトがアンバランスだが、それが味だ

 

 先ほど挙げたように、作動方式がディレイドブローバックであることがPA-15の特徴の一つだ。ロッキングシステムはバレルの回転を利用するものだがベレッタクーガーのようなロテイティングバレルとは異なる。PA-15の場合はスライドの後退が始まるとスライドにあるスリットにバレルのラグが干渉してバレルが回転し、その抵抗でしばらくの間スライドの後退を遅らせる。その間に弾頭はバレルを通過し、安全にスライドが開く。バレルは回転するだけで前後や上下の動きがなく、狙った方向からバレルが動かない分アキュラシーも高いというわけだ。ただし、シンプルブローバックに近いのでスライドのスプリングは固く、ティルト式などの一般的なセミオートピストルに比べるとスライドを引くのに力が必要だ。スライド後端のセレーション部の面積も少ないので、強めに掴まなければならない。

 

MAB PA-15

スライドが閉鎖しているときのバレル。「CAL 9mm」刻印の位置に注目

 

MAB PA-15

スライドが後退してバレルが回転し、刻印の位置が少し下がっている。つまりさほど大きく回転するわけではない

 

 フランス経済も斜陽だった時期の製品らしく削りが荒くあちこちに切削跡が残り、表面仕上げの前の下地処理が今ひとつなのが残念である。同じフランス製で今もなお愛されているマニューランMR73リボルバーのような高級モデルとは違うのはわかるが、やはり「おフランス製」の意地を感じさせる優雅さがほしかった。

 本日17時公開の後編レポートでは、PA-15を実際に射撃した様子をお届けする。純フランス製のセミオートピストルの実力をぜひ、確かめていただきたい。 

 

Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年9月号 P.142~149よりウェブ用に再編集したものです。

 

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