2020/06/16
【実銃】「.45ACP VS 9mm」をM1911で比較!
銃が好きなら一度は体験したであろう “.45ACP vs 9mm”口径論争。威力、貫通力、ストッピングパワー、そして弾道学上の数値。どちらが優れているかを語り出せば、もう際限のない論争になってしまう。まだ語り尽くされることのない議論に一石を投じるべく、今回はハンドガンにおいてはプロフェッショナルといえる刑事に登場してもらい、1911スタイルの.45ACPと9mmに絞って深掘りしてみた。
.45ACPと9mm口径の優劣は、100年以上も前から語り尽くされてきた話題だ。「より大きく重い弾頭を持つ.45ACPの方が威力があるので効果が高い。命中させる腕があれば、.45の方が優れている」という人も多く、現実にLAPDのSWATなど法執行機関のエリートチームの間では.45口径の1911をキャリーしているオフィサーが数多くいる。しかし、時代は移り、弾薬メーカーのたゆまぬ努力もあって、重量級9mmホローポイント弾の中には目を見張るパフォーマンスを見せてくれるものもある。
まずは両口径における事実を、簡単にまとめよう。
.45ACP | 9mm | |
口径 | 11.5mm | 9mm |
重量 | 14.9g | 9.5g |
銃口初速 | 850fps | 1000fps |
銃口エネルギー | 370ft・lbf | 326ft・lbt |
腔圧 | 21,000psi | 35,000psi |
装弾数 | 8+1発 | 最大17+1発 |
このように威力だけ見れば口径、重量、エネルギーなど.45ACPの方が勝っていることが、数値だけでも分かる。その一方で、腔圧、つまりマズル内プレッシャーや銃口初速に勝る9mmは貫通性が高く、またその小ささ、軽さから装弾数も多く、小さく軽い銃を選ぶことが可能だ。どちらにも一長一短ある。
私自身も現時点でどちらかを選べといわれれば、9mm派というしかない。もちろん.45オートは大ファンだが、重すぎ大きすぎで、練習するのに銃弾の値段が高過ぎる(50発30ドルほどもしてしまう。9mmは半分以下だし、リロードすると1/4以下になってしまう)という三重苦に陥ってしまうのである。
そこで、史上最大の麻薬押収事件を経験し、今は後進の指導に身を置く、伝説の刑事、Dean Caputo(ディーン・カプート)氏から実践的な面でこれらの違いに語ってもらうことにする。
現役時代からCOLT 1911をキャリーしているベテランの刑事だ。キャリーガンは1911以外には考えられないという。手にした銃はディーンがバックアップとしてキャリーしているエージェントモデル。もちろん.45ACP口径だ
彼が麻薬押収事件で、犯人の隠し倉庫を強襲した際もキャリーしていたのは、50発の.45ACP、そして6発の.38Special+Pだった。何故、彼が.45ACPを愛用するのか。彼はこの弾丸を「なくてはならないもの」と表現した。
たとえば、ある事件での記録では7発の9mm弾を被弾しながら、刑事にナイフで襲い掛かった犯人もいれば、近距離の撃ち合いで17連マガジン4本を撃ち尽くし、ようやくバックアップガンで犯人を仕留めた刑事もいる。基本は、確実に致命的な部位に命中させることなのだ、と彼は語った上でさらに続ける。
「この効果的な1弾という意味で、.45ACPの方が優位にあるというのが私の結論だな。最新のデータでは、どの拳銃より.45ACPのフルメタルジャケット弾が、ドアを貫通して車内にいる犯人をストップすることができたというものがある」
実戦経験を積んできた男の言葉は、何よりも重く.45ACPの制圧性を語っていた。
COLT Government Model.45ACP。いわゆる”素ガバ”というやつだ。ただしこの最新モデルからはそのフィッティングやフィニッシュに破綻がなく、かなりの精度も持っている。コルト社には今後も頑張ってほしい
.45口径の咆哮!
後編では、いよいよ実射レポートを掲載する。.45ACPと9mm、その威力の違いを詳しく写真つきで紹介しよう。
Text & Photos: Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2020年7月号 P.134-141より抜粋・再編集したものです。