ZEV Technologies GLOCKWORX
競技からタクティカル系まで 高品質なカスタム・グロックを量産するメーカー
by Akira
Gun Professionals 2012年10月号に掲載
カスタム1911をビートしたグロック
去る6月16~17日の間、スティール・チャレンジ(以下SC)の西海岸特別マッチがLA郊外のパイルーで開催された。今年から世界選手権の開催地をフロリダに移すSCだが、かつて同大会のオーナーであったマイク・ダルトン、常連シューターのジム・オーヤングらの呼びかけで、フロリダまで遠征はできないがSCを毎年楽しみにしている地元や近郊のシューターの為、南カリフォルニアの特別マッチを執り行うことになったのだ。
これまでのような世界選手権ではない為、プロ選手は激減したが日本からも多数のシューターが参加し、地元シューター達と大いに盛り上がった。我々ガンプロ・チームも参加したので、いずれその様子をお届けしたい。
GWカスタムG34を撃つボビー・マクギー
様々なデザインを持つGWのカスタム・グロック達。競技用のみならず、コンシールド・キャリー系、タクティカル系のカスタム・グロックの製作も行っている。刻印のゼヴ(ZEV)とはゼヴ・テクノロジーズの事でGWのもう一つの社名。基本的にはどちらのブランドで呼んでも構わないそう
チーム・グロックの現キャプテンであるKCエルセビオが歴代メンバー御用達であるS&Jカスタム製G17ベースのオープン・ガンで参戦。1911系を使うシューター達をぶっちぎって総合タイム84.14秒で優勝した。世界選手権であったなら他のプロ選手との接戦で簡単には優勝とはならなかったかもしれないが、このタイムなら優勝の可能性も見えてくる。今年のSC世界選手権で再びグロックを撃つKCの活躍がますます楽しみになってくる結果だった。
KCはグロックに参加するまで1911系のレースガンを使用し、過去3度の優勝経験を持っている。グロックに変えてもその勢いは変わらない。結局、何を使おうがシューターの力量次第であり、誰もが何十年と盲目的に信じ込んで来た「1911系でなければ優勝争いは出来ない」というイメージを覆すのには十分効果はあった。
世界中からカスタム銃の注文を抱えるGW。ご覧の通り金庫は大量のグロックで埋まっている。ヨーロッパではIPSCの盛んなイタリアやフランス、東南アジアではタイやフィリピンなどが主な輸出先だとか。写真のレイ(Ray Wong)はアレックスの相棒であり射撃仲間。マーケティングなどを担当している
社長のアレック・ウォルフ(Alec Wolf)。IT業界出身で趣味が高じてグロックの専門のカスタム会社を経営するに至った
アレックの最大の強みはCNCを自在に操れること。三次元CAD設計ソフト、ソリッドワークを使いあっと言う間に思い描いたデザインを形にしてしまう。仕事が面白く毎日夜遅くまでオフィスに入り浸っている
約2か月前にベンチュラから近所のオックスナードに移転したばかり。現在フルタイムの作業員が8人、常勤のガンスミスが3人、その他パートタイムのスタッフもいる。本気で競技に取り組むシリアス・シューター(特に3ガン・マッチ)が多く、「銃作りや金属加工が出来る連中がガンスミスになったのではなく、シューターが後で加工技術を学んでやっているのが我が社のスタイルだ」と説明された
前キャプテンのデイブ・セヴニー氏も2010年の世界選手権ではほぼ同型のカスタム・グロックで2位につけ、グロックがレースガンのベースとして十分なポテンシャルを持っている事を証明してくれた。
そのKCは現在、S&Jカスタムから密かに別のカスタム・メーカー製のグロックに乗り換えようと計画しているという情報をキャッチした。それがLA郊外にあるグロック・ワークスのカスタム銃だという。
アレックのオフィスには色んな形状に加工した試作品のスライドがあった
