2020/08/21
【実射】MAB PA-15に秘められた魅力を実射検証!!
前回のレポートではフランス最後の純国産セミオートピストル、MAB PA-15を紹介した。設計は1966年と半世紀以上も前のものだが、しかしそこはフランス製。長く付き合ってみるとこれがなかなかいい。細部を見ると、褒めるところよりも欠点の方が多いくらいなのに、だ。今回は実射と共に、その魅力に迫る。
PA-15をレンジに持ち込み、いよいよ射撃だ。2本のマガジンに15発ずつたっぷりカートリッジを押し込む。全弾スムーズに入るのが心地いい。サイトは一般的なオートに比べ一回り小さく見やすいとは言えない。だが、ターゲットに自然と銃口を向けられるようなベテランシューターにしてみれば大きな問題ではなく、なんなら精密射撃だってやってのけられる。どうしても視認性を高めたいなら、フロントサイトにホワイトマーカーを塗ってやればいい。
トリガーにはキレがあり感覚をつかみやすく、グリップも良好でコントローラブルだ。ダブルタップを意識した設計ではないためトリガーリセットはやや長めだが操作しづらいわけではなく、トータルで見れば「撃っていて楽しい銃」なのだ。
スチールプレス製の15連ダブルカアラムマガジン。無理に押し込めば20発近く入ってしまうような現代のポリマー製マガジンと比べ、15発キッチリとスムーズに装填できる
グリップフィーリングは良好で、リコイルをコントロールしやすい。マズルジャンプはあるものの、気にするほどではない
マガジンは一般的に作動不良の原因となりがちで、マガジンの一つはかなり擦れて色が落ちた使い古しだったため不安だったが、結局トラブルはまったくなかった。すべてに極上な撃ち味というわけではなく、射撃がうまくなった気になるほどでもないが、バランス、手触り、ちゃんと見えるサイトと、最低限の要素は備えているのだ。
PA-15の撮影に付き合ってくれたアドリアンはグロックなどのストライカーファイア/ポリマーフレーム信奉者だったが、そんな彼がごく普通に撃ててしまう。それはPA-15が銃にとって大事な要素をちゃんと備えていることを示しているのだ。
スライドを引くのに力がいる。セレーションのないところはポリッシュ仕上げということもあり滑ってしまうからだ
射手からは気づきにくいが、発砲時の写真を見るとエジェクションポートから意外と火花が飛び出しているのがわかる。これは弾頭のパワーロスにつながる
PA-15を一言で表すのなら、曖昧な表現であることは承知だが、「味」がある銃だ。頼もしい相棒というわけでもなく、毎日に磨いてやりたくなるというものでもない。しばらくガンロッカーの中に入れっぱなしでも拗ねたりせず、射撃場に連れて行けばしっかりと射撃を楽しませてくれる。気兼ねせずに所持できる相性のいいやつ。気がつくとこいつといるのが一番楽しかったりする…。
最後の純フランス製セミオートピストル、MAB PA-15には、そんな魅力があるのだ。
「月刊アームズマガジン9月号」ではこのレポートがさらに詳細に記されている。PA-15の各部の写真やこの銃にまつわる歴史まで触れているのでぜひ、お手に取ってご覧いただければ幸いだ。
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は月刊アームズマガジン2020年9月号 P.142~149よりウェブ用に再編集したものです。