2025/01/25
SIG SAUER P226 NAVY ネイビー・シールズのサイドアームに新型E2グリップを装着
SIG SAUER
P226 NAVY
By Akira
Gun Professionals Vol.3 (2012年6月号)に掲載
新製品開発に意気込むSIG
またもやSIGから膨大な数の新製品達が今年も発表された。その中で際立った特徴を持つごく限られたモデルだけを本誌のショット・ショー特集内で紹介した。それらを全て出演させようと張り切ったらページ数が1.5倍に膨らんでしまうくらいの数が存在していたのだ。
カタログにはNEWの文字がやたらめったら記載されていて、何がどう新しくなったのかは、一瞬見ただけでは判別できない。それらの大半は基本設計を変えず、表面仕上げ、グリップ、サイトなどを一部分を変更した程度のマイナーチェンジ品なのだが、各モデルごとに同じ種類をラインナップする為、このバリエーション大合戦にさらに拍車をかけているという結果だ。
加えて特殊ロゴや刻印入りの限定品まで含めると、もうハンパじゃないので毎度SIGのブースにやってくると困惑してしまうし、例えSIGの大ファンであっても頭で全部整理して覚えるのは大変だ。
しかし新製品という扱いを受ける限り、取材する側としても一通りチェックしなくてはならない。どれがSIGとして業界にイチオシしたい商品なのかが判らないので、ブースにいる社員に意見を求めるのだが、結構悩む人もいるし、聞く相手によっては意見が随分違ってくる。改良(変更)部分が地味すぎて特徴を強調しづらいことも多々あるので、社員の苦労も想像できる。
しかし、SIGは元々こんなアグレッシブな会社だったのか?、と過去を思い返すと、10年ちょっと前なら堅実な製品の展開を進める、ややお堅いメーカーというイメージだった。こんなにも製品数を増やして消費者を混乱させるようなことはしなかったし、カラフルでミーハーなモデルを加えるなんて到底考えられなかった。
そう思って今年のショット・ショー取材中、SIGの社員に質問をぶつけてみた。
「確かに我が社のマーケティングはこの10年くらいを見ても随分と変わりましたね。全ては市場のニーズの変化に柔軟に対応していった結果だと考えてください。世界中の国々の軍・警察と契約を交わし納入しておりますが、何も彼らだけを相手にビジネスをしているわけではありません。
それとスイスのSIGが銃器部門を売却し、ドイツ……特にアメリカ側のSIGが率先して新製品開発を進めるようになったことで、よりアメリカ市場の動向に新製品開発の矛先が向きました。例えばアメリカでは女性ユーザーがかなり増えましたし、それならば赤やピンクの派手なモデルも製品に加えよう……という風に発想を切り替えました。
あと銃の所持をより一層楽しんでもらえるように販売しているアクセサリー類も増えました。SIG製品は高いというイメージが強いですが、高級なものばかりではなく軽い趣味で射撃を楽しむ人達も大事にしてます。その結果、22口径の銃やコンバージョン・キットも増えましたしね。とにかくバラエティが豊富なのが、今の我が社の強みとなっているのです」
という回答だった。
安定した人気を誇るクラシック・シリーズ
今回のショーでも印象付けられたのが、金属フレームのハンドガン人気に衰えが見られないことだ。マイナーチェンジの新製品の大半はこれら金属フレーム達だ。他社と同じようにポリマー・フレーム・オートの製品も力強くプッシュしてはいるが、従来の金属フレーム(1911系を除く)達をクラシック・シリーズ・ピストルと呼び分け、主力製品として力を入れ続けている。

S&W、スターム・ルガーのように売れ行きが急激に下がった金属フレーム達をバッサリ切り捨て生産中止にしてしまう会社が多い中、SIGは金属フレームの従来製品でも安定した人気を維持している点は注目すべきことだろう。
クラシック・シリーズは市販の売り上げも好調なことに加え、軍・警察から大きな支持を得ていることが勢いを落とさない大きな理由となっている。警察官の間で大人気のモデルがP229だ。

そこで今年はP229のマガジンも使用できるサブコンパクト版のP240が発表された。業界では1911系を除くと金属フレームの新製品が激減しているが、このことでもSIGの金属フレームの人気の根強さが改めて証明されたということになる。