開発途中のコンペンセイター(材質はアルミ合金やチタン)
何でも自社製造するのではなくメーカー純正品を加工したパーツも少なくない
新旧を含め、ほぼ全てのグロック純正パーツをストック。グロックに関する知識は当然ながら卓越している
競技とグロック
オーストリア軍サイドアーム・トライアルに向けて開発され、P80として1982年に制式化されたグロック17は、フレームや内部パーツの多くをポリマー化し、単純な構造、少ないパーツ、高い信頼性、軽量、低価格などの点を強みにして軍・警察用のみならず一般市場でも大成功した。
そのグロックがいつから競技の世界に根を下ろしたのか? 競技銃なら市販銃よりも高い命中精度が求められ、沢山撃つので高い耐久力も必要条件となる。そのため強度のあるスチール製フレームが理想的だと信じ込まれてきた。
ゼヴ・テック・スピード・フィード・マグウェル。材質はアルミ合金、真鍮、ステンレスの3種類。グリップの穴に挿入する固定用インサートも重量アップに効果があり2種(49gと77g)ある。パウダーコートされた黒と磨かれたシルバーから選べる
セヴ・リコイル・スプリングはカラー・コードで種類を確認できる。青は通常の9mm×19用の12ポンド、赤が各口径のホット・ロード用。3,000発撃つごとに交換を勧めている。金属製ガイドロッドはステンレスと重量をアップさせるタングステン製があり、タングステン製の各種ピンもある
セヴ・エクステンデッド・マガジン・リリース。CNCで削り出されたアルミ合金製。右側はGen4用のチェッカリング入り
グロックのポリマー製フレームというのは正反対の存在だが世の中分からない。ポリマー素材には想像以上の耐久力がある事が判明したからだ。
グロックはアメリカに代理店を設立し、数年後に最初の市販向けバリエーションとして約6インチ銃身のG17Lを加えた。G17のバレルとスライドを約1. 5インチ延長、アジャスタブル・リア・サイトを取り付けた標的射撃モデルであった。
アレックがトリガーの開発時に同時に進めていたのがスケルトナイズド・ファイアリング・ピン。肉抜きし、軽量化する事でロックタイムが短縮できプライマーをしっかり叩けるように先端部も延長され、テンションを弱めたストライカー・スプリングとの併用でも不発が起こらないようになっている
これがGW社を一躍有名にしたフルクラム(fulcrum)・トリガー(現行型は2世代目のV2フルクラム)。パーツ単位でも販売されているが丸ごと交換するキットでも購入可能。トリガー・バーやトリガー・ハウジングは純正パーツを加工したものを使用し、自社製の金属製(アルミ合金の塊から切削加工、限定生産でステンレス製もある)トリガー等を組み合わせている。微調整可能な金属トリガーのV2コンペティション、USPSAプロダクション部門やIDPAのSSP部門用に純正(ポリマー製)トリガーを組み合わせたスタンダード・コンペティション、公的機関向けに調整スクリューを省き純正と同じ可動範囲を持つデューティLE、調整機能は無いが可動範囲を切り詰めてあるタクティカル・デューティから選べる
トリガーは純正よりも平らな面が広く、前面にあるセット・スクリューをレンチで回転させる事でトリガーのプリ・トラベルを約半分に切り詰める事が出来る
しかし「競技用オートの選択肢は1911系」というイメージは覆せず、G17Lは全然相手にされなかった。カスタム・パーツもなく専門のガンスミスも見当たらなかった事も発展を妨げた。しかしグロックは90年代初頭にGSSF(グロック・シューティング・スポーツ・ファウンデーション)を設立。地道に競技にテコ入れし全米にグロックを使った簡易的なアクション・シューティングを流行らせ、現在もそれは継続している。これがグロックを競技の世界へと先導するのに一役買ってくれた。
