2025/02/27
無可動実銃に見る20世紀の小火器194 ベレッタ Cx4ストーム
いかにもスポーツ用ファイヤーアームズといった外観のCx4だが、アクセサリーの追加で機能アップを図ることができる。
フォアエンドの左右側面には専用のピカティニーレイルを装着し、フラッシュライトやレーザーエイミングデバイス等が追加装着可能だ。またこの左右のピカティニーレイルに加えて、フォアエンド下面にもピカティニーレイルを装備させるためのボトム&サイドアクセサリーレイルキットがあり、これを装着すれば、バーチカルフォアグリップなども付けられる。
またフロントスイベルスタッドを押し込めば、フォアエンド前面からも内蔵レイルを引き出せるため、ここにアクセサリーを装着することも可能だ。
さらにベレッタはCx4ストームのミリタリーバリエーションとしてMx4ストームを製品化した。こちらはCx4のデザインをベースにバレルを12.78インチまで短縮、全長を647mmとし、30連マガジンを標準装備してフルオートマチック機能を追加したサブマシンガンだ。
Mx4はジウジアーロデザインと謳ってはいないものの、Cx4のデザインをほぼそのまま踏襲しており、実質的にはジウジアーロのサブマシンガンといって良いだろう。
ベレッタは2000年代において、銃のデザイン全般を大きく変えようとしたように思える。それが一連のジウジアーロデザインの5機種であり、それに加えてPx4ストームや2008年に発表された新型アサルトライフルARX-160にもその意思を感じることができる。
この時代のベレッタファイヤーアームズのデザイン的な特徴は、曲線を多用したことだ。ARX-160はエレガントなデザインとは言い難いが、機能性と装飾性を融合させたミリタリーライフルだと感じる。

Cx4ストームが登場した2003年の時点において、ピストルキャリバーカービンと呼べるモデルはごくわずかだった。具体的には前述のH&K USCと、オートオードナンスのM1927 A-1トンプソン、ハイポイント9mmカービン、ルガーPC4/9カービン、これがほぼすべてだ。そのためIPSCやUSPSAといったアクションシューティングマッチにもピストルキャリバーカービンを用いた競技カテゴリーはまだ生まれていない。そのため、ベレッタはCx4ストームの機能を法執行機関に向くようにまとめ上げたように思える。
それはこの銃のトリガープルの部分だ。シングルアクションなのだが、非常にプルが重く、引きにくい構造になっている。おそらく法執行機関がこの銃を用いた時に、より事故を起こしにくくしたのだろう。
筆者は2000年代後半に実際にCx4ストームを撃って、シングルアクションとは思えないトリガープルの重さに驚いた。個体差もあるだろうが、3kg台後半でストロークも長かった。これほどまでに重いトリガーなら、マニュアルセイフティをonにしなくても安全を確保できる。
トリガープルが重いのは、Cx4ストームには通常のシアが組み込まれておらず、トリガーを引くとハンマー自体が軸ごと前方向に動き、リリースされる構造となっているからだ。このような構造にした真意は不明だが、考えられるのは、トリガープル自体を重くし、間違って引いてしまうことを防止する以外には考えられない。法執行機関のオフィサーが間違ってトリガーを引き、一般市民を撃ってしまった場合、取り返しのつかない問題に発展する。したがって彼らの使用する銃は、ある程度重いトリガープルが求められる場合が多い。
もしCx4ストームのトリガープルが、1.5kg前後で、グリップ上部にあるボルトリリースレバーがマニュアルセイフティであったなら、民間市場におけるこの銃の評価はかなり違ったものとなっただろう。あるいはグロックのようなセイフアクションを取り入れていれば、安全を確保しつつ、使い易いポリスカービンとしてもっと評価された可能性がある。
Cx4ストームという製品のアプローチは2003年という時代において間違ったものではなかったが、トリガープルをかなり重くしたという1点において、その評価は分かれる。結果として、Cx4を装備した法執行機関はあまり多くない。またこれをフルオート使用に発展させたMx4も、これを採用した軍や特殊部隊は限定的だ。
その結果、ベレッタは2017年に新しいサブマシンガンとしてPMXを製品化している。

マガジンはフラッシュフィットタイプが付いているが、Cx4用でもっとも容量の大きなマガジンは30連だ。資料にはC89282というパーツナンバーが付いているのだが、これはおそらくサブマシンガンのMx4用だと思われる。

Cx4の現在
アメリカ市場で10年間施行され続けたアサルトウエポンバンは2004年に失効し、ミリタリーライフルベースのセミオートマチックの販売が容易になった。ショートバレルドライフルを所持するには、ある程度の制約があるものの、16インチバレル以上、あるいは全長が26インチ(660mm)以上のセミオートマチックは、スポーティングファイヤーアームズと見做される。
その結果、M4カービンをベースにした様々なピストルキャリバーカービンや、SIG SAUERのMPX、CZスコーピオンEVO3などをベースにしたモデルが数多く製造されるようになった。その人気はどんどん拡大し、USPSAやIPSCにもピストルキャリバーカービンを使用する競技カテゴリーが設けられるようになっている。
一方、法執行機関はピストルキャリバーカービンではなく、5.56×45mmのアサルトライフルを多用するようになった。犯罪者がボディアーマーを身に着けている場合、ピストルキャリバーでは迅速に無力化することが難しいためだ。その結果、ピストルキャリバーカービンは法執行機関より民間市場向けが主流となっている。
Cx4ストームを民間市場向けとして見た場合、トリガープルの問題を改良、操作性を少し改めるだけで、魅力的な製品に生まれ変わるように思える。ところが2025年現在においても、ベレッタはそのような製品改良をCx4 に施すことなく、販売を継続中だ。
かつてあった.40S&Wや.45ACPの口径バリエーションは9×19mmと9×21mmのみとし、外装を従来のブラックに加えてフラットダークアースとしている。
またその製品説明には、この銃のデザインがかつて一世を風靡したインダストリアルデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロによるものであるとの記述は一言も載っていない。

全長:約754mm
重量:約2,608g(無可動実銃化加工前)
銃身長: 16.6インチ(421.6mm)
使用弾:9×19mm (他に.40S&W、.45ACP、9×21mm仕様あり)
作動方式:ブローバック
マガジン装弾数:17発(10、15、30発仕様あり)
無可動実銃
価格:\297,000(税込)
(無可動実銃はボルトが溶接されているため、ボルト操作、装填、排莢等はできません。)
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Satoshi Matsuo
Gun Pro Web 2025年4月号
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