2025/02/02
SIG SAUER P220 Super Match SA Only 5 inch
SIG SAUER P220
Super Match
Text & Photos by Terry Yano
Special thanks to Mr. Tim Butler at SIG SAUER,
Tsuki-san for letting me feature his P220 Super Match,
and Nelson Vaugher for letting me use his land for shooting/testing
Gun Professionals Vol.2 (2012年5月号)に掲載
5インチトップエンドを備えたシングルアクション・オンリーのP220
競技用のSIGハンドガン?
SIG SAUSER(英語読みではシグサワー)のハンドガンは、ミリタリーやローエンフォースメント(LE)機関用サイドアームとしては確固たる地位を保っているが、競技用として認識されることは稀だ。
製造コストを低く抑えるための多くの工夫が凝らされ、安全性を確保しながら操作の簡略化を目指してデザインされたP220は、近代SIG SAUERデューティガンの元祖となった。軍用銃らしからぬ構造と品質で高い精度を誇るP210とはまったく性格が異なり、確実な作動を期待できる半面、精度が重視されるタイプのハンドガンマッチには向いていない。

かつて、フレーム先端にウェイト/コンペンセイターを備えたP220 Sportというバリエーションが存在した。2005年度版のカタログにはP226 Sportと共に掲載されており、アジャスタブルサイトや延長されたレバー/ボタンなども通常モデルと異なるが、外観上の一番の特徴はステンレススティール製フレームのダストカバー部に固定された大きなバレルウェイト/コンペンセイターだ。ドイツの工場でハンド・フィッティング/チューニングが行なわれ、マッチグレードバレルが組み込まれたという。

実際に撃ったことがないので、精度に関してはコメントできないが、手仕上げ/チューニングが行なわれているということから、トリガープルは通常モデルよりスムースであったと想像できる。しかしながら基本メカニズムに変更はなく、ホルスターに納める場合はディコッキングレバーを操作してハンマーを下ろさなければならない。初弾発射時にはストロークの長いダブルアクション(DA)トリガーを引かなければならないということだ。
これらSportモデルは、特定の競技向けに設計されたわけではない。初弾装填後、ハンマーをディコックすることなく射撃が開始できるようなローカルクラブの小規模マッチなどで活躍できるように、撃ちやすさと精度を高めたものといえる。プリンキングまたはコレクター向けといえば言いすぎだろうか。

SIG SAUERが本格的に取り組んだ競技用ハンドガンは、P226 X-Fiveシリーズだ。IPSC(International Practical Shooting Confederation)マッチを意識してデザインされ、それなりの成功を収めている。STEEL CHALLENGE等ハンドガンマッチやシューターへのスポンサーシップも行なうようになったSIG SAUERは、各種マッチ会場でのアピールも積極的だ。

競技用として開発されたP226 X-Fiveシリーズとは別に、“P220 Super Match(スーパーマッチ:SM)”というモデルが存在する。現在2種類だけラインナップされたP220マッチシリーズのひとつで、いかにも競技用という名称の割には、どことなくタクティカルな仕様を持ったハンドガンだ。
無骨なオリジナルのP220からは想像できないくらいカラフルで美しいスタイルを持つP220SMのインパクトは大きいが、生産される数量が少ないので、アメリカでも知る人は少ない。今回は、快く取材に協力してくださったオーナーのTsukiさんに感謝しながら、P220SMをチェックしてゆこう。

SIG SAUER P220
SIG SAUERのモダンデューティハンドガンの元祖、P220は息の長いモデルで、9×19mmバージョンがP75として1975年にスイス軍に採用された。我が国の自衛隊も、国内でライセンス生産されたものを1982年から使用している。
アメリカでは1970年代後半に、ブラウニング社が代理店となって“BDA”の名称で発売されたが、プレス加工で成型されたスライドやアルミ合金製フレームへの不信感、現在「トラディショナルダブル・アクション(TDA)」と呼ばれる初弾DA /次弾以降はシングルアクション(SA)というトリガーメカニズムやグリップ下部に設けられたマガジンキャッチなど、1911系とかけ離れた仕様が足を引っ張り、当時はそれほど人気が出なかった。


しかし、ミリタリーやLE機関での使用を意識してデザインされたP220の信頼性や実用精度については、徐々に評判が広まってゆき、アメリカでも知名度は高まってゆく。基本デザインを踏襲したバリエーション展開が行われ、9×19mmで複列弾倉を備えたP226は、米軍サイドアーム・トライアルでは最終選考でベレッタM92Fに制式拳銃の座を譲ったが、後に海軍SEALsに採用された。コンパクトなP228もM11として米軍に採用されたことなど、本誌読者の皆さんなら周知の事実であろう。
SIG SAUERホームページの製品紹介には多くのカテゴリーが存在するが、デューティ/キャリー/コンパクト/マッチを合わせると27種類のP220がリストアップされていた。いつこんなに増えたのだろうと首を傾げたくなるが、根強い人気を物語る一面だ。


シングル・アクション・オンリーのP220
初弾装填後、ディコッキングレバーを操作して安全にハンマーをリバウンド位置までダウンさせると携行準備が整うのは、P220から始まったSIG SAUERデューティハンドガンのアイデンティティともいえるメカニズムだ。オートマティック ファイアリングピンブロック(AFPB)などのインターナルセイフティとストロークの長いDAトリガーの組み合わせで、暴発する可能性は極めて低い。
マニュアルセイフティを備える必要をなくし、発射前の操作を簡略化したことは、ミリタリー/ LE方面で高く評価された。後にユニークなDAK(Double Action Kellerman)トリガーを備えたモデルも登場するが、マニュアルセイフティを備えずにDAトリガーを引いて初弾を発射する基本的コンセプト受け継がれている。


デューティガンの新たな方向性を打ち立てたともいえるP220に、マニュアルセイフティを備えてコック&ロック(Cocked & Locked、ハンマーを起してマニュアルセイフティをオンにすること)が可能なSAオンリー(SAO)のバリエーションが追加。された時には驚いたものだ。
当時はどうしてそんな仕様を出すのだろうかと不思議に思ったが、今回の取材で得たSIGからの情報によると、P220のSAOシステムは本来、MEUSOC(Marine Expeditionary Unit Special Operation Capable:海兵隊遠征部隊特殊作戦対応部隊)用ハンドガンとなるべく開発されたとのことだ。スペックの改訂によってP220は候補から除外されてしまうが、SAOシステムの研究は継続され、2006年に一般向けに発表された。
