2025/02/04
RADOM P64 Cal. 9mm Makarov 東欧のスパイ拳銃
東欧のスパイ拳銃
RADOM P64 Cal. 9mm Makarov
Toshi
Gun Professionals 2012年12月号に掲載
ポーランド
「ラドムP64! 凄い! Toshiさんは、けっこうなモノをお持ちですね」思いもかけない好反応に、自分はいたく恐縮してしまった。
ポーランド製P64ピストルの原稿を執筆する上で、その資料を編集部へ求めたメールの返事がコレだったのだ。自分はこの銃を、ずっと欲しかったワケでは決してない。また、ネタとして以前から狙っていたワケでも全然ない。たまたま寄ったガンショップで目に留まり、その値段の安さと、ポーランドという単語と、9mmマカロフという口径と、PPK っぽいフォルムに引っ張られ、出来心でうっかり買ってしまったというのが正直なところなのだ。そして、買った以上は記事にせねばと資料を探したら、床井さんの『オールカラー軍用銃辞典』に記述があるらしいということで編集部へ「どんな事が書いてあるんでしょ?」とお伺いを立てたメールの返事が冒頭の一文だったのである。
こーゆー場合、普通なら「でしょ、P64凄いでしょ。探すのに苦労したんですよー」くらいの事を言っておけば、自分の株も多少は上がるし記事にも箔が付くってもんでしょうが、どーも根が正直な人間みたいで(自虐的自画自賛?)。だから本当に、恐縮で。
ま、舞台裏の種明かしは大概にしてだ。床井さんのその本に寄れば、このP64は社会主義時代のポーランド陸軍が制式ピストルとして使用していた軍用中型DAオートなのだそうだ。当時は、旧ワルシャワ条約機構が定めた制式口径の9mmマカロフ弾であれば、銃の選定は加盟各国の裁量に任されており、ポーランドが独自に開発を進めて造り上げたらしい。性能的には旧ソビエトのマカロフ拳銃に類似、というよりも、そのマカロフが参考にしたワルサーPPの影響を強く受けたピストルなのだという。
残念ながら、開発のバックグラウンドについては、床井さんの本にも詳しい記述はさすがにない。何しろ社会主義時代の代物、突っ込んだ資料はなかなか出ないのだろう。しかし、それでも、自分がしつこくあっちこっち調べたら、以下のような記述が見つかった。

“ この銃は、50年代の終わりに、新制式銃の選定を目指してポーランド陸軍のオフィサーらによってデザインされた。”
“当初、プロトタイプはCZAK(デザイナーらのラストネームの頭文字を取った)と呼ばれ、2つのモデルが存在した。1つはModel M(ポリスタイプ。口径380ACPの6連発)で、もう1つはModel W(ミリタリータイプ。口径9mmマカロフの6連発で長銃身)。プロトの段階ではスライドストップが露出していた。”

“61年、CZAK のModel Mを9mmマカロフ口径にリチャンバーしてスライドストップを内部に納めたものが、それまでのトカレフTTに代わってポーランド陸軍および警察そして政府の安全保障機関の制式銃に採用された。制式名称は“9mm pistolet wz 1964”。生産は60年代半ばにラドム造兵廠にて開始された。”
“70年代に入ってから、トリガーメカとハンマースパーの大型化の改良が施された。”
等々といった具合。

CZ75のように優れた軍用銃であれば、皆が躍起になってバックグラウンドを調べもしようが、そんな盛り上がりはイマイチ見られない点からして、多分その程度の銃ということに評価が定まっているのかも。
自分が店頭で出会った際のイメージは、ずばり「ポーランドのスパイ拳銃か! ?」コレであった。

見るからにコンシィールド。時代を感じさせる総鋼鉄製のボディ。何となく頭の中にサスペンス・ストーリーのようなものが沸々と沸き始め…そーゆー観点でついつい銃を眺めてしまう単細胞の自分がそこにいた。
大体、ポーランドと聞いて自分が思い浮かべるものといえば、第二次世界大戦へと繋がった1939年のドイツのポーランド侵攻、社会主義国家、ワルシャワ条約機構…何となく穏やかでない。

また、ポーランドの銃と聞いて思い浮かべるのも、ラドム1935にWZ63サブマシンガン…何となく謎めいている(ラドム1935は割りと有名ですけどね)。
ドイツとロシアに挟まれた東欧の国、社会主義国として旧ソビエトの強い影響下にさらされたポーランド。そんな謎めいた危険っぽいイメージの国(すみません。あくまでも筆者個人の印象です)が生んだサイドアームズP64…想像を掻き立てるには充分過ぎるお膳立てと言えるのではなかろうか。

ラドムP64
勝手な妄想で衝動買いしたこのP64だが、登録期間終了後に店へ引き取りに行ったら、正直、熱が少々冷めていた。
全体的におっとりべったりの装い。仕上げはそこそこだが、いわゆるシャープさが感じられず、PPKに似てる分、余計に野暮ったい…やっぱしカッコ悪かったかな。ネタ用とは言え、少々意気が失速気味。

とりあえず、油でギトギトなので一通り掃除をしてみる。酸っぱい臭いが辺りに漂う。「コレがポーランド油の香りか」と、冷めたはずの熱が再びぶり返して、遥か東欧の国へと思いを馳せる筆者。銃のあちこちに浮かぶプルーフマークも、ヨーロッパ感覚をぐぐっと盛り上げてくれる。
聞けば、シュワルツネッガーの映画『レッドブル』にチラホラ出てきた小型拳銃がコレだったのだそうだ。自分のスパイチックな妄想も当たらずとも遠からじと言ったところか(あちらはスパイ映画というよりもポリス映画でしたが)。
お値段は225ドルだった。予備マガジン1個と粗末なクリーニングロッドが1本付き、スポンジを敷いたダンボールの箱に入って説明書などは皆無の状態。