背面からはオーバー・トラベルを10~20%の範囲で自由に調整・短縮できる。トリガー・セフティには赤、黒、金もあり、グロック純正より3倍も幅広く設計されていて安全性が強化されている
いまだ人気のGen3用以外にもGen4用(右側)もある。色の違うジップタイで固定し、それが何のモデル用なのかを識別している。例えば紫はGen4の9mm×19用、青は初期生産型のGen3の9mm×19用、緑はGen4の40S&W口径用…などといった具合だ
グロックのトリガーの重さやスムーズさを決定する肝となっているのがコネクター。改良を重ね、今年はリセットの切れ味を追求した第4世代目のゼヴ・テックV4レース・コネクターに進化。レーザーでカットした自社製でトリガー・バー先端と接する表面に4つの穴を開けて摩擦を軽減し、同時にグリースがそこにたまるようになっている。純正グロックのトリガー・プルは大体3.5kgくらいだがGW製スプリングと組み合わせる事で2ポンド(約900g)まで軽くする事が出来る
チューンしなくてもグロックがそれなりに競技に使える事が分かってきてからIPSC、SC、IDPAなどの試合に使用者が増え始め、グロックが競技を身近な存在にしてくれた。1911系レースガンに手を出すと高くつくが、グロックなら箱出し状態からスタート出来る。
カスタム・パーツ屋も出現したが、本格的に使える商品が登場したのは2000年代に入ってからだ。誰が初めてグロックを本格的な競技用としてカスタム加工をやり始めたのかは分からないが、草分け的なガンスミスとしてネバダ州のジーン・シューイ(Gene Shuey)が知られている。
フレーム関連のパーツ加工では手作業が多い。写真は純正トリガー・バーを外注で磨かせた後、グラインダーで一部を削り溶接しやすくするところ
トリガー・バーに溶接し肉を盛り付ける
ジーンは「99年頃くらいからカスタム・グロックを作り始めたがグロックを競技用に…だなんて周りから間抜けだと思われていたよ」と当時の事を語っていた。
グロックは設計がシンプルでパーツ数も少なく、簡単な作りでチューンは容易だ。そして樹脂製フレームの加工は金属に比べれば超簡単で家庭用工具でもガリガリ削れてしまう。
溶接完了後(下)、これを加工して出っ張りを作りトリガーのプリ・トラベルを純正の約半分に短縮させる。加工部分はトリガー内部に隠れてしまうのでUSPSAプロダクション部門やIDPAのSSP部門でもルール上、使用可能になる
トリガー・キットの組み立て工程。ロックタイトでセット・スクリューが簡単に緩まないようにしているので調整前にライターであぶって熱する必要がある
グリップ加工は他の工房と変わりなくガンスミスの手作業によって完成する
2005年にジョージア州のS&Jカスタムが本格的なグロックのオープン・ガンを開発し、以後チーム・グロックのメンバーが使用し大きな大会で好成績を収め、カスタム・グロックの存在が競技の世界でも堂々と市民権を得た。その後アイダホ州のローン・ウルフ社(Lone Wolf Distributors)がスライド、フレームの製造を開始し、ヴァージニアのCCFレースフレームズ(CCFRaceFrames)が金属フレーム製作するなど競争が加速していったがLA郊外にも新たなメーカーが登場した。
Gen3から追加されたグリップのフィンガー・グルーブに沢山の人達が不満を頂く。注文の多くはこの山を削りを落とすところから始まる。写真はハイ・グリップ出来るようにトリガー・ガード付け根をえぐっているところ
トリガー・ガードの下にダブル・アンダー・カットをつけることでサポート・ハンドもより高い位置にもってこれる。ここではフライス盤を使用して加工する
先端にチェッカリングが付いたホット・アイアン・ツールを加熱し押し当てながらチェッカリングを追加するステップリング・ジョブの様子。USPSAプロダクション部門用に形状を変えずチェッカリングだけを施すプロダクション・ステップリング・ジョブもある