2018/08/21
Noveske Rifleworks GenⅠN4 Custom リアルガン製品レビュー 【2017年9月号掲載】
Noveske Rifleworks GenⅠN4 Custom
M4/AR-15のメーカーといえば今や数百社を超え、自称ビルダーが作るものまで入れると、その性能はピンからキリまで、それこそ玉石混交の様相を見せている。しかしそんな中で、ゆるぎない高性能を自他ともに認めているのが“ノベスキー ライフルワークス社”である。
安定したフォームのスティーヴ。このノベスキーは、とにかくお気に入りだそうな
高精度AR-15
もう6 ~7年も前になるだろうか。フロリダ州にあるナイツアーマメント社を訪問した際、とある担当者がボソッと漏らしたことがあった。「いや、ノベスキーのARバレルを昨日テストしたんだ。このターゲットは見物だぞ」そういって見せてくれたのは、大きな1枚に4つのブルズアイが印刷してあるターゲットだった。「そう、これは100ヤード(約90m)から3発ずつ、4回撃ったものなんだ。3発毎にパッチを通したが、それにしても4回続けて1MOA以下の1ホールというのはすごくないか?」
すごい! ガン自体はKAC社の“SR-16”にノベスキーバレルを組み込んだものだから、もともとライフルの素性がいいというのはある。しかし、いくらテストが専門の彼が撃ったとはいえ、正確に言うと2つのターゲットはそれぞれの弾痕が完全にタッチしている1ホール、残りは2発と1発に分かれた2ホールだ。これは競技用ではないARではそうそう出せる精度ではない。“ノベスキー ライフルワークス”という名前が、強烈に印象付けられた瞬間だった。その後、とにかく精度の高いARが欲しかった私は、迷うことなくノベスキーの16インチバレルアッパーを手に入れた。精度は期待通りで、ちゃんとしたアモを使えばほぼ必ず1MOA(ワンミニット オブ アングルの略で、100ヤードだと1.047インチ=約26.6mm、200ヤードだとその倍、2.094インチ=53.2mmに集弾する性能のこと)以下という結果を叩き出してくれた。しかしながら16インチのステンレス セミブルバレルを備えたアッパーは重く、そのころ軽量のARセットアップに凝り始めていた私は、このアッパーを売りに出してしまったのであった。
そして今回、取材で知り合ったナイフメーカーのスティーヴ・ライアンが無類のARコレクターだということを知り、彼のお気に入りであるノベスキーカスタムを紹介できることになった。スティーヴは多才な人で、そのぶっ飛んだデザインのカスタムナイフメーカーとしては日本でも知られているが、もう10年以上も前からあのシュアファイア社の製造部門ディレクターとして活躍している。
ここでお断りしておかなければならないのだが、今回のノベスキーARは同社の主要コンポーネントをスティーヴ自身が組み上げた“ライアンカスタム”であるという点だ。このあたり、本人に語ってもらうことにしよう。
「このノベスキーは、私が何挺か手に入れたノベスキーARを、自分の好みで組み上げ直したものなんだ。見ればわかるが、ハンドガードは“ガイズリー社”製だし、トリガーシステムもまったく別物が入っている。ARシステムのいい部分は、このモジュラリティ(構成部品の入れ替えが簡単にできる)だからね。
ノベスキーの上下フレームは、このGen1と呼ばれる鍛造製と、Gen2もしくは新しいGen3と呼ばれる削り出しのものがある。Gen3は外観もファンシーだし、各部の強度を上げてあるので、精度の高いARを作り上げるにはいいんだが、いかんせん重くなってしまうんだ。私にとってのARは道具にすぎないから、外観はどうでもいいし、強度は必要充分であればいい。その点、このGen1は信頼するに足るパフォーマンスを発揮し
てくれる。
精度の高いAR組み上げるための重要なキーポイントというのがある。
1.ハイクオリティバレル
これはもう肝心要(かなめ)のコンポーネントだ。工作精度の高いマッチバレルがいいね。ライフリングはもちろんだが、マッチグレードのチャンバーやクラウン(銃口のライフリングを保護する処理)も重要だ。ノベスキーバレルはいいチョイスだ。
2.堅牢なアッパーフレーム
リジット(強固)で、必要な部分にしっかりした厚みのあるアッパーが必要だ。軍用など、携行性を優先したアッパーの中には、両手でひねると曲がるのがわかるようなのもある。これはこれでいいんだが、精度を上げたいならより強度を上げたアッパーが必要なんだ。
3.レシーバーフェイスの工作精度
アッパーレシーバーのバレルとの接点をレシーバーフェイスという。この部分は精密加工されている必要がある。
4.ガスブロック
ガスブロックというのは、バレルから発射ガスを、ガスチューブに導くためのパーツだ。ガスの量をアジャストできるタイプやロープロファイルなどいろいろ種類があるが、バレルを変な方向に締め付けたりせず、それでも強固に固定できるものが必要だ。
5.フリーフロート ハンドガード
精度を追求するなら、ハンドガードにかかる外力をバレルに伝えないシステム“フリーフロート”は必須だ。例えばいわゆるM4のA2フロントサイトポストにハンドガードを固定するシステムは、精度を上げるには不利だ。握りしめたり、ハンドガード部分をどこかに押し付けて撃つと、その外力は直接バレルに伝わってしまう。同じ意味で、昨今流行りの極細軽量ハンドガードは、行き過ぎると外力がガスブロックを通してバレルに伝わってしまったりする。私がこのノベスキーにガイズリー製ハンドガードを選んだのも、堅牢さと取り付け方法に優れていると判断したからだ。