同様にフルサイズのP226の勢いも陰りを見せていない。タクティカル系のエンハンスド・エリートや競技用のX-Fiveなどがガッチリ脇を固め、今年はスコーピオンといった全身のカラーリングをダーク・アース・ブラウンにした特殊モデルまで紹介している。

そして今回注目の新製品の一つとして紹介したのが、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズ(NAVY SEALs)に納入しているP226に可能な限り近づけたMK25だ。
P226は80年代に行われた米軍サイドアーム・トライアルの最終決戦でベレッタに敗れたものの、米海軍の精鋭、シールズによって長年使用されているという実績が今もSIGの自慢の種になっている。アメリカを守る存在である米軍制式採用銃というだけでも大きな宣伝効果が得られるが、米軍最強とも謳われる特殊部隊が使用しているというストーリーでさらに株を上げている。

そのシールズといえば昨年ウサマ・ビンラディンの隠れ家を強襲し殺害、作戦を成功させたことで一躍全米のヒーローとなり、世界中にその名を知られている。
シールズ納入品と同仕様の市販P226…… というと、既にP226 NAVYというバリエーションが何年も前から存在しているのでは? と気付いた読者もいると思う。
確かにそうだがMK25は後継モデルとして現在納入されているモデルにより近づけたものだ。最新モデルの方が話題性はあるが昨年からネイビーを取材用に準備していたところ、その前にMK25が発表されてしまったという事情があった。とはいっても細部の差があっても基本的にはネイビーもMK25も同一製品だ。

さて、前置きが長くなってしまったが、今回はP226 ネイビーに新種のアクセサリーを組み合わせた、Gun Professionals誌独自(なんていうのは大袈裟ですが)のバリエーションをフィーチャーしてみた。

Pシリーズの歴史
定番の流れだがPシリーズの歴史を簡単にたどってみよう。1949年にスイス軍に制式化されたP210の後継サービス・ピストルの開発が進められ、1975年にP220が登場した。
昨年P210レジェンドとしてまたも復活したP210は傷だらけにでもしたら涙が止まらない程の高品質な軍用ピストルであった。その反面、切削加工が集中し製造コストの高騰が問題化していた為、P220では正反対に生産コスト削減を重視して設計された。

製造しやすく、そして軽量化するためフレームをスチールからアルミ合金に変更。DA(ダブル・アクション)トリガーが追加され、スライドは厚手のスチール板をプレス機で折り曲げて成型し、ブリーチ・ブロックを二重のロールピンで固定するという低コスト製造方式に切り替えた。こうした新発想のアイデアを数多く導入したことでデザイン・コンセプトがP210とは大きくかけ離れる事となった。

そしてP220にはオート開発史に残る新発想が加えられた。エジェクション・ポートをロッキング・リセスとしても同時に利用し、構造と加工工程を簡略化したブローニング・タイプのショート・リコイル・システム、そして初弾のDAトリガーの安全性を高める事で外部セフティ・レバーを完全に省いてしまった新たな設計思想だ。

後者は内蔵式のセフティ機構(トリガーを引いている時にだけオフになるオートマチック・ファイアリング・ピン・ブロック・セフティ)によって落下暴発事故などの意図せぬ発射を防ぐことが可能になった為、初めて導入できたものだった。この二大特徴は以後のオート開発に大きな影響を与え続けている。

P220はスイス軍にP75として制式化されたが、中立国の立場から武器輸出の壁にぶち当たり、当時西ドイツ側にあったJ.P.Sauer&Sohn社に製造を任せ、両者の名をとってSIG SAUERという名で販売・輸出が開始された。アメリカへはブローニングが輸入・販売を担当しBDAとして発売されたが、時代を先行し過ぎた設計によって市場から拒絶され、出だしはかなり苦戦した。

70年代に対テロ強化策として西ドイツ警察による新型銃の選定試験が行われた。SIGはP220を小型化し、グリップ底部のレバー式からトリガー・ガード付け根のボタン式にマガジン・リリースを変更したP225を開発。試験に合格しドイツ警察にP6として採用された。
