2025/01/25
Manurhin MR73 357 Magnum
Révolver pour les Force Spéciales Françaises
Manurhin MR73
357 Magnum
特殊部隊のオフェンシブリボルバー
Photos & text by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Professionals 2012年10月号に掲載
雑誌掲載時、Jean-Francois Dupontのペンネームを使用しました

GIGNはMR73と共に...
以前の記事で紹介したことのあるマニューランは競技用のリボルバーだった。競技用のベースになるくらい精度がいいというわけだが、今回はマニューランがフランス特殊部隊GIGNのシンボルであり、かつてはフランスのローエンフォースメントで活用されたリボルバーとして紹介したい。
フランスの特殊部隊であるGIGN(Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale:国家憲兵隊治安介入部隊)は日本ではあまり知られていない。だが、彼らは人質救出作戦、並びに対テロ作戦を専門とする精鋭中の精鋭で、全員が空挺降下とダイビングの資格を持つ。“やったことがある”のではなく、“特殊部隊としての資格”を持つのだ。またGIGNには選任のスナイパーはいない。なぜなら全てのメンバーがスナイパーの資格を保有しているからだ。作戦に応じて、スナイパー役はいつでも誰でも担当できる技量を持ち合わせているのだ。


Manurhin MR73 5-1/4inch |
GIGNは、英国のSASと並ぶ特殊部隊として評価されている。彼らは現在(2012年時点)でもアフガニスタンで作戦遂行中だ。SASやアメリカ軍のSEALsやデルタフォースとも合同訓練を実施しているし、日本のSATに対しても訓練を行なった実績がある。射撃を重要視するGIGNは、当然装備する武器の選定も慎重だ。GIGNの創設者の一人であるムッシュ・クリスチャン・プルトゥーに対してインタビューを行なったことがあるが、その時、なぜGIGNはマニューランを選んだのかを聞いてみた。
GIGNの設立は1973年、同じ年に誕生したフランス製のリボルバー、マニューランMR73は当時のS&Wやコルトのリボルバーに比べ、格段に高性能であることがトライアルで判明したという。MR73のバレルは、ファクトリーリボルバーで唯一コールドハンマーフォージング(冷間鍛造)で加工されており、丈夫で精度が高かった。そして通常の.357マグナムよりやや火薬の多い強装弾を撃ち続けてテストした結果、最後まで壊れなかったのはマニューランだけだったという。彼らは最強の特殊部隊にふさわしいリボルバーとして、最強のマニューランを選んだわけだ。
25mでワンホールを撃つために、GIGNはMR73の中から5-1/4インチバレル仕様を選んだ。そしてGIGNでは入隊の儀式として、先輩が新入りの胸にぶら下げたクレーをMR73で撃つ。もちろんボディーアーマーを身に着けた状態での話だ。



GIGNの装備の中で特徴的なマニューランはスコープとバイポッドを装備したスナイパーリボルバーだ。これは10インチバレル仕様に1.3倍のスコープとバイポッドを装着したものだ。これは特別なショーモデルというわけでなく、実際に使用されている。中距離でターゲットの後方にダメージを与えたくない、あるいは射撃する場所が狭くライフルでの射撃が厳しい状況の場合を想定している。
市街地で人質をとったターゲットの後ろには民間人がいたり、強力なライフル弾では貫通弾が跳弾する可能性のあるというシチュエーションは多い。そんな時にこのスナイパーリボルバーが登場する。GIGNの高い狙撃能力と、それに応える高いアキュラシーを持つリボルバーで、これはマニューランだからこそ成し得ることなのだ。

Manurhin MR73 4 inch 口径:.357Magnum 作動方法:DA/SA バレル長:101mm ライフリング:6条 重量:955g 全長:233mm |


このスナイパーリボルバーの有効性をムッシュ・プルトゥーに伺うと、ひとつの実際に起った事例を教えてくれた。GIGNはこの銃で、人質をとった容疑者が銃を持つ右手を射撃した。見事に命中してターゲットは銃を落とす。ところがターゲットは左手で銃を拾った。その瞬間、このスナイパーリボルバーから2発目が放たれ、その左手の甲を貫き、ターゲットを完全に無力化した。それができたのもこの銃があったからだという。現在でも活躍の場所は多いという。マニューランMR73は世界で唯一、特殊部隊の採用したオフェンシブリボルバーなのだ。