6.バレル コンツァー
これは銃身の外形(銃口に向かうテーパーを含む)のことで、やはり流行りの軽量バレルの中には、精度を無視したデザインも結構あるね。まあ、これはノベスキーバレルを使っている限り、問題にはならない。
7.ガスチューブ
ガスチューブは、ガスブロックからアッパーフレームを通ってボルトキャリアのガスキーに収まるまで、どこにも干渉していないというのが大事だ。これが精度に関連があるというのは意外だろうが、大事なポイントだ。
8.ボルトの工作精度
ボルトをチャンバー側のラグに固定(ボルト単体でチャンバーに差し込み、回転してロックさせる)させた際の遊びは、規定範囲内に収まっている必要がある。ただしこの部分をタイトにすると、砂やごみがラグに侵入した際、ジャムってしまう要因にもなる。
9.アッパー/ロア フィット
アッパーレシーバーとロアフレームはできるだけタイトにフィットさせたい。これはいくつかのアフターマーケットパーツも出ているが、もう割り切って1つのアッパーは、このロアに組み合わせると決めてしまって、フィットさせてしまうのがいい。
10.マズルアタッチメント
精度を最優先にするなら、マズルアタッチメントはない方がいい。もし必要なら、バレルにできるだけストレスを与えないよう、締め付け過ぎなどに気を付けたい。他にも、銃口を出たブレットが、マズルアタッチメントやサプレッサーに干渉しないようにする必要もあるね。自分がARを組み上げるから、だらだらと話してしまったが、要はノベスキーの完成品を買えば、何も考えなくていいんだな。私が所有するノベスキーは、3挺とも箱出しの状態で1MOAをクリアしていた。値段は少々張るが、信頼できるメーカーの完成品を手に入れるのが一番だね」
少々難しかったかもしれないが、精度の高いARにするにはどこに気を付ければいいかがよく分かった。ゆくゆくは、何とかしてカーボンファイバーラップドバレルを手に入れて(これが高いんです)、自分だけのARを組み上げてみたいと考えている私にとっては、すごくためになる取材となった。スティーヴ・ライアン、これまではナイフ絡みだけの付き合いだったが、これから面白くなりそうだ。POF社の.308口径ピストンARなんて、興味あります?
スティーヴ・ライアンの好みがストックとハンドガードに反映されているが、基本はノベスキーのGen1モデルだ
いわゆる普通のアッパー/ロア フレームだが、充分な強度を持っている。ロゴはシンプルだ
スティーヴの腰をよく見ると、シュアファイア社がリリースしたばかりの“マスターファイア”ホルスターを付けているのが分かる
Noveske Rifleworks Gen1 Steve Ryan仕様。精度抜群、クイックスナイピングも可能なオールラウンドM4に仕上がった
コンプは当然のごとくシュアファイア製に換装した。ライトのマウントは、スティーヴが自分で削り出しした1点モノだ
グリップはマグプルのMOE
スティーヴのチョイスは、トリジコン社ACOGだ
ストックは、マグプル社製 UBR。スティーヴ曰く。「こいつがリジットさでは最強ともいえる。ベストだ」とのこと
ハンドガードは、少し前の製品だがガイズリー社の“スーパーモジュラーレール Mk2 Mod1”というモデルだ
動画撮影をしていたら、マガジンが空になるまで撃ち続け、ホールドオープンになった時点ですっとニーリングに入り、新しいマガジンにリロードした。かなりやります
シンプルな外観を見せる右側面
「おい、こんな日向でいつまで撃たせる気だ。ジャーキーになっちまうぞ」。この日の気温は107度F(41.6℃!)もあったので、精度テストには少々無理があった。100ヤードからテストしたのだが、数発撃つとカゲロウでターゲットが見えにくくなってしまう
※実射シーンはこちらの動画をご覧ください。
ターゲットの見え具合は、こんな感じだ。日向にはライブのアモは置かないようにしている
左から、台湾製WolfGold 55グレイン、プライム社製 55グレイン FMJ、Speer社製55グレイン ゴールドドット ソフトポイント
一挙動で、すっとニーリングに入るスティーヴ。結構練習していると見た
軽快に100ヤード先のボーリングピンを2連射する。双眼鏡上に初弾のエンプティーが見える
少しだけ日陰に逃げる。ハンドガード周りは熱くて触れないほどだ
こんな強い日差しの中でもマズルフラッシュはしっかり映り込んでいる
Wolf Gold 55グレインの結果。2発をヒューマンエラー(人的ミス)として除くと、約1.5インチほどに集弾している。ロシア製スティールケースが有名なウルフ社。このプラスケース版“ゴールド”はメイドイン台湾だが、値段が安いわりに悪くない。ただし、精度的にはそこそこでしかない
Prime社製 55グレインFMJ 8発の集弾は1.25インチだった。気温など、環境を考えると上出来だ
Speer社製 55グレイン ゴールドドット ソフトポイント1.2インチだった
「今日はもう勘弁してくれ」。せっかくチェストリグを着込んできてくれたスティーヴだが、それが仇になってしまった
ん? これは、POFではないか!希望があればレポートします
By Hiro Soga