エアガン

2020/04/14

「近代カスタムナイフ」の父が作り上げた“フィールドガン”

 

カスタムナイフメーカーとして伝説の存在、R.W.Loveless(通称ボブ・ラブレス)氏が、ガンスミスとして手を入れたカスタムガンが存在するのをご存じだろうか。今から約半世紀前に作り上げられた、気鋭のカスタムガンの数々をご覧いただきたい。

 


 

上は1971年当時ボブのナイフ製作上のパートナーであったスティーブ・ジョンソン氏にプレゼントされたカスタムコマンダー。下は1975年にボブが14挺ほど作り上げたといわれる“フィールドガン(Field Gun)” S&W M41カスタム

 

 R.W.ラブレス氏が亡くなって早くも10年の月日が流れようとしている。「近代カスタムナイフの父」と呼ばれたラブレスは、デザイン、製作方法いずれにおいても革新的なナイフの数々を世に送り出した伝説的な存在。現在好評発売中の『ナイフダイジェスト』でも巻頭で詳細に紹介させていただいたので、ぜひご一読いただければ幸いである。

 

カスタムナイフの世界ではレジェンドと呼ばれるボブ・ラブレス氏。ガンに対する造詣の深い彼は、1970年代から80年代前半にかけてガンスミスとしても知られた存在だった。ただし、その手によるカスタムガンは数少なく、コレクターズアイテムとして数万ドルの値段が付く

 

 1929年生まれのボブは、54年からハンドメイドナイフの製作を始めた、ナイフの世界に偉大な業績を残したナイフレジェンドなのだが、その一方で、かなり本格的なカスタムガンスミスとしての活動をしていたというのは意外に知られていない。『GUN WORLD』誌の75年3月号には「フィールドガン・バージョン・オブ S&W M41」として特集が組まれており、その詳細を知ることができる。S&WM41というのは、.22LR口径のセミオートターゲットピストルで、その7 3/8インチ(約187mm)もの長さを持つブルバレルからもわかるように、オリンピックスタイルなど、小口径競技銃としての性格を持たされていた。ボブはこのターゲットピストルを、自らフィールドガンと名付けて、軽量のオールパーパスガンに作り変えてしまったのだ。

 

“FIELD GUN”by Bob Loveless

銃身長は約4インチ。ベースとなった7 3/8インチ銃身モデルからすると、全長で5インチ以上短くなった計算になる。工作精度の高さはさすがだ

 

 ボブのコンセプトは、フィールドに出かける際、ライフルの他にこのフィールドガンを腰に吊っていき、小動物のハンティングやプリンキング用に、小型軽量ながら精度が高く、また狙いやすく安全な.22LR口径ピストルというかなり欲張りなものであった。

 

上が後年リリースされた5インチモデルだ。トリガー周りにわずかにその面影がある

 

 ボブは、このフィールドガンをS&W社に持ち込み、コンセプトそのものの売却、もしくはカスタムの下請けを請け負うという形を模索したようだが、その内にカスタムナイフの方が爆発的な人気を呼ぶようになり、このプロジェクトそのものが立ち消えになってしまったようだ。

 

M41は、バレル部分はフレームに固定されるデザインなので、その精度には定評がある。ただし、ベースガンの面影はほとんどない

 

通常分解。フロントストラップ下部のフィンガーレスト部分は、よく見ると溶接のラインが見える。手作りなのだ

 

【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】

 ただでさえS&WのM41はマイナーな存在だが、そのカスタムモデルで、しかもラブレスカスタムとなればそのレアリティは桁違いだ。オリジナルの面影はほとんどないばかりか、手作りに近い工程を経て完成するあたりは、そのイマジネーションの豊かさに敬服するばかりである。

 

Text & Photos: Hiro Soga

編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年5月号 P.116-123より抜粋・再編集したものです。

 

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